表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クラスメイトは異世界王女  作者: くまっち
第3章 冒険者大国レガリス
130/145

第40話 夢の続き②

 恋人のシーダ姫が敵国のヤードラ王子との間に子を身籠り、ヴェーダ王子の前から姿を消した。


 それから月日は流れ、ヴェーダは他国の王女マーヤを妻に迎えて国王に戴冠し、王子や王女にも恵まれて幸せに暮らしていた。


 それは盟友スーリヤ国王も同じで、二つの国の結びつきはより強固なものとなり、平和な時代がしばらく続いた。


 だがそんなある日、行方をくらませていたシーダが再び表舞台に登場する。


 シーダとヤードラの息子シャーレが国王の地位につくと、まだ未成年の王を補佐するためとしてシーダが王太后の地位についた。


 そして国の実権を握ったシーダは、あろうことかヴェーダの国に戦争を仕掛けてきた。




「おかしい。シーダがそんなことをするはずがない」


 ヴェーダは最初からこの戦争に疑問を感じていた。


 シーダは幼馴染で元恋人。彼女のことはヴェーダが一番よく分かっていた。


 物心ついた頃から隣にはシーダの笑顔があり、将来結婚したら二人でこの国を治めていくことを誓い合った恋仲だった。


 だが彼女は敵国に拉致されて敵の子を産み、その子供が成長すると、将来治めて行くつもりだったヴェーダの国に襲い掛かってきたのだ。


「きっと何かの間違いだ。シーダのことだから誰かにそそのかされたに違いない。俺が彼女を救ってやる」


 ヴェーダ王は、シーダ王太后の真意を探ろうと会談を申し込んだ。





 会談場所は中立国の王宮に決まった。


 先に到着したヴェーダはその国の国王や貴族、民衆から盛大な歓迎を受けた。


 自国も巻き込まれかねない危険な戦争を話し合いで終わらせようとするヴェーダ国王に、中立国の全員が期待を寄せていた。


 そして相手国側も到着してその会談は始まったが、そこにいるはずのシーダの姿はなく、出席したのは家臣の外務卿だった。


「シーダはどうしたんだ」


 ヴェーダが尋ねると外務卿はその事実を告げる。


「王太后陛下は、兵の先頭に立って戦場に出ておられます」


「和平会談の日に戦場だと?」


「ええ。外交は外務卿、戦争は王家の仕事だと」


「何だとっ!」


 嫌な予感がしたヴェーダは、家臣を残して一人王都へと引き返した。


 その予感は的中し、王都は既に火の海だった。


「そんな・・・」


 急ぎ王城に駆け付けたヴェーダだったが、中は味方の兵士たちの躯で埋め尽くされ、何とか謁見の間にたどり着いたヴェーダが見たものは、自分の玉座に並べられた妻や子供たちの生首だった。


「マーヤ! バーダック! カミーラ! ガルダ! シェーナ! あああああ・・・・」


 愛する家族の変わり果てた姿に、その名を叫びながら号泣するヴェーダ。


 そんな彼の後ろから、引きも絶え絶えの宰相がヴェーダに告げた。


「・・・シーダ様です・・・あの女が突然城に乗り込んできて・・・王妃様と王子、王女殿下を次々に」


「・・・これをシーダが一人でやったというのか」


「・・・はい・・・国王陛下・・・どうか我らの仇を・・・」


「宰相っ!」


 背中に何本もの槍が刺さった宰相は、その言葉を最後に息を引き取った。


「畜生ーっ! ・・・シーダめ、絶対殺してやる!」



           ◇



 愛する家族を奪われ、王都に住む領民まで焼き尽くされたヴェーダは復讐の鬼と化した。


 自らが軍の先頭に立つと、その強大な魔力でシーダの軍を焼き払っては、その領地を破壊し尽くした。


 それはシーダも同じで、二人の極大魔法がさく裂する度に、街が地図上から消えていった。


 そのあまりに破壊的な戦争に人々は恐れおののき、神々が争う終末世界の到来だと絶望した。


 これにはさすがのスーリヤ王も黙っておられず、ヴェーダとシーダに今すぐ戦いをやめるよう説得した。


 だが二人はこれに応じず、戦いは止むどころか極大魔法の報復合戦となり、空は魔力の矢が飛び交った。


 説得は無理だと分かったスーリヤは、全ての非は妹のシーダにあると判断。


 盟友ヴェーダに力を貸して、シーダを討ち滅ぼして戦争を終結させる道を選んだ。



           ◇



 戦力バランスが崩れ、国土を焼き払われシーダが逃げ帰った王都も既に大軍勢に取り囲まれていた。


 ここに至り、シーダは王城地下の封印の間に息子のシャーレ王を隠すと、ヴェーダとスーリヤを王城で迎え撃つことを選んだ。


 玉座で待つシーダに、ゆっくりと近づくヴェーダとスーリヤ。


「どうして戦争を仕掛けた! 答えろシーダ!」


 怒りにうち震えるヴェーダに、シーダは冷たく言い放った。


「あなたがヤードラを殺したからよ」


「・・・何だと?」


「私はヤードラを心の底から愛していた。その彼を奪ったあなたが憎い。だからあなたの家族を殺してやったの。私がどんな気持ちだったか、これであなたにも理解できたでしょ」


「貴様ーーーーっ!」


 あまりに身勝手なシーダに、ヴェーダは怒りの全てを魔力に乗せて至近距離からその極大魔法を放った。


【雷属性極大魔法・インドラの矢】



          ◇



 戦いは一昼夜続いた。


 シーダの魔力は二人の想像をはるかに超えて強大で、二人がかりでようやく彼女一人と互角に戦うことができた。


 だがここに来て、シーダの異常な強さの謎にようやく気づいたヴェーダは、スーリヤに耳打ちをする。


「・・・聞いてくれスーリヤ。シーダは上手く隠してるが、あいつは2種類のマナを同時に操っている」


「2種類だと? つまり誰かが彼女に魔力を与えているということか」


「ああ。シーダが隠しているマナはヤードラと同じ火の魔力。おそらく息子のシャーレ王がどこかで助力しているはず」


「だが、一体どこに・・・」


 激しい戦いにより、王城どころか王都全体が破壊され、周りはがれきの山と化していた。そんな中に、スーリヤは小さな祠が無傷で残っていることに気づく。


「・・・なぜあの祠だけが破壊されていない」


「本当だ・・・きっとあの中にシャーレ王が!」



           ◇



 スーリヤがシーダの注意を引きつけている間に、地上に降り立ったヴェーダがこっそり祠の裏に回った。


 その祠は不思議な装飾が施された立方体の建物で、扉はシーダの魔力によって固く封印されていた。


「この魔法は・・・そうだ、子供の頃にシーダと追いかけっこで遊んだ時、俺に捕まりたくない一心で彼女が使った封印の魔法だ」


 懐かしい思い出がヴェーダの心をよぎり、同時に彼女が唱えていた詠唱呪文も蘇った。


【バーダルタ・エヴェゴギナ・イルム・ゴーギルス・アザムルーク!】


 ヴェーダがその呪文を唱えると、祠が七色の輝きを放ってその封印が解けた。


 扉がゆっくりと開くと、中には真っ赤なオーラを全身にまとったシャーレ王が両手を握りしめて祈りを捧げていた。


 宿敵ヤードラ王子の面影を残すシャーレ王が、その瞳を開いてヴェーダを睨み付ける。


 そしてニヤリと笑うと、ヴェーダと全く同時に極大魔法を放った。



【雷属性極大魔法・インドラの矢】

【火属性極大魔法・ブラフマの矢】



 膨大な魔力が激突し、二人の周囲は完全なる破壊と絶対の死がもたらされた。



           ◇



 目も眩むような閃光が徐々におさまってくると、王城があった場所には巨大なクレーターできていた。


 視力が回復したスーリヤが急いでヴェーダの加勢に駆け付けようとしたが、クレーターの中心部に立っていた男女の前に、そのヴェーダが大量の血を流して横たわっていた。


「ヴェーダーーーーーっ!」


 だがスーリヤが駆け付けるより先に、シーダがヴェーダの首を剣で切り落としてしまった。


「あ、あ、あ・・・」


 地上に降り立ち、茫然とした表情でヴェーダに近付くスーリヤ。


 だがヴェーダを討ち取ったシーダはその首を拾い上げると、あろうことかスーリヤに投げつけた。


「お兄様、あなたの大切なご友人の生首をプレゼントいたしますわね」


「シーダお前・・・」




 スーリヤは油断していた。


 ヴェーダとシャーレが互いに魔法を放つまさに直前、シーダはスーリヤに放とうとした極大魔法をヴェーダに向けて放ったのだ。


 スーリヤを信頼していたヴェーダは目前の敵に全ての意識を集中し、頭上からの攻撃に無防備なままシーダの極大魔法を受けてしまった。


 シーダは自分の魔法の封印が解けたことを察知しながら、何食わぬ顔でスーリヤと戦い続け、それに気づけなかったスーリヤはまんまと騙されたのだ。


 自分の甘さを悔やむと同時に、昔の恋人であるヴェーダを躊躇なく殺したシーダに怒りが爆発した。


 抑えきれない憎悪が心を黒く塗りつぶし、無意識のうちにその魔法を発動した。


【風属性極大魔法・ビシュヌの聖剣】


 刹那の時間に放たれたその極大魔法は、シーダがそれを認識するより早く彼女の肉体を消滅せんと襲いかかった。


 この不可避の超速攻撃に反応し、彼女を庇おうとその身を差し出したシャーレ王が、シーダの目の前で身体を真っ二つに引き裂かれた。


 地面に崩れ去ったシャーレ王は死の間際、母シーダに向けてその言葉を発した。


「・・・愛するシーダ・・・また先に逝く余を・・・許せ・・・」


 その言葉に、シーダが大きく目を見開く。


「・・・ヤードラ・・・まさかヤードラなの?」


 愛する息子シャーレが、ヤードラの生まれ変わりとこの時初めて知ったシーダ。


 だがそれは、愛する二人の男を同時に失ったことを意味し、シーダは2重の絶望を与えられた。


 そして二人を殺した実の兄スーリヤを心の底から憎んだシーダは、その禁呪を口にしてしまった。


【闇属性禁呪魔法・ニルヴァーナ】


 自分の全魔力と引き換えに発動した禁呪魔法は、スーリヤの魂を輪廻転生の輪から完全に断ち切った。


 抜け殻となって地面に倒れたスーリヤの身体から抜け出した魂は、ポッカリと口を開いた次元の狭間へと吸い込まれていった。


 だがその魔法は、スーリヤの魂だけでは満足せず、まだ辺りをさまよっていたヴェーダとヤードラの魂もその狭間へと引きずり込んでしまった。





 魔力を完全に失ったシーダは、滅亡したヤードラの国から姿を消すと、とある深い森の奥で残りの長い生涯を一人寂しく終えた。



           ◇



「うわああっ!」


 長い夢から覚めた瑞貴は、嫌な汗でシャツがぐっしょり濡れていることに気がついた。


 寝袋から這い出して着替えようとした瑞貴は、隣で肩を寄せ合って寝ていた弥生が、全く同じタイミングで寝袋から抜け出たことに気づく。


 そして顔を見合わせた二人は、全く同じセリフを吐いた。


「「ひどいバッドエンドだった・・・」」


 げっそりした顔の瑞貴は、


「お前の妹のシーダ姫、ちょっと性格悪すぎだろ。ちゃんと教育しろよスーリヤ」


 そう文句を言ったが、弥生は笑顔で答える。


「あんな酷い女は早く忘れなさい。私がヴェーダを愛してあげるから」


「お前、元男じゃん。BLエンドかよ・・・」

 次回もお楽しみに。


 このエピソードを気に入ってくださった方はブックマーク登録や評価、感想、いいねなど何かいただけると筆者の参考と励みになります!


 よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ