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クラスメイトは異世界王女  作者: くまっち
第3章 冒険者大国レガリス
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第39話 修行の成果

お待たせしました。


しばらく不定期になりますが連載を再開します。



 ダンジョン内で修業を始めたのはいいが、それからなんと1か月も経ってしまった。


 騎士団長ベストラは一度始めたら徹底的にこだわるタイプで、第13層を拠点に上下2階層にいる全種類のモンスターと守護ゴーレムを、全員が単独で倒せるようになるまで修行をやめさせてくれなかった。


 おかげで全員がレベルアップを果たし、どんなシチュエーションでも戦える自信がついた。


「よし、カナデも合格だ。これで全員がSランク相当の強さを手に入れたことになる」


 ベストラが満足そうに告げると、かなでは申し訳なさそうにみんなに頭を下げた。


「結局私が足を引っ張っちゃった。瑞貴くんなんか、2週間目にはクリアーしちゃったのにごめんなさい」


「いやいや、かなでは本当に強くなったよ。俺と弥生は前衛戦闘員だから早くクリアーするのは当然だし、守備要員のかなでがたった1か月で俺たちに追い付いたのが、むしろ驚異的だ」


「そ、そうかな。私、足を引っ張ってないかな」


「引っ張るどころか、攻守にバランスが取れてて一番安定感のある戦い方ができると思うよ」


「そっか・・・ありがとう瑞貴くん」


「頼りにしてるぞ、かなで・・・」




 かなでが嬉しそうに瑞貴の顔を見つめ、瑞貴もかなでにニッコリと微笑む。


 いつまでも見つめ合う二人に、アリスレーゼが咳払いをする。


「コホン・・・」


「・・・あ、アリスレーゼ。どうしたんだ?」


「瑞貴、わたくしも3週間目にはクリアーしたのですが、何か言うことはないのですか」


「もう何度も言ったじゃないか。アリスレーゼは本当に凄い。女王のくせに戦い方が泥臭くて粘り強いし、自分が勝つまで絶対やめないしぶとさは、味方でよかったと心から思うよ」


「そうでしょ! わたくしのことをもっと褒めていいのですよ」


「それに一番驚いたのは精神感応魔法が魔物に通用したことだ。あれは衝撃的だったな」


「わたくしも、魔物に心があったなんて全く存じ上げませんでした。いずれは魔物の心を支配して、わたくしの召使いにしてみせましょう」


「お、おう・・・ぜひ魔物と心を通じ合わせてくれ」


 瑞貴に褒められて嬉しそうに腕に抱き着くアリスレーゼ。


 そんな彼女を、愛梨が無理やり引き離そうとする。


「もう何度も言ったと思うけど、お姉は調子に乗りすぎ。いくらお兄の婚約者に決定したからって、お姉一人のものじゃないんだし、ちゃんとルールに従って」


 愛梨が言うには、一夫多妻制で夫婦円満を保つにはコツがあるらしく、嫁同士の間には明確で透明なルールと公平な扱いが必要だとか。


 そしてそのルールを決めるのは、妹である愛梨なのだそうだ。


 なお愛梨の決めたルールでは、社会的立場が一番強いアリスレーゼが嫁のバランスを崩しかねないため、序列を一番下にしたらしい。


 それでも瑞貴の腕にしがみついたまま、アリスレーゼが悲しそうな顔で瑞貴に助けを求める。


「愛梨、アリスレーゼがかわいそうじゃないか。これでもお前の義姉なんだし、もっと仲良くしろ」


 だが瑞貴がアリスレーゼをかばうたびに、愛梨とアンナが口を揃えて言うのだ。


「「嫁同士の関係に、口を出してはダメ!」」


「・・・はい」


 愛梨に妙な入れ知恵をしているのは、この世界の住人で一夫多妻制に詳しいエルフのアンナだ。


 二人はいつも一緒に行動していて、アリスレーゼよりアンナの方がよほど本物の姉妹のように見える。


 そして二人の言うことには誰も逆らうことができず、まだ誰とも結婚してないのにすでに姑と小姑だけができてしまった。


 そんな様子を腹を抱えて笑う雨宮主幹研究員と、苦笑いをして見て見ぬふりする騎士団長のベストラ。


 だがそんな彼も、見るに見かねて口を開いた。


「くだらん。たくさん嫁を貰おうとするから余計な面倒ごとに巻き込まれるんだ。本当に愛する女一人を妻にすればいいだけだろ」


 正論をはくベストラを、雨宮主幹以外の女性陣が鬼の形相でにらみつけた。


 自ら鍛え上げたSランク相当の女たちから放たれる殺気に、さすがの王国最強騎士ベストラも額に冷や汗が滲み出ている。


 分が悪いと感じたベストラがさっさと退散しようと背を向けたが、瑞貴はベストラの私生活について何も知らないことに改めて気がついた。


「そう言えばベストラさんも結婚されてるんですか」


 瑞貴の質問にしばらく沈黙を続けたベストラは、彼に振り返って答えた。


「この年だし、嫁ぐらいいるさ」


「生活の匂いが全くしないので独身かと思ってました。もしかして奥さんは一人だけですか」


「当たり前だ! さっきも言ったように、本当に好きな女を生涯愛する。それが当り前じゃないか」


「ええ。俺たちの国ではベストラさんの考え方が正しいし、浮気なんかすると社会的制裁を受けます。そもそも一夫多妻制なんかしてたら、結婚できない男が大量発生するじゃないですか」


「・・・どうもミズキは誤解しているようだが、一夫多妻制なんかがまかり通っているのは貴族社会だけだ。平民は大金持ち以外そんなことやらん」


「貴族だけか・・・それなら話は理解できる」


 貴族は政略結婚による家同士のつながりが大切であり、有力貴族の元にはたくさんの縁組が舞い込み、そうすることで無駄な戦争を防ぐ効果がある。


 それに一度戦争が起これば多くの男たちが死に、残された女たちは路頭に迷うことになるが、彼女たちの生活を保障するのも一夫多妻制のメリットなのだ。


「ところでベストラさんにお子さんはいるのですか」


「いるぞ。もちろんお前に娘はやらん」


「誰もそんなこと言ってませんよっ! 今でもかなり面倒くさいのに、これ以上嫁が増えたら大変なことになりますよ」


「・・・・・」


「どうしたんですか、急に黙り込んで」


「いやすまん。ふと弟のことを思い出した」


「弟さん・・・ですか」


「ああ。俺が冒険者になったのは、弟が冒険者だったからなんだ」


「へえ・・・それは知りませんでした」


「俺と違ってあいつは本物の冒険者だった。それこそ世界中を探検し、古代の秘宝やら世界中の美女たちを手に入れた」


「それは凄い。絵にかいたような冒険者ですが、その弟さんは今でも冒険を?」


「今はやっていない。いや、俺のせいで冒険ができなくなってしまったんだ。だから弟の代わりに俺が」


「ベストラさんのせいで冒険を・・・」


 おそらく何かの事情があって、冒険者を続けられない身体になってしまったのだろう。


 そんな弟の意思を継ぎベストラは冒険者になった。


「でもどうして急に弟さんの話を」


「くっくっく・・・奴は世界中の美女たちを国に連れ帰ったのはいいが、その全員を嫁にしたために、さっきミズキが言ったのと同じ言葉を呟いたんだ」


「ああ、なるほど・・・」


「ふっ・・・赤の他人なのに全く同じセリフを吐くとは、本当に不思議なものだな」


「そりゃこんな状況に陥ったら、誰だって同じことを言いますよ」


「確かにそのとおりだ。くっくっく」



           ◇



 修行も終わり、明日からダンジョン攻略を再開することになったが、互いの技を確認するため、思念波補助デバイスに追加された機能を改めて整理してみた。


 元々組み込まれていたものもあったが、この1ヶ月でベストラとアンナが披露してくれた魔法を雨宮主幹がデバイスに組み込み、実践で使えることが確認できたリストがこれだ。


 なおそれぞれの兵器名は、アンナさんがこの世界の類似の魔法にちなんだ名前を付けてくれた。



瑞貴

《土属性思念波兵器・グランドクロス》

《土属性思念波兵器・メテオ》

《雷属性思念波兵器・トールハンマー》


アリスレーゼ

《水属性思念波兵器・プロトンドライバー》


愛梨

《火属性思念波兵器・エクスプロージョン》

《火属性思念波兵器・時計仕掛けのウサギ》

《火属性思念波兵器・太陽の抱擁》


弥生

《闇属性思念波兵器・ワームホール》

《闇属性思念波兵器・ダークマター》

《風属性思念波兵器・スーパーソニック》


かなで

《光属性思念波兵器・フェニックス》

《光属性思念波兵器・スーパーノヴァ》




 そんなアンナの命名に、雨宮主幹が噛みついた。


「自由に名前をつけていいって言ったけど、やっぱり分類がおかしいわね」


「そうでしょうか」


「電磁気力を媒介するのは光子だから雷属性と光属性が別れているのは変だし、プロトンドライバーは水素の原子核だけど、水属性とは何の関係もないでしょ」


 だが雨宮主幹の説明がアンナには理解できず、ポカンと口を開けている。


 瑞貴はため息を一つつくと、雨宮主幹に反論した。


「そんな説明でエルフに分かるわけがないじゃないですか。理系の雨宮主幹には違和感があるかもしれませんが、高校生の俺たちの感覚には合ってますよ」


「瑞貴君は気持ち悪くないの? 例えばスーパーソニックって、身体を速く動かすために神経伝達系統を増強する魔法だけど、何となくの雰囲気で風属性に分類されてるし、だったら光属性は生体魔法と定義して、治癒魔法のフェニックスと一緒にしておくべきよ」


「それを言い出したらダークマターとスーパーノヴァはエクスプロージョンと同じ火属性に分類すべきだし、トールハンマーとプロトンドライバーは、電子か陽子の違いだけで同じ魔法じゃないですか」


「あら分かってるじゃない! さすがはエカテリーナ様の息子ね」


「そういうとこですよ、雨宮主幹の分類で納得するのはウチの母さんぐらいで、世間一般には全く理解を得られません。俺はアンナさんの命名に賛成です」


「ぶーっ!」



 雨宮主幹が不満そうに口を尖らせると、アリスレーゼも同じように口を尖らせる。


「瑞貴と弥生だけずるいです。わたくしももっと属性魔法が欲しいのですが」


 するとアンナがアリスレーゼを諭すように言った。


「それはすでに陛下がご自分の魔法をたくさんお持ちだからです。本来はゼロの所を、ミズキさんの魔法【トールハンマー】を強化するため特別に機能追加されただけですから」


「本来はゼロっ! ・・・ではどうして瑞貴と弥生だけが2つも属性があるのですか」


「今回追加したのは固有魔法と呼ばれるもので、本来一人に一つしかございませんが、ミズキとヤヨイには、今世の肉体に備わっている属性と神話時代の魂に備わる属性の両方の適性があるのです」


「神話時代の属性・・・では今世の属性は土と雷のどちらなのかしら」


「それは・・・ベストラさんはどちらだと」


 返答に困ったアンナがベストラに話を振ると、彼は即答した。


「ミズキは土で、ヤヨイは闇だ。つまり神話時代から引き継いだ属性はそれぞれ雷と風ということになる」




           ◇



 その夜、俺はまたあの夢を見た。

 次回もお楽しみに。


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