セリ2歳〜二足歩行ゲッツ!いざ、戦いを挑まん〜
生まれ変わって、二年が経った。
心許ないけれど、二足歩行だって出来るのよ!
そして、右手にスコップ、左手にジョウロをもって、いざ戦いを挑まん!
今日は、念願の薬草畑をするの。
周りから見たら、ただの土遊びだけどね。
ザックザックザック
私は、一心不乱に庭の片隅で土を掘り返す。
娼婦時代、対症療法しかできなかったけど、結構役に立った唯一の特技。
流石に最後私を死に至らしめた流行病には何も効かなかったけど、今の私に誇れるのは、この知識だけ。
いざとなれば、この影の薄さを使い、宮廷に忍び込んで毒をばら撒いてやる。
と、言うわけで、それとなく毒にもなる草も揃えてみました。
セリと見間違える事の多い、オオゼリ!
呼吸困難、麻痺、嘔吐。
過剰摂取すれば、死に至ることもある危険な草。
私だって、出来るだけ使いたく無い。
我が家の誰かが、知らずに食べて被害を受けてもいけないし!
セリより大きく育つから、目立たないように後ろに植えましょう。
ウンショ、ウンショ。
結構、土、硬いわね。
「セリは、いつか、薬草博士になるのかい?」
「ひぃ〜」
ケイトウお兄様、突然現れないでよ!
二歳なのに、十年は寿命縮んだじゃない。
私のドキドキをよそに、ケイトウお兄様は、デレデレの顔で覗き込んできた。
まったく、私が集めた雑草を、一眼見ただけで薬草と気づくなんて恐ろしい、七歳ね!
しかも、
「セリ、コレは危ないよ」
なんとお兄様は、毒になるオオゼリだけを奪うとポイッと投げ捨てた!!!
「あぁ〜、おに〜たま、かえちてぇ」
ふぇ〜〜〜ん
内心ビビリながらも、可愛さを忘れずに、嘘泣きをする。
ほら、お兄様、可哀想な妹に、その毒草を返して。
「だーめ!」
「びぇーーーーーーーーーー」
本格的に泣き出すと、庭の東屋で寛いでいたダリアお母様が、わざわざ此方まで来てくださった。
「ケイトウ、駄目でしょ、セリを虐めたら」
「虐めてないもん。これ、危ないもん、毒だもん」
なんと!毒と知っていたですと!!
神童と言われるお兄様は、分厚い植物図鑑なんて、軽い読み物なのね。
私が長年の経験で手に入れた植物の情報が、既に頭に入っているらしい。
つい、焦って一緒に育てようとしたのがいけなかったわ。
毒は、草じゃなくて花の美しいスイセンやフクジュソウにしましょう。
そうしたら、綺麗だから育てたいと言い訳できるもの。
「おかぁたま、だっこ」
察しの良すぎるお兄様から離れる移動手段に、お母様を使う。
これ以上、ケイトウお兄様に付き纏われたら、畑作りも捗らないわ。
「ふふふ、セリは、甘えん坊ねぇ」
お母様が私を抱き上げようとしゃがみ込むと、その前にクローバーが泥の付いた私の手を拭いた。
流石、出来るメイドは、仕事が早いわ。
フワリ。
体が宙に浮き上がるのを感じで、お母様にしがみ付いた。
「ふふふ、セリも、随分重くなった事」
嬉しそうに呟くけど、女の体重は口に出しちゃいけませんことよ、お母様。
私は、不満を口にする代わりに、プルンプルンのお母様の胸に顔を埋めた。
あぁ、なんて柔らかいの。
最高のクッションだわ。
こうして、私は、お母様のお胸をベッド代わりにお昼寝と洒落込む事にした。