セリ1歳〜離乳食は、神〜
やっと一才になって、ドロドロだけどオッパイ以外の物を口にできるようになった。
噛み締めのある物、食べた〜い。
赤身のお肉とか〜。
歯、無いけど〜。
「ふふふふふ、セリ、じょおずだよぉ」
スプーンに潰したお芋を載せてくれるのは、ケイトウお兄様。
お勉強の時間のはずだけど、大丈夫かしら?
この前も、家庭教師の先生が、真っ青な顔をして飛び込んできたのよね。
ケイトウお兄様、あの後ダリアお母様に扇でお尻叩かれてたっけ?
「あぅあぅあぅ(そろそろ帰ったら?)」
「おー、やっぱり僕が食べさすのが、一番美味しいのかぁ〜」
全然伝わってないわね。
仕方ないから、差し出されたスプーンをパクりと口に入れる。
もぉ、本当に、蕩けるような顔をするわよねぇ。
イケメンが、台無しですわよ。
私がパクパク食べるから、お兄様もせっせとスプーンを口元に運んでくれる。
でも、
「うっぷっ」
お兄様!私の口に、スプーン突っ込みすぎ!
でも、おいちぃ。
クチュクチュクチュ
今は、まだ、あんまり量が貰えないから、よーく味わいながら堪能するの。
甘くて、滑らかで、甘くて、最高〜。
あらやだ、あまりの美味しさに二回も甘くてって言っちゃった。
久しぶりの甘みに、過剰反応しちゃってるわね。
「ケイトウお坊ちゃま、そろそろスプーンをお返しください」
お兄様に『あーん係』を取られたクローバーが、怒ってるわ。
貴女、私より六つ上だったから、まだ六歳よね?
お仕事、出来過ぎなんじゃない?
確か、うちのメイド長のお孫さんだったはず。
やはり血筋は、争えないのねぇ。
「はい、お嬢様、フキフキしましょうねぇ」
ご飯を食べ終わった私の口を、湿らせた柔らかな布で、クローバーが優しく拭いてくれる。
そう、昔から彼女は、一生懸命で優しかった。
前世で娼館に放り込まれた時も、ずっと、私を守ろうと必死に戦ってくれた。
私のせいで、こんなにステキな女の子にまで、あんな思いをさせてしまったことが辛い。
私は、我慢が出来なくて、ポロリと涙を溢した。
「まぁ!セリお嬢様、痛かったですか?」
拭き方がキツかったのかと、オロオロするクローバーの親指を、私は、ギュッと握った。
「あーあー(ありがとう)」
「どうされましたか、セリお嬢様?」
首を傾げるクローバーに、
「クローバー、きっとセリは、ありがとうって言ってるんだよ」
ってお兄様が言ってくれた。
流石、神童と呼ばれるお兄様ですわ!
私は、コクコクコクコクと頷いて、一生懸命気持ちを伝える。
「まぁ、そんな!わ、わたしこそ、わたしこそ」
そのまま言葉が続かず、クローバーは、泣き出した。
ワーンワーンワーン
大声で泣き続ける私達につられて、
ワーンワーンワーン
何故か、お兄様まで泣き出していた。
ケイトウお兄様、貴方が泣く必要は、無いと思いますことよ。