チューベーローズ18歳
全く以て不本意なんだけど、私は、今、裁判にかけられている。
貴族令息に、薬を使い淫らな道に引き摺り込んだ罪らしい。
良く言うわ。
自分から望んで、私の体に飛び込んできたくせに。
で、そんな孫を学園に入学させたとして、ジジイ、ババアが呼ばれた。
いつも偉そうにしてるくせに、裁判長にペコペコ頭下げて、惨めなもんね。
「私達は、騙されていただけです!その娘が、孫だと偽ったばかりに巻き込まれてしまったんです!」
ジジイが裁判官に泣き落としを掛けている。
ホイホイ引き取っておいて、良く言うわ。
薄々分かってたくせに。
だって、奴らの息子と私の母さん掛け合わせて、私が生まれるわけないもん。
肖像画に描かれていた美男子は、まさに天使のような優男。
アンタ達の息子だなんて、未だに信じられないくらい好青年。
儚げで、髪の色も目の色も、眩い金色。
片や、うちの母さんは、キツい目つきの黒髪。
で、私、赤毛なんだけど?
『死んだ母が、赤毛でした』
って涙ぐんだら、納得したフリしてたじゃん。
もう、当時のメイドなんて一人も残ってなかったし、追い出した張本人は、どんな顔かも覚えてなかったんだから自業自得でしょ?
私の体が美味しく発育した頃から、ジジイのヤラシイ視線に晒されて背筋が凍ったものよ。
隙あらば、手を握ったり、肩を抱いたり。
ババアが嫉妬して、私、何度杖で殴られたことか。
それなのに、今更、被害者面とか、笑っちゃうわよねー。
「裁判長、そのお年寄り、ぜーんぶ知ってて、私を養子にしたんです。騙されちゃ、ダメですよー。偽造した書類の写し、持ってますから。それに、貴族の坊ちゃん達は、自分から私に寄ってきたの。ヤバい事だって分かってて来たんだから、私だけ犯罪者扱いって変だと思いまーす!」
手を挙げて高らかに言い放ってやると、ジジイ達の顔が真っ赤になった。
あらあら、血管切れちゃいますよー。
私は、悪女。
そんな事、百も承知。
だから、何?
いざと言う時のために、全て証拠は、押さえてきた。
誰一人、言い逃れなんかさせない。
私は、ただ、お腹いっぱいご飯を食べて、綺麗なものに囲まれて、チヤホヤされたかっただけ。
別に、王妃になりたいとか、貴族の奥方になりたいなんて野望はない。
側室だろうが、愛人だろうが、私に不自由をさせない金と権力が有れば、何処にでも収まる気だった。
ま、やりたいだけやり尽くしたから、後悔は、ないわ。
「判決を言い渡します!」
裁判長が、高らかに声を上げた。
あら、私だけ裁くって言うの?
皆さん薬を使ったのが悪いとか言うけど、それを作る奴も、売る奴も、分けて貰おうと寄ってくる奴も、全部悪でしょ?
どうせ死刑になるなら、全員道連れにしてやりたいの。
洗いざらい喋って、証拠も全部曝け出してやる。
揉み消したって無駄よ。
既に、新聞社や下世話な大衆紙に、実名付きで暴露ネタを送ってあるんだから。
ふふふふふ、止められるなら止めてみなさいよ。
あら?
もしかして、それって、世の為人の為になるんじゃない?
ふふふ、気づかなかったけど、私って、意外と良い子だったみたいね。