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セージ・クスノキ年齢不詳


セリ嬢から手紙が来た。


なんでも、ある貴族令嬢が、性的な興奮を高める薬を入手しているそうだ。


その女の名は、チューベローズ・シャジク。


まずは、入手経路を特定して、新たに相手の手に薬が渡ったら知らせて欲しいと言う。


あえて手に渡らせて、様子を見るのか?


その手の薬は、扱うところが限られているから、直ぐにでも分かる事だか、公爵令嬢が首を突っ込むにはヤバい事件だ。


しかも、その女の名前には、聞き覚えがある。


今、街で話題の平民から貴族へとのし上がった少女の名前だ。


母親は、元伯爵家のメイド。


後継息子が恋に落ち、愛を誓い合った相手だ。


しかし、突然姿をくらまし、行方不明。


その後、若き伯爵令息は、子をなす事なく事故で亡くなったと言う。


意気消沈したシャジク家に転機が訪れたのは、5年前。


亡き息子の子供だと言う娘が名乗り出たのだ。


その十一歳の少女の手には、息子が恋人に宛てた手紙が握られていた。


面影はなかったが、亡くなった母親から聞いたと言う当時のシジャク家の内情などを事細かに知っていた為、引き取ることとなった。


学園にも、一年の準備期間を設けて十二歳で入学を果たしている。


ただ、素行が悪く、女性教師達の評価は、すこぶる低い。


十八になる今年卒業を迎えるが、単位は、全く足りていないらしい。


本来なら、注意勧告の上自主退学を進めるところだが、上位貴族の子息達が侍り、それを阻止しようと家まで動かす始末。


たとえセリ嬢の方が家格が上とはいえ、敵に回すには、危険極まりない。



「まったく、変なのに関わらないで下さいよ」



俺は、ボヤきながら万が一の為に手紙を燃やして、暖炉に捨てた。


セリ嬢は、頭がいい。


言わなくても、危険なことなど承知の上だ。


そのセリ嬢が警戒するということは、野放しにしてはいけない人物だということ。


俺が出来ることは、可能な限り詳細で正確な情報を伝えるしかない。


俺は、配下を数名呼び寄せると命令を下した。



「チューベローズ・シャジクの全てを調べ尽くせ。ヤバい薬にも手を出しているらしい。セリ嬢の敵だ。叩き潰すぞ」



「うぇい」



野太い声は、可愛さのかけらもないが、まだ10代の若者ばかり。


コイツらのセリ嬢への心酔ぶりは、俺以上かもしれない。


なにせ、妹達が、今、セリ嬢の元で薬草畑を手伝いながら、技術を教わっている。


女で仕事を持つのは難しい時代、学校にすら通えなかった妹達が、生き生きと学ぶ姿が眩しいとこぼしていた。


そんな、可愛い妹が世話になる相手を、裏切るような真似はしないだろう。



「探るだけで良いんですか?一気に仕留めても良いんすけど?」



「勝手は、するな。あと、直ぐに物騒なことを言うな」



元々、下町で荒事を請け負って日銭を稼いでいた奴らだ。


直ぐに腕力で片付けようとする癖がある。


俺が拾わなければ、ヤクザになっていた確率が高い。


皆、



「へーい」



と不満げに返事をしたが、くれぐれも頼むぞ!


何かあって、怒られるのは、俺なんだからな!


さぁて、セリ嬢、賽は振られました。


貴女のお手並み拝見といたしましょう。

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