ルドベキア16歳
年に一度、この学園で行われる剣術大会。
参加するには、通常の授業による成績と、先生方の推薦が必要だ。
そして、八歳から十八歳までの十年間通う為、八歳から十歳、十一歳から十四歳、十五歳から十八歳と三つに分けて戦うことになる。
僕は、セリが贈ってくれた紅花茶を飲むようになってから体調が改善して、徐々に剣術の成績も良くなっていった。
そして、十二歳の時、『髑髏騎士漫遊記』を貸してあげた縁で、騎士団長の指導を受けさせてもらえるようになった。
最初は、団長が息子であるソレドールを教えるついでで訓練を受けさせてもらっていたはずなんだけど、気づいたら、別の日にも呼び出されて騎士団の訓練にも参加していた。
ソレドールが言うには、僕は、背が高いから激しい訓練をしても良いらしい。
彼は、まだ小さいから、極端な筋肉をつけると背が伸びなくなると言われて渋々諦めたと言っていた。
いや、ありがたい話だけど、僕だけなのかと胃がキリキリ痛んだ。
何故なら、屈強な騎士団の方々に囲まれて、棒切れのように細い僕が刀を振ると、場違いな感じが半端ない。
しかも、周りから、ああしろ、こうしろと皆さんの指示が飛ぶ。
先輩方、面白がっていませんか?
まぁ、そのお陰で、学年では負け無し。
先生からのお墨付きもいただいて、今回出場することとなった。
順調に勝ち進み、気づけば決勝戦。
「ルドベキア、絶対勝てよ!」
クラスメート達が、大声援を送ってくれるけど、この決勝戦の相手、王太子だよ。
さっき、騎士団長まで来て、
「手を抜いたら許さん!」
って発破をかけていったけど、正直勝って良いんだろうか?
なんだか複雑な気分だ。
でも、時々思い出したようにセリに襲撃をかけるのは許せない。
ケイトウも、親指を立てたと思うと首元に持っていって、横移動。
最後に親指を下に向けて、
「ヤレ!」
って言ってる。
それ、不敬罪だから。
あー、でも、一番ノリノリなのは、セリなんだよなぁ。
「ルー様、ぶちかまして!」
って、最前列で公爵令嬢が叫ぶ言葉じゃないからね。
あとで、ダリアお義母様に、ちゃんと怒って貰おう。
まぁ、愛しい婚約者に応援されて、本気を出さないのも申し訳ないから、全力で当たらせてもらうけど。
決勝までの戦い方を見ていたら、オダマキ殿下は、腕力で押し切るタイプだ。
僕は、相手の力を上手く躱して、隙を突く戦法。
さぁ、どちらが勝つか、楽しみだ。
先ず先手は、オダマキ殿下の突きだった。
猪突猛進。
軌道を読んでギリギリで避けると、ビックリした顔をする。
いや、普通避けるでしょ?
あぁ、そうか、今までは殿下に気を遣って皆さん敢えて的になってあげてたのか。
そんなの痛いから、僕は、絶対嫌だ。
突きのままの体勢で、呆然とするオダマキ殿下の剣を、僕の剣で叩き落とした。
試合終了の声が上がらないのは、オダマキ殿下に忖度しているからだろう。
先生も、大変ですね。
オダマキ殿下は、慌てふためいて剣を拾うと、僕との距離をとった。
賢明な作戦ですね。
ただ、残念なお知らせなのですが、僕の足と手は、人よりずっと長いんです。
一方踏み込むと、オダマキ殿下が思わず仰反った。
そんな体勢じゃ、防戦一方でしょうに。
細身の剣を、手首のしなりを使ってオダマキ殿下の斜め上から振り下ろす。
辛うじて逃げた先へ、更に一太刀浴びせると、避けた反動で後ろに倒れる。
審判員さん、そろそろ負けを認めさせないと、もっと無様な姿を晒させることになりますよ?
僕は、ステップを踏んで、オダマキ殿下の背後に回った。
剣先を、ピタリと彼の後頭部に当てると、流石に審判員が割って入った。
「勝者!ルドベキア・エーデルワイス!」
観客席からの歓声が凄い。
皆で騒げば怖くない?
不敬罪を適用しようにも、人数が多すぎて把握しきれないよね。
でも、セリ、扇を振り回すのはいけないよ。
やっぱり、お義母様から叱っていただかないとダメだな。




