セリ10歳〜化粧品万歳〜
先ずは、人脈を作るために、撒き餌が必要だ。
私に出来る事で考えれば、薬草を使った化粧品が現実的。
それに、美しさを追い求める貴族女性にはウケがいいはず。
美容液には、大きく二つの効果が期待される。
美白とアンチエイジング。
植物にそれを求めるとなると、アロエやヘチマ、カミツレなんかも良い。
でも、私が特に押し出したのは、ハトムギ。
年齢を重ねると、小さなイボが出来ることがある。
このイボには、ハトムギが良い。
それに消炎効果もあるから、ニキビなんかにも効く。
即効性はないけど、他の物とブレンドする事で、今までにはない効能を年配の女性にアピール出来ると思った。
でも、素人だけで、大量の素材を全て集めるのは、無理。
私は、お母様に相談して、最初にヘチマ水を作った。
私の本気を知って欲しかったから。
そこから、少しずつ本格的な化粧品にする為に、自家製のハーブを混ぜたりして自己流ながら頑張ってみた。
メイドの皆が、自分の身を犠牲にして試供品を使ってくれたのは、本当にありがたかった。
そこから、更に改良を加え、我が家で使うには十分なレベルまでには高める事ができた。
ただ、本格的に作るとなると、素材の量が桁外れになるだろう。
子供の私の代わりにソレラを集め、最終的には物流にまで乗せられる人材がいる。
そこで、お母様のツテも頼り信頼できる商人の方をご紹介いただけることになった。
顔合わせ当日、私は、運命の再会を果たす。
「初めまして。私の名は、セージ・クスノキと申します」
私は、信じられずに目を擦った。
記憶よりも、ずっと若い彼が目の前にいる。
「あ、は、初めまして!セリ・ディオンと申します!どうぞ、よろしくお願いします!」
私は、淑女とは程遠い大きな声で挨拶し、彼の手を取り握手した。
いきなり少女とはいえ、貴族のお嬢様に手を握られたセージさんは、顔を真っ赤にしてペコペコ何度も頭を下げてくれた。
神様、ありがとう。
この化粧品、必ず成功するわ!
そこから、話はトントン拍子に進んだ。
お兄様は、科学的見地から、生産過程の効率化を考えて下さる。
セージさんは、私の欲する薬草を、神がかり的早さで手に入れて下さった。
我が家のメイドさん達は、自ら試作品の実験台になってくれる。
形が見えてくると、お父様は、損益計算を行い、利益が出る事業だと分かると生産できる場所を用意してくださった。
お母様は、広告塔。
その美しさと交友関係の広さから、徐々に高位貴族の奥様方からの受注生産を頼まれるようになっていった。
勿論、私も信頼できるクラスメート達限定で、『貴女達だけね』と試供品を配る。
先ずは、ジワジワと。
人って不思議よね。
大抵の人は、限定品に弱いのよ。
特別感を手に入れた人は、公には触れ回らないけど、お肌の美しさを褒められると、
「実は…」
とコッソリ明かしてしまう。
そうなると、何がなんでも窓口になる私に繋がろうとしてくるのよね。
ふふふふふ、オダマキ殿下、知らない間に貴方の周りは包囲され始めていますわよ。