セリ10歳〜復讐したーい!〜
入学してから2年。
ルドベキア様と私の婚約が正式に結ばれたのは、私が十歳になった時だった。
未だに我が家との縁結びを諦めきれない王家からの横槍で、こんなに時間がかかってしまった。
七歳の時に白髭マロン先生が出して下さった『過度なストレスによる拒否反応』って診断書がなかったら、どうなっていたことか。
ほら、ストレスは、万病の元だから〜。
お父様も、お母様も、お兄様も、使用人の皆も大喜び。
その日は、ハスお父様が、秘蔵のワインを皆に振る舞って大騒ぎだったわ。
やっと王家の呪縛から解き放たれた私に、怖いものはない!
既に一度は勉強した内容。
しかも、王太子妃教育もバッチリ受けていたんですもの。
学園での成績は、勿論、トップ。
能力を隠さないで生きられるって、最高〜。
ただ、教師も、時々私を見失うほどの影の薄さ。
クラスにいる時は、スズナとナズナが挟んでくれるから、クラスメート達との会話も捗る。
でも、一旦教室を出て一人歩きを始めると、誰も見つけられないらしい。(担任談)
だから、ここ最近、『空気』に会いたかったら、先に『髑髏』を探せと言われている。
ほら、放っておいても私からルドベキア様に近づいていくから、皆も見つけやすいみたい。
こうして、自分自身の幸せを掴んだのは最高なんだけど、まだ、やらないといけない事があるのよね。
それは、王太子への復讐。
八歳の時にクラスに襲撃を受けて以来、時々思い出したように私を探して大騒ぎするお馬鹿さん。
まぁ、この影の薄さを使って返り討ちに合わせているけど。
逆に、ルドベキア様とケイトウお兄様の心配性の方が過剰になって、そちらが辛いくらいよ。
愛されるって、罪ね。
私は、『オダマキ殿下が王様になったから、国が疲弊して、疫病が流行ったのよ!』って思っている。
それに、側近候補にも、並々ならぬ恨みがある。
王太子の愚行を諌めるどころか、尻馬に乗って囃し立て、誰一人、私への冤罪についてオダマキ殿下に苦言を呈する方は居なかった。
今思い出しても、アイツらのニヤけた顔には、はらわたが煮え繰り返る。
それに比べ、オダマキ殿下より二つ年下の第二王子、ヤブラン殿下の方が、実力、人望共に上。
どうにかして、オダマキ殿下達を引き摺り下ろして、ヤブラン殿下を担ぎ出さないと、私とルドベキア様、ひいては、全国民の将来に影を落とす。
そこで、先ず私が考えたのは、学園内での人脈作り。
世界は、人が動かすのよ。
昔、セージ・クスノキさんがよく言っていた。
『信頼できる人間は、万金に値する』
ってね。
今までの人生の中で、あの人ほど、信頼に値する人は、居なかった。
あぁ、セージさん、お元気にしていらっしゃるかしら?
懐かしさに、少ししんみりしちゃうわ。
さて、簡単に人脈と言っても、先ずは周りが私とお近づきになりたいと思うきっかけがいる。
だって、空気となんて、お友達になろうって思わないでしょ?
私の特技をフル活用して、素敵なアイテムを作るわよ!