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ナズナ8歳


セリ様をスズナと私の二人で挟んで、今日もお話に花を咲かせる。


最近では、他の女子も、私達の会話に入ってくるようになった。


セリ様の影の薄さは相変わらずだけど、人柄の素晴らしさと、時々教えて下さるお肌や髪のお手入れ方は、我がクラスで密かなブームを巻き起こしている。


勿論、他のクラスになんて教えないわ。


だって、セリ様は、私達のセリ様だもの。


今日は、セリ様が焼いてきてくださったハーブクッキーを食べられるとあって、チラホラ男子も周りに集まり始めている。


美味しい上に、体にも良いって評判だものね。


女子が、いそいそと用意してきたテーブルクロスやお皿をセッティングしようとしていた時、



「セリ・ディオンとか言う女は、何処にいる!」



突然一年生のクラスにオダマキ殿下が現れた。


お母様から、『絶対近づいてはなりませんよ』と口酸っぱく言われているから、スズナと目配せしてその他大勢の後ろに隠れる。


双子は、どうしても物珍しいらしく、以前王妃様に招かれたお茶会でも、スズナ、ナズナと言う名前をわざと『スズメ、ナマズ』と言い替えて酷く揶揄われた。


スズナのスズメは、まだしも、ナズナのナマズって何よ。


ネーミングセンスゼロね!


私以外の女の子達も、凄く迷惑そうな顔をして息を潜めている。



「俺の呼び出しに一度も応えなかった不届き者を成敗しに来てやった!さっさと出てこい!」



オダマキ殿下は、右手に模擬刀を持ってブンブン振り回していた。


え?まさか、それでセリ様を殴るつもり?


あり得ないわ!



「ったく、お前らは、返事もできないのか!」



オダマキ殿下の取り巻きの方々が、大声で怒鳴る。


別に聞こえてないわけじゃない。


ただ、六歳も年上の男の子達が怖いだけよ。


護衛の方々も、止めようかどうしようか迷われているみたい。


その時、私とスズナの手を握ってくださっていたセリ様が、いつの間にか手を離していた。



「いたっ」



突然取り巻きの一人が、頭を押さえた。


振り返って何かを探しているようだけど、よく分からない。



「うおっ」



次は、オダマキ殿下が突き飛ばされたように前に転がり出た。


護衛の方にも緊張が走るけど、皆、キョロキョロするばかりで犯人らしき人物がいない。


私達も、不安にざわつき始めた。


その時、何処からか、



「きゃー、幽霊よ!」



と悲鳴が聞こえた。



ガタガタガタガタ



それまで居丈高にしていたオダマキ殿下と取り巻きの方々は、机や戸棚に当たりながら慌てて教室を飛び出して行った。


もちろん、護衛の方達も彼らを追いかけていく。


残された私達は、ビクビクと声がした方を見つめた。


カーテンがユラユラと揺れ、皆が息を呑んだ時、ハーブクッキーの良い香りが辺りに漂った。



「さぁ、皆さま、一緒に食べましょう」



カーテンの後ろ側から現れたのは、クッキーの入った包みを抱えたセリ様!


私もスズナは、駆け寄って包みを受け取る。


凄い、凄い、凄い!


セリ様が、追い払って下さったんだわ。


普段から、影が薄いのよって苦笑されているけど、セリ様は、自ら気配を消される時がある。


そうなると、私やスズナでも見つけるのが難しい。



「テーブルを並べて。今日は、沢山作ってきたから、男子の方の分もありますわよ」



さっきまで盛り下がっていた教室が、一気に華やいだ。


あぁ、私もスズナも、セリ様と同じクラスになれて、本当に幸せ!


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