死に戻り三日目の悟り
一体、何が起こったのかしら?
赤ん坊として生まれ変わって、三日。
チュパチュパと指をくわえて考えてみたけど、やっぱり私は、38年の時を遡ったようだ。
ユラニスの第一王子であり、王太子であるオダマキ殿下は、事もあろうか彼の卒業式の日に、謂れのない罪で我がディオン家を断罪した。
確か、理由は、他国への機密情報漏洩だった。
用意周到に準備された嘘の証拠と証人を前に、私達家族の反論は、聞く価値すらないと一笑に付された。
唯一、お母様の親友だった側妃様が、反対の意を唱えたけど、多勢に無勢、王様の耳には届かなかった。
お父様とお母様、そして後継であるお兄様が断頭台に立った時、私は、牢屋に繋がれていた。
共に殺してもらえなかったのは、嫌がらせか、気まぐれか。
国外追放され、国境越えをする私とクローバーは、数人の男に捕まって、そのまま初売りの競に掛けられていた。
セリが競に掛けられる。
ざけんじゃないわよ、駄洒落言ってる場合?
あんな世界に二十二年もいたら、擦り切れて、言葉遣いだって変わるわよ。
私を売ったお金が、何処に流れたか考えるだけでも腹立たしい。
こんな下衆なやり方を、普通、王族が考えつくかしら?
誰かがアドバイスしたと考えたとしたら、余程悪趣味で酷い人間が、殿下の側に付いていたのね。
正に、底辺を這いずって生きた私がここに戻ったという事は、今度こそ、どんな事をしても皆を守れという神様からの啓示。
本当なら、前世で助けて欲しかったけど、あの時は、私も甘かったから仕方ない。
泣いて無実を訴えれば、きっと誰かが助けてくれるって、本気で思っていたもの。
貴族の世界は、弱肉強食。
弱った鹿は、食べられるしかないというのに。
でも、もう私は、昔の世間知らずな子供じゃないわ。
海千山千。
人生の苦しみの殆どは経験したはず。
だから、今度こそは、どんな事をしてでも、家族を守る。
えぇ、どんな事をしてでもね。
私の特技は、娼婦時代に培った薬草の知識!
無論、毒についても、ある程度の知識はある。
ド派手な復讐劇とはいかなくとも、必ず、オダマキ殿下を引き摺り下ろしてやる。
でも、先ずは、体力作りよ!
お母様の母乳は美味だから、いくら飲んでも飽きないわ。
ゴクゴクゴクゴクゴクゴク
ゴフッ
溺れるところだったわ。
お母様の豊かな胸、万歳。
そして、お腹いっぱいになったら運動。
手足をイゴイゴ動かしてると、クローバーが慌てて側まで来た。
私のことは、気にしないで。
ほら、針仕事の途中でしょ?
あぁ、やっぱり気になるわよね。
言葉が話せないのが、こんなに不便だなんて知らなかったわ。
クローバーは、トントンと私の胸の辺りを優しく叩いてくれた。
あ!寝かせるつもりね!
私は、運動したいのよ!
んー、でも、窓からの日差しがポカポカ良い気持ち。
あら、おかしい。
瞼が、落ちて〜。
「ク〜ク〜ク〜」
こうして私は、六歳にしてスーパーメイドなクローバーに、呆気なく眠らされる日々を送っている。
駄目じゃん!