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セリ8歳〜お友達爆誕〜


セリ、八歳!


今日より、お兄様と一緒に学園に通うこととなりました。


校門前で感慨深げに立ち止まっていると、



「「あの、セリ・ディオン様ではないですか?」」



突然声を掛けられて、私は、口から心臓が飛び出るくらい驚いた。


気配を消している私に気づく人など、この世にいるとは思ってなかった。


しかも、音声多重。


ピタリと重なった声は、双子の姉妹から発せられていた。


右の目の下に泣き黒子ぼくろのある女の子が、


「初めまして、スズナと申します」


と名乗ると、左目の下に泣き黒子のある女の子が、


「初めまして、ナズナと申します」


と続けて自己紹介した。


美しいカーテシーを披露する二人のシンクロ率は、高い。


まだ幼さの残るピンク色の頬は、頬擦りしたくなる程柔らかそうに見えた。



「「突然のお声掛け、大変申し訳ございません」」



謝る理由は、彼女達の家が、伯爵家だかららしい。


私としては、そんな事どーでも良い。


ただ、二人の少女の不安げな顔の方が心配。



「初めまして、スズナさん、ナズナさん。ところで、顔色が悪いようだけれど、どうかしたのかしら?」



私の質問に、双子は、目を潤ませながら下を向いた。



「「い、妹が・・・」」



事情を聞くと、妹のスズシロちゃんが、ここ最近体調不良で寝てばかりいるらしい。


お医者様に見せても、熱もなく、咳もしない為、首を捻るばかり。


終いには、『怠け病』なんてふざけた名前を付けて帰ってしまったらしい。


でも、今もスズシロちゃんは、目眩や頭痛を訴え、息切れ、倦怠感が治らない。


美味しいものを食べさそうにも、何を食べても味がしないと言って食べない。


益々食べなくなって、口の端が切れたり、口の中が炎症を起こしたりしているらしい。



「それを、何故私に?」


「セリ様が、エーデルワイス公爵令息様の体調改善に一役買われたと言う話をホップ様から聞きました。もし、何かヒントでもあれば、お聞かせ願えないかと」



妹を心配して、無礼を承知で私に声を掛けた彼女達のやむに止まれぬ気持ちに、私は、心を動かされる。


前世を紐解くと、確か、同じような症状の子がいた。


元々食が細くて、好き嫌いが激しい。



「ちゃんとご本人を見てじゃないとハッキリした事は分かりませんが……貧血の可能性もありますわね」


「「ひんけつ?」」


「病気の詳しい説明は、ここでは抜きにしますが、鉄分の多い物を食べる必要があると思います」


「「てつぶん?」」



ちんぷんかんぷんって顔ね。



「今度、お宅に伺っても宜しいかしら?」



「「は、はい!もちろんでございます!」」



パーッと表情を明るくした姉妹に、私も笑顔になる。


妹を救おうと、私を必死に探したのね。


『道理で、気配を消しても見つかってしまうわけだわ』


その時の私は、そんな風に考えていた。


でも、違った。



「「セリさま〜」」


スズナちゃんとナズナちゃんは、必死に私を見つけ出しては小走りに駆けてくるようになった。


気づけば、私達は、お友達になっていた。


なんだか、とても擽ったくて、幸せな気持ちだった。


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