4神室くんとご飯
「え、神室くんお昼それだけなの」
「……急に現れたと思ったらなんですか」
「だって、それっぽっちのご飯じゃおなかいっぱいにならないよ! 今日日ダイエット中の女子でもしないよそんな食事!」
「ひどい言い様ですね」
「そりゃそうだよ、成長期の男子がゼリー飲料ひとつって! ……あんまり言い難いけど、ご家族からお金貰えないの……?」
「……勝手に家庭環境想像して同情しないでください。今日はたまたまあんまり食べたくない日だったんです」
「ごめんなさい……。神室くんってご飯好きじゃないの?」
「あんまり興味はないです。生きていければそれで」
「そうなんだぁ……美味しいご飯食べるの私は好きなんだけど……そっかぁ……」
「……もっと食べろとか言わないんですか?」
「好きじゃないことを強制できないよ。生きたくないから食べないって理由でもないみたいだし……」
「……そうですか」
「あっ、でも今日午後から体育祭の練習だよ! これじゃバテちゃう!」
「ああ、それなら僕でま……んぐっ!!」
「ごめん、今なんて言おうとしてた?」
「………………(ごくん)、いきなり人の口に食べ物を突っ込む人がいますか」
「……だって、……ごめんなさい」
「……はぁ。なんだって急に卵焼き突っ込んできたんですか」
「エネルギーつくかなって。卵は完全栄養食?、なんだって」
「…………そうですか」
「ごめんね、怒らないで〜! 甘い卵焼き嫌いだった? あっ、アレルギーあった!? わ〜本当にごめんなさいっ、いやごめんじゃすまないよね、どうしよう!」
「……ああ、もう。怒ってませんから。アレルギーもありませんので」
「ホントに!? でも、ごめんなさい……!」
「気にしなくていいですから……」
謝るくらいならやらなければいいのに。そう思ったけれど今にも泣きそうなあなたを見ているとそんなことも言えなくて。もちろん、甘い卵焼きが好きだなんてことも言えるわけない。
半泣きでお弁当を食べ出したあなたの箸は、僕が使った後なんだよな、とぼんやり考えて頭を降った。何を考えているんだ。
やはり体育祭の練習などサボるに限る。そんな僕には甘い卵焼きなど、到底必要なかったのだ。