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2神室くんと優しさ
「優しさを求めるなら僕に近づかないでください」
「……え?」
「僕は優しい男ではないので」
「……もしかして今日のお昼休みの事言ってる?」
「さあ……」
「あれは急に好きな人のタイプって聞かれたから咄嗟に言っちゃったんだよ」
「……ということは深層心理の本音、ということですよね」
「あ、そうなるの?」
「そうなりますね」
「そっかぁ……ふふふ」
「……何笑ってるんですか」
「だって、私どんだけ神室くんのこと好きなのかなって可笑しくて」
「は? どうしてそうなるんです? そんな話、欠片もしてませんでしたよね」
「え? してたよー。私は、意識してなくても神室くんのこと好きだなって、優しいなって思ってるんだなって思ったら可笑しいでしょ?」
「……あなたの言ってることの半分以上が理解できないんですが」
「だからー、好きな人のタイプって話で思い浮かぶのは神室くんのことだけなんだって思ったら、私どんだけ君のことが好きなんだろうね」
「………………………………あなたはあなたのおっしゃる通り、可笑しな人ですよ」
(僕にはその好意が、まるで理解できない)