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雨の雫  作者: GreenTea
8/22

act8 愛してる

夏休みも終わりに近づいた頃、

家族旅行から帰ってきた理未子から連絡が入った。


「恵司。帰ってきたよー。逢いたいよ」

電話口の彼女の声は弾んで、

どことなく甘えた口調だ


「おかえり。今から迎えに行くからいつもの場所で待ってて」

そう言って僕は受話器を置いた。



商店街を抜けると郵便ポストが見えてくる。

その傍らに彼女が立っているのが見えた。


僕が手を振ると、

それに気が付いた彼女が両手で振り替えしてきた。


小走りに駆け寄りながら


「けいじー。あいたかったー」


「お か え り」と僕。


「ただいま〜」満面の笑顔を返してきた。

(これだー)



そう思った瞬間彼女の唇が目の前にあった。


「よせよ。こんなところで…」


夏の日差しの中、人影はない。


彼女は黙って笑いながら、

こんどは頬に触れた。



僕の中で何かが弾けた。



彼女の肩を自分の方へ引き寄せ、

両手で力強く抱きしめた。


「いたいよ〜恵司。」


「人が見てるよ…」


「構わないよ」


「だって…」

彼女の体から力が抜けるのが解った。


「恵司、愛してるよ…」


「逢いたかった。」


「オレもあ・い・し・て・る」



蝉の声すら聞こえなくなった。





僕は理未子からのお土産よりも

一枚の写真が欲しいとお願いした。


この一週間で、逢えないことがこんなに辛いことに初めて気づいた。


写真はその隙間を一時でも埋めてくれる。

いわば頓服薬だ。



家族の写っている写真に少しばかり嫉妬しながら

ジーンズにTシャツのラフな格好で一人きりの写真を選んだ。


「これにする」


「えーこれ?」


「なんか変だよ」


「いや、髪型は可愛いし、すごくいい。」


「じゃぁ、いいけど」

「捨てないでね」そう言って笑った。



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