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雨の雫  作者: GreenTea
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第3章act1 想い出の清算

職場の外線電話の音が鳴り響いた。




米さん電話だよ!外線!




普段自分への外線は電話は家族の不幸か金融機関からしか来ない。




仕事の手を止めて僕は受話器を取った。




聞き覚えのある声だ。




「中米くん?わたし…」

さすがに私じゃ解らない。



「すみません、どちら様でしょうか?」



「あ、ごめんなさい、梨華です。高校の同級生の、、」


そこまで言われると、勘の悪い自分でもやっと誰なのかが解った。





「ずいぶん久しぶりだね」

「元気だったぁ?」




彼女と疎遠になったのは、高校卒業と同時に

僕が誰か他の女の子を車の助手席に乗せていたとの噂が流れてことを知って、避けていたらしい。

その後連絡は途絶えていた。




「うん。お陰さまで」

「今何してるの?」

さほど興味のない、ありきたりのことを聞いた。



本当に聞きたいことは、

なぜ今ごろ電話をしてきたかと、"あのときの事"だった。




彼女は歯科助手の傍ら花嫁修行をしているといった。


「今度ね、わたし、結婚することになったの」


淡々と話す彼女に少し大人になった印象を覚えた。




「そっか、おめでとう」

目一杯の上から目線でそう言ってしまった。



「じゃぁもう会えないね」

言葉に気持ちがないことは自分でも感じた。



「そうだね、あのね」

彼女は淡々と続けた


「旦那様になる人もお父さんと同じで厳しい人で、

また大変かもしれない」寂しそうな口調でそういった。

まるで僕だったら良かったのにと聞こえるような口調だ


彼女は旦那様に成人と父親を重ね

縛られることに少し安心感を覚えているようにも感じた




彼女の幸せそうな話を聞いているうちに、なにか話さなくてはとういう衝動にかられた。


「まだ君との手紙しまってあるよ」

ツイ口からでてしまった。





「…」




「米くん、私は全部捨てたよ」

意外な彼女の返答に言葉を失った。



僕自信が期待していたのは、私もまだ持ってる、だったのかもしれない。


彼女は僕のことを好きじゃなかったのか、、?





「えっ?」


思わずそう反応した。




「だって、結婚するのに旦那様に悪いじゃない」


確かにそうだ。

だけど、、       僕自信が煮えきらないのか



僕の気持ちを察したのか、それとも彼女の方が大人になっていたのか

「米くんも早く捨ててね」


「いや、おれは、、、」言葉が出てこない


彼女は察したのか、


「あっ、じゃぁ、仕事中でしょ」

「ごめんね」


「報告だけはしたかったんだ」

「今までありがとうね」



「う、うん、そう、こちらこそ連絡ありがとう…」

「幸せにね」



(うん、ありがとう)


ープーっ、プーっ、プーっー



受話器の向こうの電子音で

僕自身の脳のリセット促すような感覚に襲われていた。





しばらく受話器をおくことができなかった。






その日の夕方、

自宅に帰るなり押し入れの奥から大きめの段ボールを引きずり出した。


キレイに折り畳んだ無数にある細かい手紙片を手に取り

ひとつ、またひとつ広げては読むことを繰り返した。




彼女の気持ちに少しも気づかなかったのは、

当時の僕には、この手紙の折り方と行間の部分まで理解することが出来なかったからだろう。



距離をおいて、去って行くものに感じる愛着。


そんな独りよがりの気持ちが、

彼女の当時の気持ちを見つけさせてくれたのかもしれない。





真っ赤な炎をに想い出の欠片(かけら)を放り込んでいった。




想い出の清算、、、




最後に読んだ文字は炎とともに僕の脳裏に焼き付いていった。





彼女もまた天使だったことに、そのとき気づいた。

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