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雨の雫  作者: GreenTea
19/22

act7 親友の彼女

こんな風に、孝の元カノと遊び始めたのは丁度その頃だった。



彼女のとして扱う訳でもなくいられたのは、

男女を意識させない彼女のボーイッシュな性格のせいなのかも知れない。


暇さえあれば誘って出掛けていた。


いつの間にか向こうの両親やお兄さんとも普通に話せるようになっていた。


ある日、彼女は僕のバイクを見て、

急に乗りたいと言い出した。

免許を取ることから、運転の仕方まで僕は教えた。


それからというもの

二人で出掛けてはバイクを物色する日が続いた。

僕自身が意識しなくとも、つき合っている事と変わらなかっただろう。


ただ、彼女が僕を意識しなかったかどうかは解らないが…

しかし彼女は、キスどころか手を握ることさえしなかった僕に違和感を覚えるのにそう時間はかからなかった。


彼女の就職を機に予定が合わなくなることが増えてきた。

それでも電話ではよく話し、

彼女の自宅へ足を運んではお茶をご馳走になっていた。




久々の休日、千葉の勝浦へドライブに誘った。



天気は良かったが、

風が強く海中水族館へ行くまでの橋を渡る時は飛ばされそうになってしまうほどだった。


「危ない!」

僕は思わず彼女の手を取った。


橋を渡る恐怖感がそうさせたのか、

僕の心に何かがあったのかは定かではない。


ただ、この胸の鼓動は何かちがう感じがする。


端から見ればただのカップルだが、

僕らの意識は兄妹に近かっただろう。


いや、それ以上の感情を持たなかったわけではなく、

親友の元カノという過去の事実が僕の中で引っかかっていたはずだ。


彼女もそれに気づいてか、

それ以上何も求めてはこなかった。



帰りの車の中で、彼女が突然

「米君、彼女できた?」

と聞いてきた。


「いたら、ここに二人で来れるかよ」

それはお決まりの台詞だった。


「こっちゃんに好きな人ができたら、オレもう誘わないよ」

自分に言い聞かせるように言った。


「うん。分かってる。けど寂しくなっちゃうよね」


「オレもそうしたら彼女探さないと、暇を持て余しちゃうなぁ」


「やだー、もしかして私は暇つぶし?」


「いけないか?」


「別にいいよ。」


「だって私も暇だし、米君と一緒にいるのは気が楽っていうか、疲れないんだよね。」


「兄妹みたいだなぁ」

「でも、こっちゃんには兄貴いるから比べられちゃうよ」


「兄貴はまたタイプが違うから」

ハハハ

「じゃぁ夫婦みたい?」

(彼女は何が聞きたいのだろう)


「何も感じない夫婦じゃ嫌だなぁ」


「じゃぁ恋人同士?」


「それならもっとお互いドキドキするだろー?」


「そういえば、米君も男の子なのに

私、会えなくて胸が苦しいと思わないし、会っててもドキドキしない」

「なんでだろう?」


「おいおい、それってオレに魅力なしなしジャン」


「違うの、今までに無かった感覚よ」


「今日、会えなくてもすぐ会える余裕?みたいな感じ…」

「嫌いなの?って聞かれたら、好きだよって答えられる」

「じゃぁなに?って…なんかおかしいよね。」


「米君は?」



「オレも実は同じ感覚だったんだ」


「あるんだね男女を越えた存在って…」


車の外はいつの間にか雨が降り出していた。

フロントガラスにあたる雨の雫が落ちようとするたび

ワイパーにかき消されてゆく。


赤信号で停まると、雨音だけが響いていた。




「米君さ」

「もし今、私がエッチして欲しいっていったらどうする?」


「なにを藪から棒に!」

僕は驚いた。


「なにーその単語〜死語だよ〜」

彼女は笑っている。


「はい、答えて!」



「本気なの?」


「本気だよ。」

大きな目でこちらをのぞき込んだ。



「オレも男だから…」

「襲うぞ!」


「キゃっ!あぶないよ〜」

両手でくすぐるまねを見せた。



「据え膳食わぬは男の恥ってか!?」


「また古ーい」

「でも、よかった」

「米君はそんな素振りも見せないから、私に魅力がないのか?」

「コレかと思ったわよ」

手の甲を返して頬にあてた。


「参るなぁおかまかよー」


「だってカッコ良く見えるけど、どことなく女の子っぽいよ」

彼女のそんな言葉が、僕の心の地雷を踏んだ。


「・・・」


静寂の中、

彼女の首にそっと左手を回して、

顔を引き寄せ、強引に唇を押しあてた。

「アッ。」




「よ、米君…」

「なんかドキドキする、ょ…」




「オレも…」



「…」



「私たち、これで不思議な付き合い終わっちゃうんだね。」


「そうか、失敗したなぁ」


「わたしも…失敗した…」


「気づいちゃいけなかったんだね」

「ごめんね」


「何で謝るの?」

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