表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
雨の雫  作者: GreenTea
18/22

act6 彼女の気持ち

彼女はただ黙っている。


「さ、降りよっ。」

彼女はゆっくりとこちらを見た。



「あのね恵次、電車は乗り越してもまた戻ればいいけどね」

「人生は前にしか進めないんだよ。」


「あなたと私は交差点を間違えたのかもしれない。」

「うぅん、これで良かったのかも…」


「そう、もう違う道を歩いてるの」



「だから恵次も前に進んで、」


「もっと前に…」


「そして神様がそこにいたら」


「また、あなたとの道が交わるかもしれない」


「そしたらその時はよろしくね。」

彼女はだんだんかすれた声になって終わった。



バスを待っている間、彼女の横顔ばかり見ていた。


「顔に何か付いてる?」


「いいや」


「さっきからずっと見てばかりじゃない」

彼女が怪訝そうな顔をした。


「名残惜しいからね」


「男のくせに未練がましいぞ」


「あぁ判ってる」




「理未子はどんどんきれいになるなぁってずっと思ってた」


「えー、今頃気づいたの?」


「いや実は別れた夜には後悔してた」


「私は恵次より悲しかったと思うよ」


「えっ?」


「あのときもあなたははっきりしないから、そして今も…」


― 管理棟前 ―


乗務員のアナウンスが流れた。


「じゃ降りるね」


「あぁ」


「またね」


バスを降りて手を振る理未子の姿を目で追いかけて、

彼女の姿が見えなくなってふと我に返った。



(あのときも?)

(はっきりしない?)

(そして今も…?)



「あっ!」



僕はその時になってようやく気づいた。



さっき、

あの時が、神様がセッティングしてくれた彼女との交差点だったと・・・


既にバスは終点へと向かっていた。



家についてすぐに電話をしてみたが、


彼女はまだ帰っていない。


後悔しながら受話器を置いた。

二度目の失敗だった。




彼女はそれから一時間、

降りたバス停にいたことを僕は知らなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ