表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
雨の雫  作者: GreenTea
17/22

act5 僕の気持ち

目的を果たせなかった彼女は落胆し、

前までの元気の欠片もなくなり

僕の旅も終わりを迎えようとしていた。



「これからどうするの?」


「京都に帰る」


「恵次は東京だもんね」


「ここでお別れだね」

彼女は寂しそうに

「うん。」

と、頷いた。


「なぜか4日間一緒に居ただけなのに」

「もう、ずっと前から付き合ってた気がする」


「オレも…」


「今度いつ会えるかなぁ」

僕も急に寂しくなった。



「さぁ…」

彼女の目が、僕のほうを見ていなかった。



「神様が決めてくれるよ」

彼女が言った。



「えっ?」

「今なんて?」



「所詮、人の出会いなんか、神様が決めてるんだよって…いったの」

「なんか変?」



「それと同じ言葉、元カノが言ってた」

デジャヴューかと思った。


「じゃぁ、その彼女も知ってたんだね」

「別れの時を…」

みゆきは疑う様子もなくいった。


「寂しかっただろうね、彼女。」


「恵次、私ね一度富良野に行ってみたかったの」


「じゃあ、今から行こうよ!」

僕は本気だった。


「ダメなの富良野の夏は短いの」

「だから、今はダメ」

「来年の夏の初めにラベンダー見られたらいいなぁ」

彼女の願いだったのかもしれない。



「判った。じゃあ来年の夏に富良野に行こう!」

「そうだね、それいいね。」

僕は本気だった。



「恵次、約束なんて出来るの?」



「あたり前だろ」

「忘れるなよ!」



「恵次こそ、忘れないでよ」



僕の気まぐれ旅行は、

思いも寄らない出会いから始まって、

彼女の乗る飛行機が先に飛び立つのを見送って、

あっさり幕を降ろした。



羽田に着いた時は既に暗くなっていた。

僕は連絡先も聞かずに別れたことを後悔していた。



帰りの電車では熟睡してしまったようだ。

うっかり乗り越してしまった。


終点の駅で反対側に乗り換えて発車するのを待った。



次々と仕事帰りの人たちが乗り込んでくる。


僕は席を空けるために、端の方へお尻を詰めた。


その空いた七分席に女性が腰掛けた。


「あれ?米君?」


隣の女性が声を掛けてきた。



聞き覚えのある声だが、と思いその人の顔を見た。


「滝井!」


「米君、久しぶり」


3年ぶりの再会だった。



僕は何を話したらいいのか分からなかったが、

彼女はそうではなかった。


短大を卒業し消防官になった事や、

毎日が忙しいことを二駅の間に話してくれた。



(神様は僕にどうしろというんだ?)



「米君はどこかの帰り?」


そう聞かれて返答に困ってしまった。


「うん。まぁね」


「相変わらずだね」


「なにがだよ?」


「そういうとこ。」



(なんで彼女と別れたんだろう)



そんな事を考えているのを見透かされているかのように


「彼女出来た?」

「いつまでも考えてばっかりいると幸せが逃げちゃうぞ」


(人の気も知らないで、いい気なもんだ)



「そう言う滝井はどうなんだよ」

内心、不安だった。



「私?ないない」

「毎日が訓練だから、そんな暇ないよ」

消防学校じゃ大変そうだ。


「なんかスゲーなぁ」

「オレは将来、何やったらいいかまだ分からないよ」


「大学辞めちゃえば?」

唐突に言われ言葉がでない。


「辞めて、第一志望の自衛官になったら?」


「なんでおまえ…知ってんの?」

誰にも知らせてなかったはずなのに驚いた。


「あったりまえじゃない!」

「伊達に彼女やってた訳じゃないのよ」


「ありがとう」


「なんでお礼?」


「いや、なんとなく…」


「オレはお前の彼氏をちゃんと出来なかったね」


「なんで?」

「何でそんな事いうの?」


「ちゃんとやってたじゃん」

「わたし、恵次に感謝してるよ」


彼女の口調がいつになく激しかった。


「感謝?」



「素敵な思いで沢山もらったし…」

「あなたとの思いでは、私の宝物なの」



「そうか…」

「思い出になっちゃったか…」


言葉の一つ一つに寂しさが詰まっていた。


「あなたは私との事は、いい思い出じゃないの?」


「…」


「何で黙ってるの?」

彼女が言った瞬間、



(オレの中でのお前は、まだ存在してるんだよ!)





そう言いたかった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ