表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
雨の雫  作者: GreenTea
15/22

act3 秘密

彼女はみゆきと名乗った。


北海道は何度も来ているが、飛行機で来るのは初めてらしい。

まして、札幌や函館のようなメジャーな都市はあまり詳しくないそうだ。




結局、彼女の誘惑に勝てるはずもなく、朝の散歩に行きそびれてしまった。



「みゆきは何でそんなに北海道にこだわるの?」

ボクの傍らで横たわっている彼女のほうを向いた。


「・・・」

彼女は黙っている。


「オレは何に合格したの?」


彼女の右手の人差し指が、

僕の唇に触れた。


「しーっ。恵次は少し多弁だよ。」

「おしゃべりな男はきらわれちゃうぞ。」


「こういう時間は黙って相手の顔を見て過ごすもの。」


「安らぎは買うことが出来ないわ」

「だから、旅で見つけるの」


「北には、寂しくて自分を見つめなおすために一人で来る人が多いわ」

「男性が少し大人になるところなの」

「私はここが好き」


「ふ〜ん。」


「恵次も大人になったでしょ?」

「ふふっ。」


僕の頭に血が上るのを感じた。


彼女は僕をからかっているのか、

それとも、そういう対象で見ているのか判らなかった。



10時のチェックアウトが近づくと、

彼女はシャワーを浴びて目の前で着替え始めた。


改めてみると、彼女の肢体は美しい。

モデルというか、かなり完成度が高い。

僕の目は釘付けになっていた。


「恵次は、今日はどうするの?」

ボタンを留めながら、僕のほうを向いた。


「まだ、考えてない。」


「みゆきは?」


「私は、行きたい所があるの」


「一緒に行く?」

探る様な顔だ。


「行っていいの?」


「別に構わないけど、ちょっと遠いわよ。」


「分かった、どうせ予定もないから一緒に行くよ。」

僕はお供することにした。




二人は、札幌駅でレンタカーを借りた。

一番安くてかっこ悪い普通の乗用車だったが、

僕にはとても乗り心地がよかった。



なぜなら、

助手席には、昨日出会ったばかりのみゆきが座っている。

とても不思議な光景のはずなのに、

その中を流れる空気はとても自然だ。


高速に乗り、数時間かかる積丹半島へ向かった。

途中のお昼は、彼女が"鮭といくらの親子丼"がお勧めだといったので

わざわざガイドブックで食堂を探して入った。


「これ、おいしぃ〜」


「ホント、やっぱり本場は違うね」


「東京では絶対に食べられないよ」


「うまい、うまい」




彼女はいつも笑っている。

何を話しても楽しくて仕方がない。


(この人と付き合ってみたい)


いつしかそう思うようになっていた。





助手席の彼女はいつの間にか眠っていた。


お腹もいっぱいになったし、喋り疲れたのかもしれない。


(眠った横顔がまた可愛い)


眠い目をこすって運転していたが、

目的の積丹まではあと一時間くらいだった。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ