act11 逢えない日々
理未子と逢わない日がまた始まった。
人は寂しさに慣れてゆくとはよく言ったもので、
僕も例外ではなかった。
相変わらず梨華とは毎朝廊下で話しているが、
恋愛といった雰囲気ではない。
たぁこはと言えば、
あの日以来、僕を無視しているようだ。
「おはよー。次のレコードは?」
「…」
「なんだよ、また無視かよ〜」
「…」
「ほら、写真出来たよ。」
無造作に彼女の前に差し出す。
「こんなの学校に持ってこないでよ」
しゃべった!が、かなり怖い
「じゃぁこれ受け取って」
中でも写りのいいものだけ入れといた封筒をわたした。
「いらない!」
つき返された。
「オレなにかしたか?」
彼女は答えない。
「…」
始業のチャイムが二人を引き裂いた。
孝にこの一件を打ち明けた。
「おまえ、だから言っただろ」兄貴の目線だ
「オレ、おまえに何か言われたか?」何も思い当たらない
「かー!やっぱ無神経だなぁ」
「おまえのやっていることは二股って言うんだよ」
そう僕を叱責した
「二股?ちがうよ」慌てて返すと
孝は冷静に
「いや、間違いなく二股だ」
「おまえ、どっちが好きかはっきりしろよ!」
「このままじゃぁ理未ちゃん可愛そうだろ?」
僕は反論した
「たぁこには彼氏がいて、オレは今無視されてるし…」
「どっちにもだろ?」孝が言う
「そう。」
「でも、たぁことは付き合うつもりなんかないよ。」
「そっか。」
「でも、続は彼氏と別れたって噂だぞ」
「えっ!?それ、ホントか?」
(やった!)
「ほらほら、ナビいてんじゃねぇぞ」
孝は僕の表情を逃さなかった
「理未ちゃんどうするんだよ?」
「逢ってない。二ヶ月…」
「自然消滅も良いけど、たぁこに乗り換える勇気があるのか?」
「…」
(正直、僕にそんな勇気はない…)
「少し、頭を冷やせや!」
この月の終わり、孝とこっちゃんは別れた。
理由は聞かなかったが、
孝の一方的な電話のようだ。
三年になり部活を引退した春、
いよいよ進路を決めなくてはいけない時期になった。
孝は大学を受けるという
僕は自衛隊に入隊を考えていた。