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忍者ごっこ

作者: 有瀬ひつじ

 長いかいだんを上ったところに、ひめの家がある。広いお庭で、いつも一緒に忍者ごっこであそんでいる。

 ひめは忍者ごっこが大好きだった。

 お庭中を走り回ったり、石のベンチにとびのって、とびおりて、となりのベンチにまたとびのって。

 走りつかれたら次は勉強の時間。忍者について勉強する。

 大きなサクラの木は、太いみきがぐにゃりとまがっていて、アスレチックのように上を歩ける。毎年春になると、きれいな花をたくさんさかせるから、二人でみきにすわってお花見をした。

 そのみきから、「ばくてんします!」と大きな声でさけんでから、もちろんバック転はできないからそのまま高くジャンプしてとびおりる。二人で考えた忍者っぽいあそびだ。

「つぎはそくてん!」

 広いしばふの上をころがりまわった。

 毎日が、ただ、楽しかった。

「また明日も、忍者ごっこしようね」

 ひめがそう言うから、「うん」とこたえる。

 そして次の日もまた、長いかいだんを上ってひめに会いに行く。


 大きくなると、ひめと二人で遊ぶことはなくなった。

 顔を合わせることも。


 ある夜、ひめが家への帰り道を急いでいると、後ろから不審な影が着いて行く。

 ひめも背後の足音に気付いているようで、時折足を止めては振り替えって様子を伺っている。

 不審な影が手を伸ばせばひめに届くほどに近付いた時、ひめは勢いよく振り向いた。

 しかしそこには誰もいない。

 先程の足音も消えていた。

 ひめはほっと息を吐くと、家路を急いだ。


 もう大丈夫。不審な影はもういない。

 ひめが家に入るのを見届けてから、携帯電話を取り出した。

「報告いたします。不審者を一名駆除いたしました」

 電話の相手は低い声で応える。

「ご苦労だった。明日も頼む」

「御意」

 電話を切ると小さくため息を吐いた。

 忍者ごっこは、まだ続いている。

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