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仏典の勝手な脚色ノベルシリーズ

てきとー訳 八正道経 ~ 悟るための修行の心得!?

作者: 阿僧祇


 今回は八正道……『四諦したい』(四段階の悟り)のうちの『道諦』に関するお話です。


 しかし予備知識がないと本文が単なるキレイゴトに聞こえてしまうかもしれないので……、このジャンルには初心者という方々のために、まずは前提となる『四諦』について序文でごく簡単に説明いたします。(詳しい方には不要な解説ですが、しばしおつきあいください;)


 常人には理解困難だったブッダの悟りを、あるていどは理屈で説明できるように整理した理論が四諦です。

 なお「四諦そのものがブッダの悟り」とする説もありますが、それは、パンフレットを読んだだけで現地を完全に理解できると言うような、型演武のビデオを見ただけでその武術をマスターしたと言うような、そんな感じの話ではないかのな~、なんて思うのが筆者の立場です。そんなに簡単だったら修行してる皆さんも苦労はしない、と思うので;


 ともあれ、ブッダが悟りを開いた後、最初に説法した方々に語ったのが四諦という概念だったとされております。

 その内容を乱暴にまとめると、


 1)苦諦くたい

 生きていれば苦しいのが当たり前で、そこから逃れることは誰もできない(諸行無常とか)と悟ること。


 2)集諦じったい

 苦しい原因は、無明むみょう(真実を知らないこと)から煩悩ぼんのー(欲求やこだわり)が生じるからと悟ること。

 どうやって苦しさが発生するかの理論(十二因縁とか十如是とか)。


 3)滅諦めったい

 原因が無くなれば結果もなくなると悟ること。

 苦しさを打ち消したり幸せを生じさせたりするための理論(因果とか一切皆空とか)。


 4)道諦どうたい

 そこまでわかったところで、無明でなく明(悟り)になる具体的な方法(八正道とか梵行とか)。



 この4つめの『道諦』として仏教各派の修行方法があるわけですが、ここでは上座部系の三十七道品に含まれる『八正道』について解説されてるお経を紹介してみました。


 上座部は他人を救う前にまず自分を高めることを優先する考え方の仏教で、タイやスリランカでは主流となってるものの、日本ではかつて「小乗仏教」と呼ばれ軽視されてきました。

 が、歴史学的には「初期の仏教は上座部に近い形だった」という説が有力となり、その概念は「原始仏教」とも呼ばれます。


(注:学問の定説は研究の発展によって変わる場合もありますので、筆者はこれを以て「原始仏教こそ真実の仏教」と断定するものではありません。特に歴史や宗教は必ずしもその時点の主流学説に従わなくても結果として正しい場合もありますから; が、現在の定説も根拠に説得力はあるので、この一作はそれにに基づいて解釈したく思います。)


 この教えは小乗と呼ばれただけあって、大乗仏教とは違い仏神菩薩等の助けを求めることができず、自力で自分を苦しみから救わなければなりません。

 逆に言えば、宗教に懐疑的な立場からでもやや納得しやすい内容ではあります。


 上座部にも各派があり解釈がいろいろ分かれますけども、筆者は素人ゆえあまり細かいことには触れず、おおまかな解釈で訳してみました。

 立場や解釈がいろいろある以上、ネット上で不毛な宗教論争とかはしたくないので、もし重要な間違いなどありましても、こっそり訂正できるようこっそりと教えてくださいませ~、、、



 では単純明快で実践重視な原始仏教の入り口を、ご一緒に覗いてみましょう~♪



後漢安息國三藏安世高 漢訳

現代日本国素人阿僧祇 てきとー訳

 

 佛説八正道經


 聞如是一時佛在舍衞國祇樹給孤獨園佛告諸弟子聽我説邪道亦説正道……


 こう聞いたんだ。

 あるときブッダは舎衛国サーヴァスティ(コーサラ国の首都)の祇樹(ジュータ林)、給孤独園(アナータビンディカ園)で、弟子たちにこう言ったんだって。


「邪道と正道しょうどうについて話すから、ちょっと聞いてネ。


「どういうのが邪道かってうと。

 不諦見ふたいけん(正しい見方をしない)

 不諦念ふたいねん(正しい想い方をしない)

 不諦語ふたいご(正しい言葉を言わない)

 不諦治ふたいち(自己コントロールをしない)

 不諦求ふたいぐ(正しいものを求めない)

 不諦行ふたいぎょう(正しい行いをしない)

 不諦意ふたいい(正しい心がけをしない)

 不諦定ふたいじょう(正しい瞑想をしない)


「こういうやり方が八邪行(八つの邪な行い)だョ。」


「じゃ、どういうのが八正行(八つの正しい行い)かっていうと。


1)

「ひとつめは諦見たいけん(サマヤ=グドルスティ、見方を明確に知る)。諦見とは何かっていうと。

布施ふせ(他者に与えること)の意義を信じる。礼儀の意義を信じる。祭祀の意義を信じる。善悪の行いは自分にふつーに報われちゃうと信じる。父母を信じる。世界中の求道者たちを信じる。諦行と諦受を信じて、この一生でか、または生まれ変わってから自力で悟りを開き、それを説明もできるようになると信じる。これが諦見だョ。」


2)

「ふたつめ、諦念たいねん(サマヤ=クサンカルパ、想い方を明確に知る)とは何かっていうと。

「ぶっちゃけ、欲を棄て、しがらみ(家族など)を棄て、不快になったり怒ったりせず、お互いのパーソナルスペース(心理的なものも含む)には侵入しない。これが諦念だョ。」


3)

「みっつめ、諦語たいご(サマヤ=グヴァーク、語り方を明確に知る)とは何かって言うと。

「二枚舌を使わず、無責任な噂話をせず、悪口を言わず、嘘をつかない。これが諦語だョ。」


4)

「よっつめ、諦行たいぎょう(サマヤ=クァルナンタ、行いを明確に知る)とは何かっていうと。

「殺さず、盗まず、エッチなことしない。これが諦行だョ。」


5)

「いつつめ、諦受たいじゅ(サマヤ=ガージヴァ、得るべきものを明確に知る)とは何かっていうと。

「道を求める弟子は正しいやり方に従い、法(宗教的真理)に合わないものは求めない。最低限必要な、食べる/寝る/病気を治すときも、正しいやり方に従い、法に合わないものは求めない。これが諦受だョ。」


6)

「むっつめ、諦治たいち(サマヤ=グヴヤーヤマ、自己コントロールを明確に知る)とは何かっていうと。

「何度生まれても死んでも、精進(目的を果たすための努力)できる因縁(原因)によって自分ができる行いに力を出し、精進(努力)をサボらずに続ける気持ちを持ち続けるようにする。これが諦治だョ。」


7)

「ななつめ、諦意たいい(サマヤ=クスルムティ、心を明確に知る)とは何かっていうと。

「何度生まれても死んでも、大切な目的を念じ続け、関係ない余計なことは考えたり求めたりしない気持ちでいる。これが諦意だョ。」


8)

「やっつめ、諦定たいじょう(サマヤ=クサマーデヒィ、瞑想を明確に知る)とは何かっていうと。

「何度生まれても死んでも、思念を止め、体の動きを止め、自分を護ろうとすることも止め、なにもかも止める。何もしようとせず、何も悪いことをせず、悪い状態に堕ちない。これが諦定だョ。」


「比丘の皆さん、道をゆく弟子とはこの八種の『諦(悟り)への道』を教わって知っている人のことなんだ。今から説明するように、八つの方法で諦を得る(=悟りを開く)んだ。


「ひとつめは諦見……布施(与えること)を信じて後世にその報いの福徳を得る。礼儀を信じて修行の道を行く沙門に礼儀正しく接するので福を得る。祭祀を信じて香を焚き花を供え灯りをともす。十善(不殺生/不偸盗/不邪淫/不妄語/不綺語/不悪口/不両舌/不慳貪/不愼意/不邪見)を信じて行い自然にその報いの福徳を得る。父母を信じて親孝行し従順となり家庭が平和になる。世界の求道者たちを信じて経(教え)を理解し喜べる。求道を信じてその行いが求道的になる。諦行を信じて自分の中の悪い考えを断つことができる。諦受を信じて戒(努力目標やルール)を犯すことがなくなる。この一生、または生まれ変わってから悟りを開き、他の人にも、自力でできるなら自力で、助けが必要なら助けてを得て悟りを開くことを教えられる。こういうのを『諦見を知る』といい、自分も解脱し他人も解脱させることができるようになるョ。


「ふたつは諦念……目的を果たすためにその目的を忘れる。しがらみを捨てるために道を念じ続ける。怒らないために我慢する。お互いに踏み込まなければどちらも正気を保てるからネ。


「みっつめは諦語……罵る言葉を吐かず、四過を犯さない(妄語(ウソ)/両舌(二枚舌)/悪口/綺語(おべんちゃら)を言わない)。ただ、必要な真実の言葉だけを口にするんだョ。


「よっつめは諦行……殺さず、盗まず、エッチせず、そして信じて真実だけを行うんだョ。


「いつつめは諦不堕貪……貪りに堕落しないよう、衣ひとつと一日一食、そして最小限の医療を求めるだけにするんだョ。


「むっつめは諦治……『三十七道品』(悟りを開くための37の修行法、詳細はぐぐって;)の教えを実行するんだョ。


「ななつめは諦意……三十七道品の教えから離れることなく、日々どんどん増進するんだョ。


「やっつめは諦止……物事にはすべて因縁(原因と結果の関係)があるということを忘れないようにする。常に『止』を護る気持ちを持ちそこへ還ってくることが大切。『止』を実現できたらもう間違いは犯さない。いつも『止』でいるようにすれば確実に幸福になれるョ。」



 ブッダはこのように説明し、みんなは喜んでこの教えを受け入れたのでした。


 ブッダの説明した八正道についての伝え、おしまい。

 

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