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Cat of War

作者: 城崎 曇

初投稿です。


短編になっているので気軽に読んでみてください。

Cat of war




あなたは犬派?猫派?  今日も朝のニュースではくだらないテーマで盛り上がっている。晴れ空の中、都内の駅前の10代20代の男女にインタビューしている映像が垂れ流されている。

一体それを知ってどうなる、可愛い子犬や子猫の映像…今やネットを開いてもテレビを見ていても飛び込んでくる。犬猫の話題などもううんざりだ。


 今日も仕事に行く前にイライラしてしまった。今日は仕事を早めに片付けて帰ろう。

なぜなら帰ったら…。


「おせーよ、くにお。」

「くにおさんお疲れ様。」

「ログイン早く~、あ、スーパーレア当たった。」


 今日もオンラインゲームの友達とゲームにのめり込む、この3人はこのゲームを始めた時からの友達だ、顔も見たことがないがそれなりに気の知れ合った仲だ。

「脳筋いねぇと火力足んねぇよ。」

といつも憎まれ口を叩いているのが、ジン。一番の曲者だがなんだかんだで頼ってきたり1番俺の冗談で笑ってくれる優しい男。ゲーム内では戦略を立てて自身も前線で戦う頼もしい存在。


「ジンさんさっきからずっとくにおさん待ってたんだよね~。」

彼はマグ、いつも落ち着いていて話しやすい。性格は穏やかだがゲームではどこにでも現れ敵を倒す戦闘狂、頼りになる。


「このモンスターなんか可愛い、ぐへ、うひひ、可愛い」

明らかに気持ちの悪いモンスターに発情している彼はパンテ、よく知らないがこいつはたぶんクズだ、ゲームでも後方支援とサポートをするふりして相手に奇襲をかける。


俺たちのパーティーにはサポートも壁もいない偏ったパーティーなのだがそれが無性に楽しくていまだに誰もサポートに転身しない。

毎日のようにこのメンバーとゲームをして寝る。休日起きている間はゲーム、そんな毎日がストレスの発散にもなり楽しかった。



 この中でもマグとはよく話しているほうだった。ジンは決まった時間にいなくなるし、パンテは現実で何をしているのか時々わけもなく消える為安定していつも同じ時間に話せるマグとはいろんな話をした。


「じゃあ………‥お疲れ!。」

今日もジンが早めにログアウトした。


一人がいなくなると雑談に変わるのがいつもの流れだった、いつも俺から話題を振っていたが今日は特に思いつかないので今朝のニュースのことを問いかけてみた。


「マグさんとパンテは、犬派?猫派?」


「え?俺は、猫…かな」

「馬。」


ボケているのか話が通じていないのかわからないパンテは差し置いてこれ以上会話が続かない、これだから犬派?などという質問は嫌いなんだ。


「くにおさんは?」


「あぁ、俺は…どちらかというと猫かな、正直どっちでもいいけどね。」


「うまー。」


「猫はとにかく可愛いよね、形、声、すべて完璧!」


そういうマグの電話口からは猫の声がうっすらと聞こえていた、飼っていたのか。今まで気づかなかった。


この後パンテが突然消えたのをきっかけに俺たちもログアウトした。





 ついに待ち望んだ大型連休だ、体をゆっくり休ませるとともにゲームに明け暮れてやる!そんな野望を俺は抱いていた。


「あーそこ、攻撃してくにお。マグさんも行っていいよ、パンテは死ね。」


「「了解」」「は?」


こうして俺たちはいつものメンバーで楽しくゲームをしていた。


「なんか新しいゲーム見つけたいね~飽きたわけじゃないけど。」


「そうだね、確かに。」


「海外のホモのゲーム見つけた」


「くにお、なんかない?」


いきなりの質問に驚いたが、実は最近始めた面白いゲームがあった。


「4対4の陣取りゲームなんだけど、意外と面白いよ」


「くにおさんがおすすめするなら面白いかもね」


「男が感じてる…」


「名前が、えっと、Cat of War。猫みたいな戦士とかガンナーとか使って戦うやつ。マグさんも猫好きでしょ?やってみようよ。」


「俺実はもうやってるよ」


「くにおとマグさんやってるなら俺もやる。」


「俺も入れて!やるから!無視しないで!」




 それから俺たちは連休が終わるまで毎日Cat of War、略してCoWに明け暮れた。

途中パンテが謎のオフラインイベントに出席して2日ほど連絡が途絶えたが、かなり俺たちはハマっていった。


今日はジンもいないし、パンテはまたオフ会だとtritterでつぶやいていた。


「今日は2人だね~」


「そうだなぁ、CoWやる?てかやろ。」


マグさんは以前からCoWが上手過ぎた。なぜこんなに上手いのかわからないほどだった。


「マグさん猫飼ってるから猫の扱い上手いんじゃない??猫の扱いはプロだね」


「そんなことないよ、これでも衰えちゃったんだから」

「てかうち、猫飼ってないよ?」


あれは確かに猫の声だったような…。テレビか何かの音かな。


「じゃああれはマグさんの声かな?なんてね」


「なんか聞こえたの?それよりほら、ゲームしよ」



それから1か月後、俺たちがハマっているCoWは日本で大流行し、世界でも話題のゲームとなった。人口はかなり増加しテレビでも猫の特集が多くみられるようになった。

時代は空前の猫ブームとなった。そんなことはほとんど影響せずにいつものメンバーでいつものようにゲームをしていた。


「くにお、最近強いね、マグさんとずっとやってるからかな」


「俺はまだまだだよー、くにおさんのほうがうまいって」


「いや、みんな強いよ、俺なんて奇襲しかできない。ふええ」



 最近の俺はずいぶんと調子が良かった、実装されたランキングでも9位と上位に食い込み、ランキング1位のマグに迫る勢いだった。ジンは32位、パンテは82位に付けていた。


ただ調子がいいのとは裏腹に俺には大きな悩みが出来ていた。以前聞こえた猫の鳴き声のような声が頻繁に聞こえるようになってきた。マグさんはおろかジンやパンテにも聞こえていない。彼らは通話の電子音が聞こえているだけだと言っていたがあれは明らかに…。


 俺は通話に使用しているスマホを修理に出そうとしたが、不調は見られないと突き返された。ヘッドホンも買い替えたがその音が消えることはなかった。


「~ってことなんだけどあと何が原因なのかなジンさん。」


「う~ん、猫のゲームやってるし最近猫ブームだしどこで聞こえてもおかしくないんだけどね」


今日は珍しくジンと2人で話していた。


「今は聞こえないの?」


「うん、今は聞こえない」


「誰かの電波とか通信が悪いのかもね、俺も聞こえたら原因探してみるよ」


「ありがとう」




 ここ最近の日本はおかしくなりつつあった。CoWの爆発的流行で何かと猫グッズ、猫テーマの話や特集だらけだった。そんな中俺はパンテのtritterから彼が拡散していた面白い記事を2つ見かけた。

【猫の無限の知性と引き寄せられる魅力】

どちらもコメディタッチに書かれていて面白く、読んでみた。

猫は人の感情に直接呼びかけ、可愛いや癒されるを超越し、猫が可愛い、猫で癒される。と猫に引き寄せられ、猫もそれを分かっているかのように私たちを惑わす。

猫は常に生活の一部に入り込む、私の‥あなたの習慣に、膝の上に‥猫は入り込む。


【猫の戦闘能力】

猫は非常に貪欲に相手を葬る、俊敏さ狡猾さでは群を抜き、戦いを極めし物は狂ったように獲物を狩る。性格は穏やかだが平衡感覚と狩猟の際の知能は他を遥かに凌ぎ、個人で獲物を狩る姿はまさに●●●、身体能力だけでなく奴らは勘が鋭すぎる。奴らは求愛や苦痛で声を上げるが一番は……。



俺はわけもなく記事をすべて読んだ。この二つの記事の作者は不明だ、この作者は最後にこう書いていた。


《猫の知能や戦闘能力は既に人間-》


ここで文章が途切れていた。そしてこの記事ももう一度見ようとしたが記事は削除されていた。


「パンテ、あれどこで見つけたん?」


「あー、バズってただけ、おもろかったよな」


「あれって何?」


「なんか猫の記事、みたいなやつ?面白かったよ」


「なんて書いてあったの?」


「え?なんか猫は戦「パンテ、マグさんくにお、俺先に落ちるわ」」


「あ、ジンさん落ちるの?じゃあ俺も~、じゃあねマグさんくにおさん」


「あ、みんな落ちるの?くにおさんどうする?」


先ほどから俺の耳を刺激する猫の声はまだ鳴りやまない。


「ねぇ、マグさん一つ聞いていい?」


「ん?どした?」


「誰と話してるの?」


「え?誰とも話してないよ」


「俺、猫のことかなり調べたんだ、この声の原因を調べるために」


「…。」


「この声はオス猫の声、最初に聞こえた声は子猫?いやメス猫のような声だった。


「何が言いたいの?」





「最初のは家族かな」


「ねぇ、くにおさんどうしたの?」





「この声、マグさん自身なんでしょ?」





「オス猫が鳴くタイミングは、求愛、苦痛そして





……獲物を狩るとき」



「速報です!ただいま国会で可決されました!」


「人権評議委員会、動物愛護団体は徹底して賛成との見解です!」


「世界的にも画期的な法案との意見も」


《家庭用飼育動物猫化法案》

このぶっ飛んだ法案がとうとう可決された。飼育する犬が突如人間や他の動物に噛みつくようになり凶暴化したこと、ウサギなどの草食動物が絶滅の危機に瀕していること、世界的に魚は貴重なものとなり食用はおろか飼育する熱帯魚ですら動物愛護の点から批判的になった世の中の流れから、ペットとして人間が飼育しても良い動物は猫のみという法案だった。

 マスコミも世論もなぜかこの法案にはこぞって賛成派として意見していた。当然中には猫のみということに差別的だ、自由の侵害だと騒ぐ輩はいたが品種改良の繰り返しに耐え切れなかった犬や魚が種族として守られるべき、絶滅の品種や総合的に動物を自然に返すという観点からそういう反対意見を押し殺していた。爆発的なブームで数を増やした猫たちがむしろペットとして人も他の動物も助けているんだ。そんな考え方が主流となった。


「マグさんと連絡が取れなくなってもう一年か」


「三人になっちまってからもうそんな経つのか」


 あの日からもう一年が過ぎていた。


「マグさん、あんたは猫なんだろ?」


「…。」


「突拍子もないこと言っているのは分かってるんだ、だから姿を見せてほしい、顔だけでも、一緒に合わないか?」


「もう遅いよくにおさん、もう何もかも。」


「待ってくれマグさん!」



「おーい、くにお!敵来てんぞ。」


「ご、ごめん。ボーっとしてた。」


「へいへーいしっかり~。」


結局あれからマグさんとは連絡がつかなくなり、三人で変わらず遊び続けマグさんの帰りを待っていた。いつもと変わらぬ通話でジンがいきなり切り出した。


「なぁ、猫って変だと思わないか?」


「どうしたの?いきなり」


「猫はさ寿命が尽きると飼い主の前から姿を消す、でも俺たちは道端で猫の死体なんてめったに見ないだろ?しかも世の中は狂ったように猫ブームだよ、死体くらい見てもおかしくなくねぇか?」


「確かに、俺もそんなに猫好きじゃないし、最近の猫猫猫猫の世の中正直しんどいのよねぇ。」


「猫なんて別に可愛くもないしな」


俺はどうしてかわからないが二人の会話に憤りを感じてしまった。二人の会話に入ってしまったら嫌味の一つでも言ってしまいそうで黙っていた。

そんな俺に突然知らないアドレスからメッセージが届いた。


『くにおさんへ、二人で話せないかな?   マグ』


マグさん‼


「すまんジンさんパンテ、通話落ちるわ」


「「…。」」


マグさんには聞きたいことが山ほどある。


「もしもしくにおさん、久しぶり」


「う、うん久しぶり」


「前に俺のこと猫だ!とか言ったよね」


「あれは…。」


「そうだよ、俺は猫。初めて人の言葉を話すことができた猫」


「俺はね、今からちょうど一五〇〇年前に中国で生まれた、人の子としてね、でも捨てられた。全身毛むくじゃらで耳も三角でまるで…猫みたいな。僕は神に願った、生きたい…家族が欲しい友達が欲しいって…。そこで僕は僕の毛を人間の遺伝子に少しずつ組み込んで同じような仲間を増やした。そして人に飼われる生き方を見つけ、自分たち同士で繁殖することを覚え、日本に来た。」


「それが本当だとして何で俺に言うのさ」


「最初に見破ったのはくにおさんだし、くにおさんなら信じられるから」


「信じる?」


「僕たちはヒトと楽しく暮らしたいだけなんだ、家族や友達が欲しいだけ。

 協力してくれないかい?」


「俺は…。」




その時はわけが分からなくてすぐに答えは出なかった。でもマグさんが協力を求めていた理由も…決断を迫った理由もすぐに分かった。



「大変です!国会前で猫化法案に反対する人々がデモを行っていたのですが、賛成派との口論から乱闘に発展し各地でも同じように暴徒化する人々が見受けられます!」


 テレビでは反対派の暴動を取り上げていた、ペットの法案で暴徒と化すなど想定外だろうし、国会にも焦りは見えていた。あの時のマグさんの言葉…。

俺は国会前まで向かった。そして反対派をなだめる警察のメガホンを奪って叫んだ。体が勝手に動くように何もかも自然に動いた。


「お前たちが目指すのはなんだ!求めるのは自由か!平和を目指し猫との共存を目指す世界になんの不満があるんだ!猫だって他の動物を排除しようなんて考えてはいない!猫だって家族が欲しいだけなんだ!俺たちが拒絶してどうする!他の動物だって自然で生きることが幸せに決まっているじゃないか!」


メガホンに乗せて発せられた言葉はその場の人々だけではなくスマホで撮影されSNSで拡散され、テレビの中継にもその様子は載せられた。

家に帰るとジンとパンテからメッセージが届いていた。


「くにお、見たぞ」


「恥ずかしいからやめてくれ」


「ねぇくにおさん、マグさんとなに話してたの?」


「二人ともオンラインになってたし、察しはついた。答えてくれ」


「いや、それは…言えない」


「マグさんと猫にどんな繋がりがあるんだよ!」


強い口調で言われハッとした、彼らは俺とともにずっとマグさんと喋っていたんだ。きっとわかってくれる。


「マグさんは猫なんだ!猫の始祖!猫と人間の共存を目指しているんだ!」


二人はしばらく沈黙し、そしてジンが切り出した。


「くにお、落ち着いて聞いてくれ」



「くにおから猫の声の相談を受けた時、一人で通話の電波を調べてみたんだ。そしたら」


「なんだよ、俺が変だって言いたいのか?」


「洗脳するための微弱な電波が検出された。俺はよくスピーカーで聞いてるし微弱なものは聞かなかったようだし、パンテはたぶん話聞いていないから通用しなかった。だが」


「くにお、お前はマグさんから洗脳されている。お前あんなことする奴じゃないし、猫の話であんなにイライラするやつでもないだろ?」


「俺もおかしいと思ってたんだよね~、だからこの間ジンさんとくにおさんの前でマグさんの話とか猫の悪口をわざと言ってみたの。」


「今の世の中はやっぱりおかしいと思って色々調べた。そして気が付いた。猫の特集や猫の動画、そして猫の鳴き声すべてに同じものが検出された。くにおが見た記事…あれは俺が書いたものだ!途中で何者かに邪魔されたが、気づいてくれ!マグさんも猫もすでに日本はやばいとこまで来てる!帰ってこい!くにお!」


「くにおさん!もう一度いろいろ考えて!」


「俺は…マグさんは…」


考えれば考えるほど何かが引っかかってこんがらがる。

何を言っているのか理解しようとすれば何かが邪魔をする。


「住所教えろくにお、今からそっちに行く!」


「分かった…」




そうマグさんにも伝えておくよ。





 馬鹿野郎、俺はお前のネタも冗談も一番好きだったのによ。あの日から一回も言わなくなりゃ誰でも気づく。すべて調べるのに一年もかかってしまったのはパンテのアホに状況伝えるのにかかった時間がほとんどだ。あのアホオフ会ばっかりでまったく反応しないわやっと伝わったときには


「わろち」


とかぬかしやがる。こいつは本当に‥。



あぁ、あいつら元気かなぁ…俺はもう死ぬのかなぁ…ここはどこだろう。

くにおの家に着くなり毛玉どもに待ち伏せされて捕まっちまった。くにおの奴もうあれほど洗脳されちまってるとは…こいつをくにおに渡さなきゃなんねぇのに…

あれから何日が過ぎたのだろう。


突然扉が開いた。


「ジンさん…」


「くにお!お前。」


「猫は今寝てる。ジンさんごめん、俺も自分で自分を制御できないみたい。だけどジンさんは信じたいって俺の本能が言ってる。」


馬鹿だな、やっぱこいつ


「これ飲め、飲んでもまだ洗脳されてるふりしとけ」


「分かった。じゃあまたね」


これで大丈夫だ、くにおも俺も逃げ切れる。


「ええっここどこ!?なんでこんなに猫ばっかりいるの!?なんで」


…。


「くにお!」


戦うか?逃げるか?

戦うには数が多すぎるし猫から逃げ切れる自信がねぇ


大量の猫が俺とくにおに寄ってきたとき天井から変な粉が降ってきた。


「はいよ~猫ちゃ~ん、知り合いのメンヘラちゃんからもらったちょっとしたお薬にマタタビブレンドしたスペシャル粉末セット~」


天井から穴をあけてパンテがにやにやしながら粉を振りまいている。

その場にいた猫はその粉に群がり、そしてバタバタと倒れていった。


「パンテさんは奇襲がお得意なんです。探したよ二人とも~。」


ちょっとしたお薬とマタタビで満足そうに寝ている猫たちを置いて俺たちは逃げたが。


「ジンさんくにおさん、日本やっばいぜ。くにおさんに感化されちゃった猫派の過激派と猫反対派で大戦争真っただ中。完全に内戦中。」


「俺が始めたなら俺が止められないか?」


「わろち、無理無理、こりゃ宗教戦争まで行っちゃったよ、だって過激派のトップで指揮してるのは…。」


映像を見て驚愕した。猫じゃないか。


「そそ、でね。この猫はヒトの言葉が喋れるらしいのよ」


「まさか!?」


くにおが驚いている理由を映像の続きで理解した。

この声は完全に


マグさんじゃないか。


 マグさんが話せる猫?


くにおはそう説明してくれた。俺たちが認識する猫は全てマグさんとその遺伝子によって作られた仲間とまたその子孫。


「基本的にマグさんとその遺伝子で作られたプロトタイプのような奴らは不老不死、老いるフリはするけど死なずに家からいなくなって子猫の姿に戻る。猫としての姿は変化できる。でも子供たちは寿命で死なない代わりに怪我や病で死ぬ。」


「それじゃどうすればいい?」


「第一世代のプロトタイプもその子孫もマグさんの遺伝子が入っているからマグさんが死ねばたぶん」


「あ~だめだめくにおさ~ん。いまね知り合いにもいっぱい猫ちゃんに洗脳されちゃってる娘がいるけど、みんな猫が生活の一部…むしろ欲求の一つになりつつある。」


「そんなバカなことあるか?」


「食事や睡眠みたいに現物の猫と触れ合わないと死にたくなっちゃうみたい。」


「つまり今マグさんが死ぬと…」


「世の中の洗脳された人たちは欲求に満たされず死んだり暴れたり…。」


そこまで一瞬で世の中を支配したのか?


「でね、反対派もそろそろやばそうなんだよね、ちなみに僕も知り合いのメンヘラちゃんたちに映像とか猫とか見せられすぎちゃってね…。そろそろやばそーなんです。」


俺がくにおに飲ませたのは一次的に猫アレルギーの症状を起こして猫に対して体が拒否反応を起こす薬、これを世界中の人間に飲ませる?どんだけ時間があっても俺たちだけじゃ…。しかもパンテに関しては。


「元々猫アレルギーでやんす」


どうすればいい。


「前にジンさんが書いた記事みたいに僕はネットとか使って反対派と組んで薬を拡散してみる」


でもお前あの手は


「まぁジンさんが邪魔されたみたいに誰かの監視とかは厳しくなってるだろうから。色んな場所のネット猫カフェから送信するし、もうそろそろやばい僕が適任でしょ」


「ジンさんとくにおさんは影響力の強い人とか要人に積極的に薬飲ませて欲求抑えて上から世界を変えて!」


「よし、じゃあ僕らでマグさん止めるよ!」


「おう」


「あぁ」


「いざとなったらこの粉末スペシャル使ってええよ、はい」


「これ何の薬なんだ?睡眠薬だよな?」


「さぁ?」


さぁ?って…。

あいつオフ会でいったい何してんだ。


俺とくにおはとにかく政治家や著名人にひたすらこの薬を手渡したり、時には強引に摂取させた。まだ洗脳されていない数少ない反対派の指導者や有名人にも薬の存在と大量生産をお願いできた。

 パンテの記事やSNSの広告、拡散はされているがほとんどが悪書、イカれた人間。としての評価がほとんどだが、洗脳…という言葉が反対派や世界に知れ渡ったことは非常に大きかった。



 早めにケリをつけなければこっちが不利になるばかりだ。

数日が経過するとテレビではマグが緊急の会見を開いた。


「私たち猫は反対派から酷くぞんざいな扱いを受けた上に一部の過激派には薬物による被害も受けました。私たちは人間の皆さんと家族や友達になりたい、ただそれだけなのに反対派の暴力行為にはもう許せるものはありません。我々も反対派に対しては正当な防衛対処として武力行使も辞さない覚悟です。」


マグの方も俺たちの動きを察知して対策してきやがった。パンテの奴の動きも最近はもうない、捕まっちまってるのかもしれない。

反対派の指導者やリーダー格もほとんどが捕まったり殺されてしまった。薬の流通も反対派の少数だけでは難しくなってきた。


「なぁジン、俺たちも洗脳…使えないかな」


こういう時のくにおは本当に頼りになる。


「よし、最後はそれに賭けるしかないな。作戦はこうしよう」


反対派の現リーダーは実質俺たちだし、世界中の反対派にもこの作戦を伝え、賛同をもらった。あとはこいつ次第か。

テレビ、ネット中継で全世界に同時配信された。

【反対派、降伏声明】


「私は今まで猫化に反対していましたが、これ以上お互いに被害を出さないためにも我々反対派はこれ以上の抵抗をやめ、一切の責任を私、猫又邦夫が負うことをここに宣言いたします。従っては全世界の反対派のメンバーも猫の社会に順応し、速やかに和解したいという意思を宣言いたします。」


ここからくにお自身が偽名で流した声明をマグら猫たちは受け入れた。


しかし、その映像が少しでも取り扱われる旅に猫の欲求は世界でもみるみる減っていった。

マグを叩くなら今しかない。




「くにおさんもジンさんもとうとう観念したのか、あの日々が懐かしいよ」



「まだマグさんにもそんな気持ちあったのか」


「ジンさん!?」


「そろそろマグさんこそ長い人生に飽きてきたでしょ」


「くにおさんまでどうしてここに!?」





~数日前~

「作戦はこうだ、降伏の声明の映像を流す、世界中に見られるようにな。強力なサブリミナルで一気に洗脳を解く、ただし強力な映像の洗脳は数日しか持たない、一瞬で世界中の猫を消し去って残った人々に薬を投与していく」


俺とくにおはマグとの決戦に備えた、そしてようやく居場所を突き止め、映像を公開しここにきてマグと対峙した。


「くにおさん、ジンさん、パンテがどうなったか知ってる?」


「あいつは覚悟の上だった、お前らがやったことや悪事は必ず未来で証明する。」


「マグさん、もう戦うしかないんだよ。俺もジンさんもあんたを殺すためにここにきてる」


「俺を倒せば世界がどうなるか知ってるの?」



「もう世界は目覚めたよ、猫からの洗脳も解けた」


「あの映像に何か仕掛けやがったかクソ!」


「諦めて世界の為に死んでくれ」

「数でも平気でもこっちが勝ってんだよ!なめんな人間が!」



「お前らこそ舐めんな。戦闘の指揮は俺がとる!脳筋は前線に!俺も行く」


「火力は任せろ!奇襲役はいねぇんだ、正面から行くぞ!みんな!」


「「「「「「「おおっ!!!」」」」」」」


二人の後ろから世界中の反対派が出現し、猫たちに数の有利は無くなった。


「覚えてるかな?誰が一番強かったのか」


余裕そうな笑顔で迎え撃つマグ、士気はこちらも最高潮だ。俺たちが世界を救う!

ジンの合図で一気に戦いが始まった。

「行くぞ!みんな!」








「今からちょうど二〇〇年前の二〇二五年、ここで猫対人間の最初で最後の大戦があったんですね、ここ試験に出ますよー」


「せんせー、どうして猫と人間が戦う必要があったんですかー?」

ケラケラと子どもたちが笑う、愚かな物語、今では常識外という小ばかにした笑い

「いつだって戦いはひょんなことから起こるものですよ」


「せんせー、猫様に歯向かったこの馬鹿ってどんな人だったんですかね!」

またケラケラと笑う。

先生と呼ばれる男は静かに笑いながら呟いた。

「そうですねぇ‥‥‥‥‥‥‥きっと…………奇襲には弱いタイプなのでしょうね………‥‥‥…わろち…。」

              END…


ご拝読頂きありがとうございました。これからいろいろなジャンルにも挑戦していきます。


今回はひょんなことから当たり前となったネットでの顔もわからぬ相手への疑問をそのままSFチックに短編として書き叩きました。

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