◇第1話◇ 黒い手
けしてこれはGLじゃありません!!
私はその子と一緒に屋上に向かっていた。
「あの、有馬さん、何の用なの?ってかなんで屋上?」
歩きながら私が質問をすると、
「私のことは『鈴』って呼んで下さい夏美さん♪」
かるく無視された!!
「あっそうだ。夏美さんは部活何に入るんですか?」
突然の問い掛け。
「う〜ん。私は何にも入らないかな。」
まだ入学式が終わったばかりだし、どんな部活があるのか分からないから入る部活は決めてない。っというか、入る気すらない。
「じゃあ中学はなんの部活してたんですか?」
「中学は……剣道、だよ…」
「そうなんですか?じゃあ高校も同じ部活を…
「それより鈴ちゃん、なんで屋上に?」
私は話しを元に戻そうと同じ質問をした。
どうしても…さっきの部活の事を考えたくなかったから。
「だってみんなが集まれる場所、あそこしかなかったから♪」
「え?みんな?」
みんなって誰だ。
「待ってると思いますから早く行きましょう!」
鈴ちゃんはにこやかに笑って私の手を引っ張りる。
「え?」
私は冷や汗が出た。
待てよ。もしかしてリンチ?え?マジ!?リンチ!?入学式からリンチ!?
え!?私なんかした!?髪染めてるわけじゃないし耳に穴あけてるわけじゃないのに何でシメられなくちゃならんの!?
「あ、あの鈴ちゃん…もしかして私の事リンチ…」
「え?ミンチ?何言ってるんですか夏美さん♪」
『ヤだなー』なんて言いながら私の手をぐいぐい引っ張りながら言う鈴ちゃん。
(絶っ対 ミンチにされる!!!!)
サァーと血の気が引いていくのが分かる。
「どうしたんですか?顔、青いですよ?」
心配そうに私の顔を覗き込む。
しめた!と思い、
「う、うん…。ちょっと具合悪いかな?トイレ行ってくるから先に行ってていいよ。」
と言い、教室の方に戻ろうとしたら後ろから腕をガシッと掴まれた。
「大丈夫ですか?心配なので私トイレの前で待ってますね!」
つ、ついてくる気かぁぁぁ!!!
「え?うん、ごめんね」
って何で謝ってるんだ私ぃぃ!さっさと断らないとミンチにされるぞ!?
「大丈夫です♪まだ時間ありますから♪」
ニコっと笑って笑顔を見せる鈴ちゃん。
くっ!この子の笑顔に勝つのは至難の技だ、と思い観念した。
【女子トイレの前】
「じゃここで待ってます。具合悪くなったらいつでも呼んでくださいね?」
「…うん…」
(しょうがないから入るか)
ドアを開けてトイレに入ると5個の個室と鏡があった。
私は鏡の前に立ち、自分の顔や身だしなみを整えていた。
「私…変な、顔してるな…。…あの時と、同じ顔…」
今からミンチにされるんだからそんな事どうでもいいのに。
ミンチにされるのが嫌でこんな顔してるんじゃない。
「…部活のこと…言われたからだ…」
ボソっと誰もいないトイレで、そう、呟いてた。
そして顔を上げてもう一度鏡を見た時だった。
鏡から人の手とは思えないような手が出てきて私の腕を掴む。
抵抗するがぐいぐいとすごい力で引っ張られる。
「っ!もうダメっ!」
私の腕が鏡の中に入る寸前、
「夏美さん!!!」
バンと音を立て凄い勢いで扉を開けた。
そして私の所に駆け寄り、制服の中からクナイ(?)を取り出し鏡に投げつけた。クナイは見事鏡の中の生き物に刺さった。
するとその変な生き物は私から手を離し、素速く鏡の中に戻っていった。
「ぅ…恐かったぁ…」
私は半分半泣き状態でその場所に座った。
トイレだと分かってはいるけど。
「夏美さんっ!どこか痛い所はありませんか!?」
鈴ちゃんが私の顔を見ながら聞いてくる。
「うんっ…大丈夫だよ。それより鈴ちゃん…助けてくれてありがとう!!」
私は感謝の気持ちのあまり鈴ちゃんに抱きついた。
「夏美さん♪」
鈴ちゃんは嬉しそうに笑いながら私に頬を寄せてきた。
(なんか猫みたいだなぁ鈴ちゃんは)
鈴ちゃんの顔みとふと、そう思ってしまった。
「それより…さっきの…」
ついつい鈴ちゃんに気をとられて黒い手の事をすっかり忘れていた。
人とは思えないような冷たい手。なんだろう。やけに爪が長かったような。
「……………。」
私が不安がってるのを気づいたのか鈴ちゃんは『屋上にいきましょう』といってすぐにトイレから出て屋上に向かった。
引っ張られる腕を見るとあの黒い手に掴まれた後できたであろう痣ができていた。
ここまで読んでいただきありがとうございます!
次話からはきちんと男子も登場させますので。
よろしくお願いしますっ。