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転校生♂と根暗♀ 前編

「本日からこのクラスで一緒に勉強させていただく、【四十万謙太しじまけんた】です、よろしくお願いします」


俺は今日、この時間から、この一陣高校2年D組のクラスメイトとなった。


転校生と言うものはそれはもう珍しいもの(らしい)で、俺は転校初日『どこから来たの!?』『四十万君ってかっこいいよね、前の学校でもモテたんじゃない?』『ねぇ、ねぇ、女の子のタイプとか教えて!』など女子からの質問が多目だった。


そして、俺の目に入ったある一人の女の子、その子の名前は【九山京子くざんきょうこ】と言うらしい、その子は俺に目もくれず、ずっと自席で本を読んでいた、とても不思議というか、根暗な子だなぁ、と思っていた。


そして、転校して来てから2ヶ月が経った。


「なぁ、佐久間」


「ん、どうした謙太」


彼の名前は【二芽佐久間にがさくま】、この高校に転校して来てから初めて出来た友達だ。


彼とはひょんな事から話が合い、いつの間にか一日のほとんどを彼と一緒に居る仲にまでなっていた。


「彼女ってさぁ」


「彼女って誰だよ」


「あぁ、九山さん、彼女って、なんでいつも一人で本読んでるんだ?」


「あぁ、アレはなぁ、話すとチョット長いんだけどな、俺は去年もクラス同じだったから知ってるけど、彼女ってかわいいだろ、で、入学当時から色んなやつ等がさ彼女に話しかけるんだけどさ、それがな、誰が話しかけても生返事や無視なんだよ、それで俺は思ったんだよ、たぶん俺らみたいなガキには興味ないんだなぁ~ってさ」


「そう・・・なんだ」


このとき俺は思ったんだ、『これはアレなのだろうか、根暗なのだろうか、コミュ障なのだろうか』と、その日から俺は自分の中で彼女【九山京子】を【根暗女】と呼ぶようにした。


失礼極まりないことである。





「本日からこのクラスで一緒に勉強させていただく、【四十万謙太】です、よろしくお願いします」


今日、この学校、このクラス、一陣高校2年D組に転校生なる者が来た。


始めの頃は少し興味があった、でも、彼【四十万謙太】も他の男性と変わらない。


《恋を求める少女》というのはすこし厨二病臭いだろうか、だが、私という存在は今までの人生で『恋』と言うものをしたことがない、だから私はいつも恋愛小説なるものを読んでいる。


別段男性が嫌い、汚らわしい、などの気持ちはない、いや、すこしはあるのかもしれない、でもたいしてそんなことを思ったことが無いし、思おうとも思わない、しかし、男性というものは間が悪い。


私は先ほども言ったようにいつも本を読んでいる、そして私は一度読むと完全に集中するタイプで授業のチャイム以外ではあまり反応しない、だからだろうか、私はいつの間にか『一人』だった。


自分で言うのもなんだが私は自分の容姿に自信がある!


そう、私はかわいい!!


ごめんなさい、謝りますから胸のことは言わないでください、小さくたっていいじゃないですか。


ゴホンッゴホンッ・・・まぁ、そんな私だが、一人孤立した人間、しかも無愛想、そんな人に今更誰が 話しかけよう等と考えるのか、それこそ私に話しかけた子が孤立してしまうかもしれない、『何故あんな変人に声を掛けた、お前もあいつと一緒じゃないか』と。


さらに、もう高2にもなり、他の子たちはそれなりに『友達』や女の子なんかではよくある『グループ』などが出来る、なので彼【転校生君】(私の中での彼の呼び名)が来たときは正直『期待』した。


何故なら彼は私を知らないからだ、なにも知らないかわいい子が居れば話かけるのが恋愛小説などではよくありがちだ、しかし、転校生君が私に声を掛けてくれる事は一度もなかった。


だが、転校生君が来てから約2ヶ月経ったある日の放課後。



「なぁ、何故九山さんはいつも本を読んでるんだ」



転機が来た。





「なぁ、何故九山さんはいつも本を読んでるんだ」


声を掛けてしまった、これは確実にミスだった、佐久間から聞いてた筈なのに俺は根暗女に『声』をかけてしまった、しかし。


パタンッ


『音』がした、それは誰も聞いたことの無い『音』、本を『閉じる音』。


「本・・・読んでた」


俺は内心ものすごく驚いていた、と思う、正直憶えていないけど、佐久間から聞いた話と違っていた、だから、たぶん、驚いてはいたんだと思う。


「そうなんだ・・・」


会話終了。


どうしよう、根暗女も完全に黙ってるし、俺も何を言っていいのか皆目見当も付かない、こういう場合は本当にどうすればいいんだ、こんな状況は初めてだ、そもそも何故俺は根暗女に話しかけようなんて思ったんだ・・・。





「うわぁ~~~、今日も終了~~~・・・うしっ!」


転校して来てから2ヶ月とちょい、この日俺は佐久間と帰る前にトイレに立ち寄った。


PiPiPi~


「(ん、佐久間からメールか)・・・ん?」


文面はこうだ、


『わりぃ、急用が入ったから先帰るわ』


まぁ、別にいいんですけどね、べ、別に寂しくなんかねーし、などと思いながら返信して、トイレから出る。


「(俺もとっとと帰りますか・・・)」


そんな感じで教室にカバンを取りに行くと、根暗女こと九山京子さんが居た。


何をしているのかとすこし覗く感じで見てみると、案の定読書であった、完全に集中しているのか俺の存在には気が付いていない、俺はそのまま帰ろうと思った、しかし、足が動かない、目が根暗女から離れない、そして、俺は根暗女に『声』を掛けてしまった・・・。



「なぁ、何故九山さんはいつも本を読んでるんだ」







そして、先ほどの沈黙から10分、俺と根暗女の口からは何も発せられない。


また5分が経過したころに根暗女が口を開いた。


「あの・・・」


「な、なんですか」


俺は明らかに動揺していたし、汗が全力疾走した後以上に出ていた、びしょびしょである。


「なんで私なんかに・・・その、話し掛けたりなんかしたんですか・・・」


「それは・・・」


言える筈が無い、『君から、目が離せなかった』なんて。


そして、咄嗟に口から出た言葉が・・・。


「なんでだろう・・・」


「えっ・・・・・・」


根暗女の顔は完全に呆れていた、それもそうだろう、突然声を掛けられ、さらにその理由が本人にもわかっていないのだから、まったくどうしようもない状況だった。


でも、俺達は、


「くっ・・・ははっ、はははははっ!」


「ぷっ・・・あはははははははは!」


自然と笑っていた。





あの日の放課後、『声』を掛けてくれた転校生君には感謝してる、だって、始めて学校で『笑う』ことができたから。


あの放課後の出来事から私と転校生君はよく放課後の教室で世間話など趣味の話しなどをしている、はじめは転校生君も『他の男性と同じ』と思っていた、でも、『他の男性とは違った』のだ、彼、四十万謙太は、私を、私の事を表に出してくれた人なのだ。





あれから月日は経ち、今は夏休み前の学校で授業を受けている。


ミーン ミーン ミーン


「(暑い・・・・・・)」


ミーン ミーン ミーン


「(セミがうるさい・・・・・・)」


俺が転校して来てから四ヶ月が経とうとしていた、あれから根暗女とはよく喋ったりしている、最近では放課後だけではなく普通に皆がいる時でも休み時間などに佐久間も加わって3人で居ることが多くなった、始めは佐久間も根暗女のことをあまりいい感じには思っていなかったが喋っているとわかったのか「意外と普通なんだなぁ、しかも可愛いし!」なんて言って来て、俺は少し呆れてしまったのは内緒だ。


キーン コーン カーン コーン


そんな感じで今日の授業も終わった。





彼、転校生君と出会ってからというもの、総てが、とまでは行かないが中々うまくいっている、今では【二芽佐久間】も私の友達だ。


ある日の放課後、私と転校生君とで古本屋に来ていた。


彼、四十万謙太こと転校生君とは偶然と言うかなんと言うか、帰り道が一緒だったりする、しかしその日は私が読んでいた本が読み終わり、私が転校生君に今日は古本屋に寄るから先に帰ってもいいと言うと転校生君は「俺も付いて行っていいかな?」と言ってきたので2人で行くことになった。


ここは商店街の路地裏にある古本屋、その名も『本の虫:百足ムカデ』である、私はよくここに来る、古本で安いし質は良い、だから私はここが好きだ、雰囲気も良い、いい事尽くめな店だ。


そこで私は『ある物』を見つけた、表紙にも裏表紙にも何も書いていない本、中身を見てみるとどうやら日記だった、日付は書いていなかった。



『私は彼は好き

 でも彼は私なんて知らない

 それでも私は彼が好き

 でも彼は・・・私を知ることはない』



一番初めのページ、たったの四行、なんだか切ない、そんな気持ちになった。


私は日記を元あった本棚に戻そうとした、しかし、戻そうとした手が不意に止まった、何故かこの日記を手放すのが嫌になった。


そして私はこの店の店主のおじさんに日記の事について聞いてみることにした。


「あの、おじさんこれ何ですか?」


するとおじさんは少し、ほんの少しだけど、驚いたような顔をしていた。


「とうとう京子ちゃんもソレを見つけてしまったか・・・」


そういうおじさんは「やれやれ・・・」と呆れてる感じだったけど少し笑っていた。


「京子ちゃん」


「あっ、はい・・・!?」


「その日記、上げるよ」


「え、でも・・・」


「いいのいいの、持ってっちゃって、どうせ『戻ってくるから』」


戻ってくるとは一体どう言うことだろうか、私がここにまた返しに来る、それとも落としたときに誰かがここへ持って来る、それとも猫や犬が持って来るとか・・・それはないか。


などと考えていると、おじさんが口を開いた。


「その日記ね、おじさんの好きだった人の日記なんだ・・・」


そんなことを言うおじさんの顔は、何処か懐かしむような顔をし、そして、悲しそうな顔をしていた。


「すこし、昔話をしてあげるよ・・・」


おじさんが言う。


―― 昔、この町には、少し不良な男の子がいた。


―― 昔、この町には、だいぶ内気な女の子がいた。


―― 女の子は、男の子が好きだ。


―― しかし、女の子には『勇気』がなかった、もし好きだと言って断られでもしたら、そう考えるだけで生きた心地がしなかった。


―― 男の子は、一人だった、いつも一人、友達といえる人も居なければ、家へ帰っても一人、両親は居る。


―― しかし会話がない、鉢合わせない、両親は共働きだった、金銭面で苦労してるわけではなかった、むしろ逆である、仕事が忙しいのである。


―― そんなある日、女の子は放課後に学校の屋上へと来ていた。


―― そんなある日、男の子は放課後に学校の屋上へと来ていた。


―― 普通に考えて出会うはずのない二人が出会った。


―― 奇跡に近かった、どうして出会ったかなど二人にはわからない。


―― これはもしかすると奇跡なのかもしれない。


―― 女の子は男の子が居る事に気が付いていない。


―― 女の子は知らない、だから呟く・・・「夕日が綺麗」・・・と。


―― そして、男の子はそれに答える・・・「そうだな」・・・と。


―― 女の子は吃驚しただろう。


―― 誰も居ないと思っていたのだ。


―― いる筈がないと。


―― しかし居た。


―― 女の子は吃驚して動けない。


―― 男の子も少し気まずそうだ。


―― その日は男の子が逃げるように屋上を後にした。


―― 次の日、女の子が屋上で食事をしていたのを男の子が発見し、声を掛けた。


―― 「なんでこんな所で飯食ってんだ」と


―― すると女の子は「・・・・・・」何も喋らない。


―― 男の子は、まぁいいか、と言いながら女の子の隣でパンをかじる。


―― 女の子はと言うと無表情、でも内心は違う、緊張、困惑、愛。


―― 好きな男の子が今隣で昼食を取っている。


―― それだけで女の子は満足だった。


―― 月日は流れる。


―― 知り合ってしまえば人と人だ、仲良くなるのに時間は掛からない。


―― そして、男女である。


―― 女の子は元より男の子が好きだった。


―― 男の子は女の子が好きになった。


―― 何をするでもなく。


―― だた一緒にいるだけで。


―― だた隣にいるだけで。


―― だた同じ時間を過ごすだけで。


―― 二人は満足だった。


―― そして季節はめぐり、男の子と女の子は社会人となった。


―― 結婚を約束していたわけではない。


―― では、付き合っていたのかと聞かれるとそうでもない。


―― ただ同じ時間を過ごしただけ。


―― それだけだった。


―― 男の子は父親の会社を継いだ。


―― 少し不良ではあったが学はあった。


―― そして、大手企業の社長になった今なら言える、そう決意し。


―― 女の子に会いに行った。


―― もう何年たってるかわからない、女の子はもう憶えていないかもしれない。


―― でも、もし覚えていてくれたら。


―― そう想い、そう願い、男の子は女の子の家へと足を運ぶ。


―― しかし、運命とは残酷であった。


―― もう、女の子はこの世には居なかった。


―― 不慮の事故。


―― 男の子は絶望した、一度は自殺も考えた、しかし、それを許さなかった人が居た。


―― 女の子の両親だった。


―― 男の子は女の子の両親からある物を渡されていた。


―― それが、女の子の日記である。


―― 会社を辞め、総てを捨てて、男の子は自殺しようとした。


―― しかし、ふと思い出した。


―― 女の子の日記を。


―― 男の子はその日記を読んだ。


―― そして涙した。


―― 日記の最後のページにはこう書かれていた。


―― 『いつまでもあなたの事を愛しています』


―― そして、男の子はひっそりと店を構えて生活を始めたのだった。








「はい、おしまい」


そう言うとおじさんは、どこからか入ってきた猫を抱えて撫で始める。


「ん?もう買ったの?」


手元にある日記を眺めていると転校生君が話しかけてくる。


「あ・・・うん」


「そっか」


「うん、じゃあもう行こっか」


そう言って私はおじさんに挨拶して帰り道を転校生君と歩く。




古本屋からの帰り道、根暗女がなんだか元気が無いように見える。


なにかあったのだろうか。


少し心配だった。


心配?


何故心配なのだろうか。


考えても分からないので聞いてみることにした。


「大丈夫、顔色悪いよ?」


そういうと根暗女はまるで空元気のようにこう言う。


「大丈夫だよ、平気」


そう言う根暗女の笑顔は少し見ていて胸が締め付けられる。


根暗女を家まで送る。


「それじゃあ、また学校で」


「うん、それじゃあね」


そう言い、自分の家へと帰る。


帰る途中でもう一度考えた。


どうして根暗女のことが心配になったのか、それはもちろん人間であれば誰かが怪我や顔色が悪いと心配するものだけど、なんだか違う、そう感じた。


次の日の学校。


一日たってもわからないので少し放置気味だが常に気にはなっている。


「おはよう」


すると根暗女の声がしたので振り向く。


「おはよう、昨日は大丈夫だった?」


根暗女にそう返す。


「大丈夫だよ、心配してくれありがとう」


根暗女の笑顔が返ってきた、昨日とは違う満面の笑顔。


何時の間にか考え事を忘れて、根暗女の笑顔の事ばかり頭に浮かんでいた。


根暗女や佐久間と過ごす日常。


三人だけだけど、とても楽しい日常だ。


そして、学校は夏休みに入った。

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