10年の衝撃
結婚は制度だ。
人の心は、制度には従えない。
不況のあおりもあって、フリーライターの仕事では自由になるお金が心もとなく、最近、パートに出始めた。誰でもできるデスクワークだから、時給も安い。35歳を過ぎて、本業がままならない身としては贅沢は言えない。結婚して10年を過ぎた、夫の稼ぎがあるから少しは余裕をもって暮らしていける。
近々、結婚するという職場の20代女子がランチしながら、彼があぁで、こうで、でもみんなが「今が一番いい時期よ」って言うんです、どうですか?やっぱりそういうもんですか?と幸せそうに話してくるので、どうだろうと考えてみた。
そう言われてみて、私も彼女みたいな時期があったことに気が付いて、驚愕した。まるで共感できない今の自分に驚き、そして、あの頃、同じように「そういうもんよ」と言ったオバ様たちと、全く同じ言葉と気持ちを持っている自分に、愕然としてしまった。
いったい私は、何がどうしてしまったのか。そう、私たち夫婦は。
それとも、最初から、こうだっただけなのだろうか。恋は錯覚って、本当なのかもしれない。
錯覚して結婚して、時がたって正気に戻るのかもしれない。そうして契約を終了する人がいれば、続ける人もいる。最高の関係から、最低の関係まで、人それぞれに。
最高と最低の間で、今、私たちは、どのあたりにいるんだろうと、ぼんやり考えた。