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7月13日 午前11時~

 7月に入ったというだけで、急に夏になった気がする。あ、「急」と「夏」って字の形似てるよね。あぁ、梅雨がずっと続けば雨音が気を紛らわしてくれるのに。

 まぁ7月と言えば夏休みなわけだが、毎年僕にとっては暇を持て余す人生の無駄使いの期間でしかない。しかし、今年は何の間違いか田中によって山間部に連行されることになった。キャンプ的なことするんだとか。どうせなら一人でキャンプしたい。僕は寝てたい。ずっと寝てたい。


 そして現在僕はホームセンターにいる。ホームセンターは僕のお気に入りの場所だ。特別何かを買うわけではないけれど、生活雑貨を眺めているとそれだけで自分の生活が向上したような気がする。これを使うとあぁなって、こんな風に便利になって…と、わくわくしてくるのだ。それに、まぁお店にとってはいいことではないかもしれないが、人が少ないのもいい。たまにはヘッドホンを外してみたりもする。

「あ、浅井君!」

 いや、やっぱりヘッドホンはつけておこう。

「ちょっと…ヘッドホンくらい外してよー。」

 また田中だ、と言いたいところだが、残念ながら田中とは聞き間違えようのない可愛い声である。そこに表れたのはすらっと背の高い女子高生。なんでホームセンターにクラスの女子がいるんだよ…!

「ん、あぁ…えっと、中村さん…だっけ?」

「ちょっとー4月にちゃんと自己紹介したじゃん!」

 そう言って中村は頬を膨らませた。

 知っているよ中村さん。「特技はザ・ワールドです!」なんて言って本当に時を止めたのは君だろ。だけど女の子と話すのなんて慣れていないシャイボーイなんだよ僕は…。

中村は顔もスタイルも良くて男子からの評判は割と良いが、こんなに近くで顔を見たのは初めてかもしれない。男にはない良い匂いがしてくる…。ファッションに疎いので服装の説明は割愛する。とにかく、センス良く着こなしているのは確かだ。ただ、スカート短くない?脚出し過ぎじゃない?

「人の名前覚えるの苦手でさ…多分クラスの半分くらいまだ顔と名前一致してない。」

「あ、そうなんだ。ねぇ8月さ、田中君と一緒に来るんでしょ?」

 さっきまでの憤慨はどこへやら、話を変えられる。

 自分の名前覚えられてないこととかどうでもいいのかお前は。

「8月…?山に行くやつ?そうだけど、なんで知ってんの?」

「え?だって私と優希が一緒に行くんだよ?」

 僕はもともと表情が豊かではない。田中曰く、ケーシィが笑えば桶屋が儲かる(僕には意味がわからないがきっといいことを言ってる)ほどらしいのだが、それでも僕の顔が凍りついたのが中村にわかったようだ。

「あれ、知らなかった?田中君、『呼ぶならケーシィだな!揺るぎなくケーシィだな!』なーんて言ってたよ?ちなみに優希は田中君のリクエストだから怨むなら田中君をね。」

 田中の口調を真似て説明してくれた。全然似てねぇよ。

 これは予想外だ。女の子が来るって…しかも2人って…おかしくない?そういうのってリア充のイベントかギャルゲーのイベントじゃない?あ、これゲームの中?

「あぁー…そうなんだ…」

 おかしいな、女の子の好感度メーターはどこだ?

「浅井君、何を探しているか全く分からないけど、なんでホームセンターにいるの?」

 漫画でしか見たことがないほど見事に首をかしげる中村。

 それをお前が訊くか。訊きたいのはこっちだ。なぜ、女子高生がホームセンターで掃除機を眺めていた僕の前に表れたのか。今の僕にとっては白いカラスがいるかいないか並に由々しき問題だ。

「あ、いや、家近いから暇潰しに…」

「そうなんだ!私は山行く準備しに来てみました!」

 にこやかに宣言された。

 僕のこととかどうでもいいのかお前は。人の話を聞け。

「…そんなに準備することなくない?具体的に何するのか知らないけど…」

「浅井君キャンプしたことないの?泊まりなんだよ。と・ま・り。」

 盲点。キャンプなんだから泊まりだよねーそうだよねぇー。

 女の子と泊まりじゃん!ヤバいじゃん!まじこれエロゲーのイベントじゃね?エロゲーしたことないけど。

 それにしても、最近の女子高生のガードってこんなもんなのか…ショットガンにゴミ箱の蓋で立ち向かうようなものじゃないか?

「…いいのかな?仮にも僕たち男だけれど…」

「全然!浅井君顔はいいけど、見るからに奥手っぽいし!BLっぽいし!」

「僕は女の子が好きだよ中村ぁ!」

 何か誤解を生みそうなツッコミじゃないかこれ。

 まぁある意味信頼されているようだ。男子高校生の性欲をなめすぎな感も否めない。事実僕は君の脚を22回くらいチラ見してます。

「あ、浅井君何気に私を呼び捨てにしたでしょ?」

「あぁ…ごめん、田中と話してるペースでつい…。」

「いやいいんだけど~じゃあ私浅井君に質問あるから答えてよ。」

 かなり近くまで僕に迫ってくる中村。何か底知れぬ恐怖を感じるぞ。女の子恐い。

「…なに?」

「なんで浅井君ってケーシィなの?」

 すっげーどうでもいい。僕の恐怖返せ。

 ケーシィという名前で僕を呼び、中村と繋がっている男。まぎれもなく田中の影響である。田中め…今度購買で焼きそばパンおごってもらうからな…。

「さぁ…?」

「ねぇ浅井君はさ、やっぱりサイコキネシス使えるの?」

 使えるわけないだろ。

 やはりというべきか、中村はエドガー・ケイシーを知らなかったようだ。

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