「騙されたまんまにさせて」
ホテルの一室だけでいいのに、ラブホの店前は間接照明みたいにライトアップされている。どエロい雰囲気に流されて、抱かれた女の子は多分数えきれない。一室の雰囲気から流れ出た照明に誘われていく姿は、光に集まる虫みたいだった。
歌舞伎町のうるささから逃れて、少し休憩したかったから、逆ナンして男を捕まえた。あと一時間後に友達と飲む予定だったけど、暇だったし、1セックスはいけるなと思ったからだった。
このラブホの照明は調光が極端で、めっちゃ明るいか、めっちゃ暗い。私は男にまたがって、騎乗位していた。男は気持ちよさそうにしている。さっきまで私がシャワーを浴びないことにうだうだ言っていたのに。
「シャワーは?」
「これから遊ぶから浴びない」
「ええ?」
「いいでしょ。それともメイクどろどろの女抱きたい?」
男は渋々うなづいていたけど、そんなのお構いなしに気持ちよくなっている。シャワーも浴びない女に抱かれて悔しくないの? さっきまで見下した顔してたのにさ。プライドがないのか、性欲に抗えないのか、それとも快楽が暴力なのか分からない。
雰囲気に流されて、というか私は雰囲気に慣れ親しんで、いっそ照明に誘われる虫でもいいと思っていた。虫らしく本能のまんま、剥き出しの性欲で、前後に体を揺らした。私は虫だったし、男はもはやディルドだった。
『早めに着きそう』
友達からのLINEが届いた。私は前後運動の方が気持ちよかったけれど、男は上下運動の方が気持ちいいらしい。私は腰を上下に動かして、程なくして男がイった。友達を待たせるのは悪かった。
「また会お。めっちゃ気持ちよかった」
「私はそうでもない」
男からインスタの連絡先を見せられ、なんかキモかったのでラブホを出た。お金は割り勘らしく、「いやでもさ、シャワー浴びてない女に出せないよ」と言った男の顔は、性器よりも下品だった。私をセフレ化失敗したのが何となく悔しいから、ってのが顔に出てんだよ。
男と別れて友達に会うと、ストゼロにストローをぶち込んでいた。いつもだったらバーで一杯飲んで、ホストの客引き断りながら闊歩するのに。もう今からホストかクラブにでも行きそうだった。
「彼氏と別れた」
友達はそう言って泣いていた。歌舞伎町の夜は長い。それなのに時刻は日を跨ぎそうだった。段々と、嘔吐の匂い、ホストに捨てられた女の声、酔い潰されたキャバ嬢のタクシー、それらが流れてくる。
「私が遊びだったんだって。ホンカノは元々いたんだって」
「そうかあ」
友人はホストと付き合ってるみたいだった。きっと色恋営業に騙されていた。でもしょうがないとも思った。そういうリスク込みで付き合ったんでしょって。
「あんなに、あんなにお金も、体も」
ホスクラにハマる女は、どうして自分の体がそんなに大事なんだろう。ヤリチンがいるということは、セックスは誰とだっていい。ヤリマンの方が少ないと思うけど、どうしてみんな、カジュアルにセックスしないのだろう?
「夢見せてくれるなら、最後まで見せてほしかったの。騙してるなら、騙されたまんまにさせてほしかったの」
私は友人の泣いてる声を聞きながら、多分一週間後とかには新しい担当を作るだろうと思った。今、この子はめいいっぱい自分の悲劇に酔ってるだけ。
「まあ、辛いよね。ぱーっと飲もうよ」
この子は品がない。自分の悲劇に酔っ払って、今も自分を騙してるでしょ。品がない。私も、品がない。こんなヤリマンに品なんてない。こんな街も品なんてない。でも私もこの子も、品のない泥水でしか生きれない外来種なんだと思う。こんなの日本人じゃないって罵られたことがあるんだから。だからここでしか生きれないし、ここ以外だと死ぬんだろうなあ。




