表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/2

トリックオアトリート①

ユガミカタルシス 外伝①

   黒い魔女が微笑う頃


それは、だいじな儀式だった。


「trick or トリート!!」


思わせぶりにわらいながら、

黒いフードに、魔法使いの衣装。

猫耳のカチューシャをお目かして

バケモノのように、化けるのだ。


ーーいつも歌っている

かみさまの讃美歌はどこかに忘れて。

あくまのなまえをくちづさむ。


たわむれのように、きまぐれに


      愛想のない神を


       ◼️うように


  ーーただあざけるように微笑う。



序章


化け猫リーチは激アツだった。

期待値、☆☆☆


「よっしゃきた!!」


すーぱー☆魔女っ娘カットイン、

「トリック☆オアトリート♪」


とにかく激アツ。


「ーーよっしゃ!!勝った!!」


黒猫と魔法使いのsábado

大当たり確率341/001


きまぐれに学校の授業を抜け出して

朝イチに必死に並んで手に入れた新台。

出てくれなきゃ困る。そしてちゃんと出た。

ははっ!!やったね!!


「ーーははっ!!まるでATMみたいに!!金が湯水のように無限に出てくるぜッ!!」


投入した金額は3万。

ここから連チャンすれば、今日だけで10万は稼げる。実に良い、下手にハマったりして運の女神に見放されたときは20万ぶち込んでも当たんないのだからーーッ!!


愛想のない、キミは化け猫♪

ガラクタみたいに、灰色に染まって〜♪


「……激アツすぎるだろ…!!」


この歌詞はプレミアム演出!!

10連チャン確定の、確変演出だっ!!

おもわず、顔がにやけて、ただ資本主義をあざけるように顔が確変演出をながめる。


キャンディとお菓子をばらまく仕草の魔女たちが、愛想良くウィンクをしながらサバトの舞いを踊っている。


チャンスゾーン!!3810タイム突入!!


「これは都市伝説並みのスイートな…」


お菓子をくれなくなった神様に、

魔女たちがイタズラをする

すーぱー☆ドキドキタイム。


眠った神様に見つからないように、無事にホイップクリーム付きのプリンを48個盗み出せたらーーッ!!


無条件で大当たりになる

激甘スイーツ・パラダイス。

出玉は脅威の3810×48発、

たとえ1ぱちでも18万円以上になる

これだから4ぱちはやめられない!!

これを引けるなら100万ぶち込んだって構わない!!とにかく令和史上の歴史的ぶっこわれ台であることは疑いようもない破格スペックである。


ーーーぷつん、

うん?フリーズ?


「あーー停電です」


ーーあ、停電でしたか。

……そんなのありっすか。ブラックデビルのジョークだとしてもここまでひどくはない。


「おい頼むぜ店長!!」

「あーたすかったー」


ーーあぶないあぶないと、

パチンコ屋の店長がほっと胸を撫で下ろした。あなたがそれを言ってちゃ客に勝たせたくないって言ってるようなものじゃないか!!


「ユガミ警報ですよ。意外にユガミってお客様が大当たりの時はたすかってるんです。なんたってお店のブレーカーごと落とせますから」


「それって違法じゃないんですか?」

「もしも遠隔でユガミを操れたら違法ですね。さすがに災害まではコントロール出来ませんよ。でも出玉はちゃんとコントロールしてます」


少し安堵したような表情で

パチンコ屋の店長が冷や汗ぎみにハンカチを拭う。


この資本主義社会がっ!!

「おいおい、たのむぜ店長、いつも稼がせてもらって助かってますけど。ちゃんと黒字ですよね?電気代払ってますよね?いくら高還元の店だからって電気代くらい払ってなきゃ遊べないじゃないですかベイビーぷりーず」


「だからユガミですってば!!」

「ユガミ? 違うぜったいウソだね!!遠隔操作だろ!!停電なんて起こすなよ!!俺の貴重な大当たりが!!」


「お客様方、大変申し訳ありません。ユガミ警報が出たので、本日の営業は終了となります!!」


       ユガミ警報

   ちょっとなんかあやしいっすー

   えーと震度1.カテゴリーは数秘術?

  人造ユガミ? ふーん、へんなのー


「ふぁっく!!それでもパチンコ屋かっ!!」


食事休憩中のカードをパチンコ台に置き、

俺は舌打ちをしながらパチンコ屋を出た。

ユガミ警報が出たのなら仕方がない。


「 Oh my fucking god! 」


知らない誰かが、知らない神を呪った。


「ふぁっきんsoベイベーあいはぶTHEサムライソウル。アイアムジャパニーズサムライ、オウメーン、4分でぶっ潰してやるぞ!!覚悟しろよーーTHE・YUGAMI!!」


本編(2/1)


サンドイッチを投げ捨てて


ウィッチ・シスターズをのろうのだ。


ヤギの首のかぶりもの。


市松人形みたいに日本風の


かみさまに見捨てられないように

魔女たち


かみさまにみつかった

魔女たち


かえれなくった魔女たち

うしろのしょうめんには市松人形


にせものだったはずの魔女たちの中から

ほんとうの神が、ほほえんだ。


(3/1)


薄く目を開ける。

目の前にはパチスロだけの世界であるはずの


黒猫と魔法使いのsábadoの世界。


どうやら大きな規模の

ーー異界に来てしまったらしい。


異界のなかは、人によってちがう。

もっとも好きなもの、

ーーあるいは、

もっとも嫌いなもの


それを異界はユガミの集合体として

異世界として再現する。



     黒ミサZONE(1日目)

      大当たり期待値☆

 ーーだめだ。こんなの当たる気がしない。


俺は軽く舌打ちする。

これがユメだったらよかったのにと、


俺は異界のなかにあった。

別店舗のパチンコ屋にいた。

(あんな店2度と行ってやらねーから)



        ユガミ警報

   当店は臨場感を最重要にお客様に

まるで本物のような遊戯をお楽しみいただきます。

ーーなお、当店で発生した事件・事故に於かれましては、

お客様の責任ですのでクレームのほうはご遠慮ください。


うすぼんやりとした意識の中で、

俺は異世界・

あるいは異界のマイナーなルールを聴かされている。


いやー久しぶりの異界探索か。

なんかたのしみ。新台入れ替えのようなワクワク。死んだ遺体はどこにいくのだろう。


走馬灯のような疾走感。

異界の内側に入る時はいつだってそうだ。

俺は異界の内側にある、さらに奥の異世界へと突入したのだ。


異界のなかにある異世界。

その最深部に近い、

現実と直結した……


「よし無事に転生できたみたいだな」


特に体に変化なし。

記憶も良好。


どうやら

ここは現実と少しだけ離れた場所らしい。

すぐ近くにあって、とても遠い場所。

それが異界あるいは異世界の定義である。


「…特に体には変化はない。スライムにもなってない。よし、わりと良い異世界みたいだ」


いつのまにか、俺は見慣れたパチンコの画面の内側のキャラクターになっているような状態とでも言えば良いのだろうか。


それはともかく。

マジで異世界転生ものは最高である。


俺の姿が見えないのか。

魔女たちが俺の横を素通りする。

座標…あるいはレイヤーがちがうのか。

あるいは俺が透明人間になっているのか。

どちらにせよ女湯は覗き放題ということになる。


「うん?にんげんのにおい?サンドイッチからしてるのかな」


2人の魔女が

サンドイッチを見つめている。

お城の客間、ーーといっても、1つの部屋だけで軽く体育館一個分の広さがある。


まるでハリーポッターのような世界。

ほんとうに俺のことが見えてないらしい。


暖かな朝の日差しが、キリスト教のステンドグラスの窓に入り込んで、色とりどりの光彩をウッド調の木製の床を飾っている。

ぺしゃんこになったサンドイッチ

地面に落ちたソレを見つめながら嬉しそうにトマトとレタスの魔女がハイタッチする。


「やった!!」「やったね!!」

「このタバコのにおいはにんげんさんだ!!」

にんげんさんが来たってことは助けが来たってことだよね。と、わけのわからないことをほざいている。どうやらまじで俺のことは見えてないらしい。


ちなみにハイタッチのエフェクトは

3種類ある。


まぁーー。

そんなことはどうでもよいのだが。

ーーどっちかと言えば、

人生に一度は女湯を覗いてみたい。

そっちの方に全神経ののエネルギーは集中している。


レタスのような緑色の服の魔女と、

トマトのような赤色の服の魔女だった。


「おぉ。マジで本物のウィッチ・シスターズじゃん」


そう俺は感心する。

この異界の主とは、

小1時間ほど趣味の話がはかどりそうだ。

かなり衣装がすばらしいのだ。


「これで儀式が出来るね!!」

「ちょっと待っててね人間さん!!」


「かーごめーかごめー」


2人の魔女が、俺が立っている座標を中心に、ぐるぐると楽しそうに、浮かび上がった魔法陣の白い光の外側を練り歩く。


それは降霊術の一種。

大当たり期待値10%のしょぼい演出

まーべつに、旅行気分で来てるから、

というか、当たんないでほしい。

ここで当たると、ドキドキ覗き見イベントが不発に終わってしまう。だがしかしー!!


「かーごのなーかのとーりはー」


ーー俺の心の原風景のなかで

トリックオアトリート☆リーチ!!の

音が鳴り響く。

それは抵抗することのできない、

パチンカスの本能である。


「いーつーいーつーでーあーうー」


俺は存在しないはずの

パチンコのレバーを熱く握りしめる!!


「当たれぇええええええええ!!!!!」

ーーと言っても、

これはパチンコではないのだから。


「夜明けの晩にー」


実際には何が起こるかは分からない。

なぜならここは異界の中の異世界なのだ。


「つーるとかーめがすーべーたー」


キュインキュインキュイーン!!

俺のパチンコに対する情熱のおかげか。

軽快な音楽が、俺のカスみたいな頭の中で鳴り響くと、そこで、魔女は俺をみつけた。

どうやら儀式とやらは成功だったらしい。


後ろの正面にはだれもいない。

それに、出玉もない。利益もない。

ただそこには魔女がいるだけ。

ーーだがしかし、

可愛ければそれでいいじゃないか。


「あ、人間だ!!男の人間だ!!やった!!」

「男で悪かったか?」

「そ、そんなことないよ!!魔女の宴へようこそ!!トリックオアトリート!!」

「なぁ、今日は何日目だ?」

「え?そんな急にノベナのこと?ノベナのことですか?いま、始まったところですよ」


ノベナと黒ミサは反対の意味だ。

ノベナゾーンと、ゲヘナゾーンと、

黒ミサゾーンの3種類の通常ステージがあり、


ノベナゾーンはこの異世界の朝から昼、

ゲヘナゾーンはこの異世界の夕方

黒ミサゾーンはチャンスタイムである。


まぁ、パチンコで得た知識だから

そこまでの確信はないが、

1日目と9日目では大当たりの確率に大きな差が出るから、やはりそこは絶対に把握しなければならないーーー!!


「これが9日目なら救済確定なんだよ!!」

俺はトマトの魔女に恥ずかしげもなく

パチンコ知識をひけらかす!!


やはりトマトの魔女は警戒心が強いらしい。

ぎこちなくトマトの魔女が、

俺を警戒した気がした。


「そりゃそうですけど……」

「でも転生者ですよ? 奇跡じゃないですか」

「でもタバコくさい」

「そこは関係あるのかなぁ」


トマトの魔女と、レタスの魔女が怪訝そうな顔をして、なぜそんなことを、(俺も黒猫と魔女のsábadoという名のパチンコを打たない限り、おそらく一生知らなかった単語かもなと思うくらいにはーーノベナなんていうキリスト用語は)

なぜ、部外者のお前が知ってるんだと言わんばかりに距離を取られるのだ。



気のせいかもしれないが、

やはり気のせいなのだろう。

そうに違いない。

思い出したように、トマトの魔女は俺の身体に抱きついた。


これがもしも北斗の拳のような、核の炎で、世紀末な世界観だったら

俺は今まさに秘孔を貫かれてあべししている。


そういう意味でも

幸運であるのは間違いない。


たとえ、滅んだとしても

文明レベルのスケール感ではなく、

あくまで一つの修道院が闇落ちする程度だ。


「人間さんがこの世界に来るなんてひさしぶりだよ!!奇跡だよ!!これならーー!!これならやっと帰れるかも!!」


レタスの魔女が不思議そうな顔で


「ノベナってなんですかぁ?」と眠そうな顔で聞いた。


ノベナ(: Novena)とは、17世紀にキリスト教で始まった信心業で

神が恵みを与えてくれるように願うこと、

9日間に渡り、連続して行うこと、以上の特徴を持った祈祷の信心業をいう。これは個人的な祈祷や、公に集団での祈祷がある。


自分でも説明してて

眠たくなるような、俺の説明に、対して

ウィッチシスターズの魔女2人は

目を宝石のようにキラキラと輝かせながら

感心してうんうん!!と相槌を打った。


やっぱりこのパチンコを作った

開発陣営は良い意味で頭がすごいと

俺はあらためて感心する。

どいつもこいつも美少女すぎるのだ。


「ーー詳しいんだね!!人間さん!!まだ1日目だーよ!!正確にはウィッチ・シスターズ2。一周目は全滅だったからさ」


俺の問いに、どこかぎこちなく。

トマトの魔女が、自嘲気味に、恥ずかしさをごまかすように笑う。


レタスの魔女がロールキャベツのように

俺の腕に抱きついた。

もちろん演出なんかじゃない。

レタスの魔女のキャベツみたいに大きな胸の感触がダイレクトにアタックして伝わってくるのだ。ナイスだぞ異界、たしかに、これは帰りたくもなくなるわ。


ーーいやぁ異世界転生も悪くない。

やりたい放題じゃないか。


「助けてください!!私たち、本当は魔女なんてやりたくないんです!!生きて帰れたらメイドでも妹でも何でもしますから!!」


「ーーいいのか?なんでも、だぞ?」

     「「もちろんです」」


ーーちょっと感動した。

ユガミも時には悪くない。

推し台の異世界に飛べるならなんだっていいさ。なんだったら定住しても良いくらいには


「マジで本物じゃん!!!!」

爆裂ぎみにテンションがあがる。

ファンだからだ。


まるでハリー・ポッターの世界で

コスプレをした魔女たちが


「これはわたしのからだ」


「これはわたしのち」


48人の魔女っ娘による9日間におよぶ、

生き残りを賭けたバトルサバイバル。それが黒猫と魔法使いのsábadoのものがたり。


「ようこそ魔女の宴へ」

顔の見えない羊のかぶりものをした魔女が

俺の手を掴んで、異界の中へと誘う。


ハリー・ポッターのような世界観。


こんな演出は見たことがない。

やはりこれは異界なのだろう。

そして俺にとっては間違いなく現実だ。

だが現実だろうが異界だろうが

ハリ・ポッターのような世界観で

魔女っ娘たちとイチャコラできるなら

もうどっちでもいいし

なんだったら異界に定住しても良い気がする。


もうどうだっていい。

現実のことなんてどうでもいいんだ。


(ーーずいぶんとリアルだな。まるで現実世界みたいだ)


おそらく、

異界と現実の差異が少ないのだろう。

じゃないと、異界に入った時点で死んでいる。


       異界震度1

黒猫と魔法使いのsábado

1日目


       スタート!!



ハリーポッターみたいな

広々とした壮大なお城だったが、

レタスの魔女とトマトの魔女の案内のおかげで、思ったよりもすんなりと、自分の寝室を確保することが出来たので


とりあえず2人にはメイド服を着てもらって、猫耳カチューシャを付けさせてみた。


「にゃあ……(レタスの魔女の鳴き声)」

「ご、ご主人さま。今日はお風呂にしますか?それともレタスにしますか?トマトにしますか?」

「探検に行くぞ!!ハロウィン、ーーもといは、ノベナは9日間しかないんだ!!24時間フル稼働態勢だ!!ーー今夜はぜったい寝かさないからな!!」

「頼もしいです!!ご主人さま!!」

「行きましょう!!行きましょう!!この異界をどうか攻略してくださいにゃん☆」


ーーこれではまるで

ドラゴンクエストの初期の城だ。


俺はドキドキとワクワクを抑えきれない衝動にまかせて、思いっきり寝室の出口のドアを開けてみた。


「ご主人さま!!ーー敵です!!敵襲です!!くらぇ雑魚スライムども!!プリンにしてやる!!マグマアクア!!」


「ぷりぷりぃー!!(スライムが音もなく蒸発する音)」


「ちぇきぷりぃいいいいいいい!!!!(悔しそうな鳴き声を出しながら、廊下の奥へと逃亡するスライムの図)」


        異界速報


     たたたたん、たんたーん

    レタスの魔女の戦闘レベルが

       2になりました。



     あー、これ異界なのね。

  ユガミにしてはホップでキュートな

       異界だった。


「メェー、んー、まだ1日目だしなー。4日目からは本気出すけど、まぁまだ1日目だもんなー」


羊の悪魔(の被り物をした魔女)が

いちどだけ廊下の奥からすがたを露わして、

廊下でぼんやりと立っている。

最も有名な羊の頭を持つ悪魔(のかぶりものをした魔女が)で、黒ミサを司るとされるキリスト教の悪魔。(のかぶりものをした何故か頭より下はビキニ姿のーーー!!美女が廊下でぼんやりと立っているのだからーー!!)


「つかまえろー!!」

「メェー?!!(なんで追ってくるのよ!!)」


テンプル騎士団が崇拝していたと告発された架空の偶像(のかぶりものをした水着の美少女が白い裸体をかがやかせて)。羊の頭と翼を持つ姿で知られ、魔女の崇拝対象となり、ヨーロッパ中にその姿が広まるとされるユガミ。(とは言っても中身は本物の人間でなおかつ魔女っ子の美少女でなおかつナイスバディで美しくてゆかいな仲間候補その3を俺は捕まえた!!)


「よし、羊の魔女、捕獲完了」

「お見事ですご主人さま!!(トマトの魔女)

「メェー……(くっ、はなせ!!)」


ヨーロッパにありそうな、ごうかなお城。

そこに48人の魔女っ娘たちが9日間の期間の間。名誉と威信をかけて戦うサバイバルアクション新感覚パチンコ!!好評☆稼働中!!


ーーセーブしますか?

はい  

いいえ  ←


(3/1)


もちろんセーブするを俺はえらんだ。

たったったったった。2人の魔女が俺の元へと

メイドすがたで駆け寄ってくる。


「あ、そうだ、着替えさせないと」


俺はメイドすがたの魔女に、

本来のすがたに、かなりよく出来たすばらしい魔女のコスプレに着替えるように伝える。


はーいと、

メイド。もとい魔女たちはよろこんで従ってくれた。


やはりメイド服は恥ずかしいのか。

その恥じらいもまた素晴らしいのだがーー。


着替え中の魔女をのぞき見ることは

さすがにマナー違反だ。

風呂を覗くのはOKで着替えはダメという自分のわけのわからない倫理観や道徳に失笑してしまう。


朝日が昇って昼になっている。

俺は自分の部屋の外で待機する。


ーータバコでも吸うか。


「あ、ない!!」


トマトの魔女

レタスの魔女

羊の魔女たちが戻ってきたら

お昼ごはんにしようと俺は思った。


(4.6)


それはハロウィン、

魚が嫌いな魔女が、

日本のサバ缶を持ち込んだ。

「サバ缶だよー。おいしいよーたぶん」


それはハロウィン、

トマトが嫌いな魔女が

あつあつに焼けたピザを持ち込んだ

「焼きたてのピザだーよ」


それはハロウィン、

レタスが嫌いな魔女が

余ったトマトとレタスで

サンドイッチを作った。

「マヨネーズ不使用だーよ」


それはハロウィン、

苦手な食べ物を克服するための

敬虔な修道女たちによるお祭り。

「「「トリックオアトリート!!」」」


「メェー、メェー。羊だぞー!!トリックオアトリート!!」


「うるせぇ!!」

にんげんさんが

ヤニギレで羊の魔女にやつあたりする。

わたしは魚の魔女だ。


「ーー牛乳きらい、モーモー、牛の魔女だぞー。クリームシチューとキミのサンドイッチを交換しよう!!トリックオアトリート!!」


「お魚は食べたいけど、アレルギーだから食べれないんだ。日本の職人さんが作ったお寿司持ってきたけど、シャリしか食べられないぞー!!」


納豆の魔女が、

魚の魔女(私)にたずねる。


「お魚の魔女さん、納豆はどうだい?」

「ーーあのネバネバしたやつ?」


あんなの、

好き好んで食べるやつの気がしれない。


「ーー人間のステーキの方がおいしいよ」

「え?人間が作ったステーキですわよね?」


あぶない、ーーついつい、

お魚の魔女(私)は話を逸らす


「あぁ、納豆ね。よく日本のお寿司屋で食べてたよ。別に好きじゃないけど、魚アレルギーだから納豆とたまごくらいしか食べられないから」


「納豆食べれるの!!えらいね!!」


納豆の魔女が、キラキラした目で

お魚の魔女(私)の両手をにぎる。


あんなの、

好き好んで食べるやつの気が知れない。


猫の魔女が言った。

「それは良いとして、みんな猫耳になればいいさ!!猫耳は最高にゃん」


ーー猫はかわいいから、

それはなんだかなんか食べたくないなぁ。

それはハロウィンの歪み。

ミルクの海に、サバ缶をぶちこんで


(5/1)


「ねぇ、なんだかおかしなことなったね」


ーーなんで、

こんなものがうちの修道院にあるのよ。


コトリバコに話しかける奇跡の魔女

20cmの複雑な木の組み合わせで作られた箱は外国に持ち込まれた日本呪物。


「なんですの?その箱は?」


「あぁ、これね。コトリバコって言うんだけど、日本留学の特にさ、田舎の山を望遠鏡で眺めてたらなんか出てきた。表面に赤い塗装がされてるからなんとなく持って帰ってきたんだよね。サバ缶たべる?」


奇跡の魔女は眉をひそめた。

kotoribako とローマ字で

すばやくオッケーGoogleしている。

これが奇跡の魔女の良いところでもあり、

悪いところでもある。

要は頭がDHAサプリメントを飲んだ時ぐらいに目がシャキッとしてるのだ。


「ーー要するに、魍魎の匣の劣化版みたいなものじゃない。さっさと島根に行って返してください。これを前に、サバ缶なんて、食べる気にならないですわ」


これとは、コトリバコのことだ。

女性や子供を殺す呪いを込めたもの。


「ーーもう呪いは浄化されてるよ。じゃなきゃ封印されてるだろ?だから持って帰って来た。中身も開けてみたけど、特に大したものは入ってなかったよ。その代わり、魚が食べれなくなっちゃったんだけどね。なんでだろ」


「ーー知らないわよ」


ほら、こんなに簡単に開くから便利でしょ。

ほら便利なんだよね。


「ほら、10日後のハロウィンにさ」

お魚の魔女が、わたしは凶々しくわらった。


このコトリバコの中に、

イエスキリストのご聖体をぶち込んだら

もっと神聖な聖櫃になるんじゃない?


お魚の魔女は、わたしは奇跡の少女の前で

羊のお肉をコトリバコのなかにぶち込んで

バーベキューのようにジュージューと焼いた。


ほら、おいしいよ?

奇跡の魔女に、お魚の魔女が

わたしがささやく。


        10日後

       現在、昼メシ


「ーーこれが私の血」

そう言って、魔女のひとりが

古びた箱に赤ワインをそそぐ。


「ーーこれが、私の体」

そう言って、もうひとりの魔女が

古びた箱に、一切れのパンを入れる。


ーー何故だか、

俺はその儀式の過程に

1人かくれんぼを見ているような

なんだかそういう事を思い出していた。


証拠はないが、羊の血が混じってるようなーー。


鼻は昔から良い。においには敏感なんだ。

なんなら死ぬ前の人間のにおいだって分かるくらいには。においには敏感なのだ。


「どうしたんですか? ご主人?」

トマトの魔女が、

心配そうな表情で俺に話しかける。


「あれはーーなにをしてるんだ?」

俺は別にカトリックでなんでもない無神論者だから、そういうのに詳しくないのだ。


ーーだが、どうもあの箱はよくない。

要するに、良くないにおいがするのだ。


司祭役の魔女が、赤色の箱に

パンとぶどう酒を注ぐ。


羊の魔女が、

頭をぐわんぐわんと揺らしながら、

奇声を発している。


「めぇー…めぇー」


羊の魔女の奇行は、やまない。


感染魔術にでも発症したように

まぁーそんなもの、見たこともないし、

聞いたこともないのだがーー!!

明らかに、疑いようもない感染魔術だった。


見るに見かねて、とっさに、羊の魔女のところへ行こうとすると、

トマトの魔女と、レタスの魔女が

俺の行動を止めた。


「まだ1日目なんですよ?」


トマトの魔女は、なにかにおびえるように

そう警告する。


大聖堂、昼、


チラリと、魚のコスプレをした魔女が

俺のことを見ている。


山内冥さん

(やまないめい)さん

あなたを、異端魔女として、排除します。


奇跡の魔女は、

羊の魔女を、糾弾した。


そうなるのが予定されていたのか、

まわりの魔女たちは何も言わなかった。

ここで何も言わなかった場合。

おそらくだが

羊の魔女は◼️されるのだろう。


「異議あり」

俺は静かに議席から立ち上がって、

奇跡の魔女にそう発言した。


「ーーなにかしら、よそ者の人間さん」

少しだけ気だるげに、奇跡の魔女は

俺に発言を許可させる。


「今の彼女は、被告魔女、山内冥やまうちめいは自分で自分を弁護できる状態じゃない。なんたってメェーしか言えないんだ。せめて回復させてから、異端審問の判決を言い渡すのが公正なんじゃないか? ーーもしも間違えた場合、その責任はアンタが取ることになるんだろ?」


俺はなるべく冷静にそう言ったが

内心はすげードキドキしてる。

こんなのに胸が高鳴るのは、

パチンコに20万ぶち込んだ時以来だ。


「それもそうですわね」

ーーどこか、納得したように

奇跡の魔女は満足そうな表情で、

山内冥の糾弾を中止した。


「今日の異端審問は一時中断します」


ざわざわとざわめく大聖堂。

俺は羊の魔女の弁護人になったらしい。

別に悪い気はしない。

むしろその逆だ。自分の意見が通るのは、

とても愉快だ。


「ご主人さまー。まだ1日目ー!!」

俺はレタスの魔女の警告をフル無視して

めぇーめぇーと鳴く

羊の魔女の座る議席へと足を伸ばした。


「ーーよぉ!!さっきぶりだな」

「めぇーー(なんか知らんけど助かったー)」


魚の魔女が、俺を見ている。

ーーさすがに気のせいではないだろう。

わけのわからないことは

どうも無性に心がざわついて。


ざわざわとざわめく大聖堂。

俺はお魚の魔女に声をかけた。


お魚の魔女が、

どこかめんどくさそうに舌打ちをした。


中編につづく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ