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ユガミ対策高等学校 完結編


「パパとママを〜」


子供の声、聞き慣れた日常。


「おいしくたべーる」


子供の声、ケーキを食べるように。


「おぃしぃいいい!!!!」


子供の声、

それはファミレスでポテトを食べるように。


世界はケチャップ色に染まった。



序章



ユガミ、ひずみ、ひびわれ。


学校で習った、漫画じみた災害は


あたりまえのように現界した。


「え……?」


自分でもわけがわからない。


「お兄ちゃんモ、タべる?」


その問いかけの意味がわからない。


「え…?」


目の前に、ひろがる、その異変。

異変、怪異、死体、死体、


「お兄ちゃんモ、タべる?」

壊れたスピーカのような人間味のない声。


異界震度3.0

一定のビル、建物、閉じられた空間のみに

現実社会と共生する異界。

気がつかなければ、、、、


ペタペタと、壁に血がペンキのように


気づくな、、

きずくな、、チガウ、

息が、、


人間の内側のにおい

呼吸器官がソレに順応しないように

息をひそめる。


崩れたビルの内側、

階段の手すりだった鉄パイプが、カランコロンと甲高い音で廊下に鳴り響いた。


「おぉななかすいてないのー?」


ペタペタと

ショッピングモールの床は、チキンナゲットとケチャップ色で埋め尽くされている。


異界震度3.5

現実社会に現出する怪異のユガミ。

弾頭ミサイル一個分の影響力がある。


「ぉニィちゃん?」


その問いかけに返事をしてはならない。

学校で習ったことは以下の通りだった。


異界を

     認めてはならない。

異界から漏れ出たユガミヲ認識してはならない。


からだが総身を上げて警告する。


      みぃつけた


ユガミに見つかった場合。

3分以内に処理しなければならない。


「ーーあぁ、そっちから来るなら


ーーやってやるよ」


この歪みはすでに自立している。

共生を必要としない異界。

それはもはや異界ではなく現実だ。



   携帯のアラート音が鳴り響く。


緊急速報

東京都、新宿地区にて

ユガミが発生する危険性があります。

近隣地域の方々は、窓のない部屋に隠れて、

命の確保を行なってください。


「お前を倒さなきゃ、ハンバーガーが嫌いになっちまいそうだ」


べちゃりと、荒い足音。


折れた鉄パイプをユガミにぶち込む。


「いだぁい!!」


「ごめんなさい。ごめんなさいごめんなさい」


学校で習ったことは、

ユガミに対して同情してはならないことだった。


「ママ?ママ?どこ?どこぉ?」


「テメェの母さんはお前が自分で食ったんだろ!!!!」


そしてやつの腹にブッ刺した鉄パイプを

切腹のように横にかっさばく。


もしかしたら、

まだ生きてるかも知れない。


2mほどある赤ん坊の膨れ上がったお腹からこぼれおちた。

母親と思われる女性のカタチをした上半身だけになったすがたを認識した瞬間。


俺は後悔した。


「お兄ちゃんも、たべる?」


もしかしたら

助けれるかもしれないと思った。

そうなったら良いなという


希望的観測は、より惨たらしくて悲惨な現実に叩きつけられて折れた鉄パイプのようにへしゃげて崩れ落ちた。


「ーーーチィ!!」

思わず腹が立った。この様子だと、

もう片方の父親の方も同じようなものだろう。


「返せぇええええええええ!!!!」


「もう死んでんだよ!!バーカ!!」


そうでも言わないと、同情してしまい、、、


「しまった、!!」



異界震度4.g4h3.b#


3分経過

     この世界軸を保って、

   社会は◼️◼️◼️#g?@/&!!!!!!z!!






第二章


「結局、何分で倒したの?先週のユガミ、5分?うわだっさ、!!キショすぎてお話になんないんですけど!!?馬鹿なの?君の頭は」


そこで断ち切る。


「お前の頭も断ち切ってやろうか?」


土日に起きたショッピングモールでの

異界襲来は当たり前のように訪れて、

当たり前のように討伐された。


ーー問題があるとすれば、

現実社会に侵食した異界は

討伐したとしても5分前後を経過すると、

現実に残滓を残すという点だった。


「お兄ちゃん、ハンバーガーたべたいのー」


赤いランドセル、

俺がユガミの震源地を

ヒトとして認識してしまった以上。


その特異点は5分を経過した時点で

現実の現神ヒト(アラカミヒト)となった。


「ベビーシッターじゃないんだし、わざわざ学校にまで連れて来る必要あるのかい?あれかい?最近流行りのショタコンってーーぐは!!」


私立、対ユガミ討伐高等学校


通称ユガ。

その校門の鉄格子に

となりのーーいかにも2、3年後には

パチンコ、スロット、競馬、競艇、ギャンブルに心血を注いでそうなチャラけた男子高校生の顔をめり込ませる。


「いってぇ…」

「お兄ちゃんの友達、頭からケチャップ出てるけど、食べていいん?おいしそう!!」


「やめろ馬鹿!!人間は食べ物じゃない。そもそもコイツは高校生のくせにタバコを吸ってるから食ってもマズいぞ」


「はーーい」


対話可能な怪異、ユガミ、それらの類は、

討伐ではなく、封印、保護の対象となる。あくまでそれは2次的な処置ではあるが、対ユ上層部は、世界に定着したユガミに対しては積極的な討伐の対象としない。


あくまで、定着した場合ではある。

ユガミがユガミを引き寄せる性質はない。

人類がこうして平穏を保っていられるのも、ユガミのそういった性質に寄与している。


彼らは非共通の彼らだけの常識を持ち。

共通認識を他者には流布しない。そういった意味では、人間という生物そのものが、最も歪みを利用してきたのかも知れない。


ーーそう

先週の授業で教わった気がするが、

それがほんとうだと仮定するとするのなら、人間の存在そのものがユガミを呼び寄せている。


第一、ユガミとはなんだ?

生物にはかならずしも共通点がある。

共通点があるからこそ、それに名称を付与して、共通語にする。


ーーだが、ユガミにはその共通点がない。

ただ唯一、彼らに共通することがあるとすれば、異界に行こうとした。あるいは異界で育ってきた。ただそれだけだ。


「やっぱりキミ、討伐科じゃなくて、異界探索科にでも転校したほうがいい。向いてないよ」


「ハンバーガーたべたいー!!」


きっとこの二人の頭脳は

ビックマックで出来ているのだろう。


片方はひたすらハンバーガーのことしか考えてないし、後者は脳筋。頭にやっすい鶏肉を詰め込んだとしても良いCPUになると思う。


「チッ、わざとかよ。異界探索科なんてこの学校にはねーよバーカ、頭からケチャップ出しておきながら、まだ目が覚めてねぇのか?」


「はい三人とも遅刻だよー。次遅刻したら、補修授業だからねー。私が講師だ!!サボりたいから遅刻しないでねー。はい授業始めるよー」


ざわざわと、教室がどよめく。

そりゃそうか、頭にケチャップを流した男と、子連れの高校生。壊れたラジオのように

ハンバーガーとひたすら連呼する小学生。


明らかにズレてる。


「あーーどーもどーも、新学期から新しい講師になりましたパパイヤ鈴木です。


ーーあ、ちなみに前の講師は異世界討伐中に帰らぬ人となりました。一応、カラダは残ってるんですけど…あの?詳細聞きたいですか?」


ーーコイツもトチ狂ってやがる!!


「ハンバーガーたべたいー!!」

「パチンコ打ちてぇ!!頭いてぇ!!帰ります!!」


「ちゃんと病院行くんだよー頭の」


どうやら二学期は

とんでもない講師に当たったらしい。


「えーーそうですねーー。今日の授業はぁーー。あ、コレ、転校生の帰依くんね、はやく消えてくれないかなぁ。ねーー?帰依くんお姉ちゃんハンバーガー食べさせてあげるから異世界に帰らない?さっさと消えて失せろバカ」


「ーー?」


後半の方は

あまり聞き取らない方が良かったかも知れない。


「ーーえーー転校生の紹介の前に、わたしの紹介を始めますーー、22歳、どうだ!!若いぞ!!よろこべ!!彼氏は居ない!!」


……ざわざわと教室がざわめく。

最後の部分はドヤ顔で言うことなのか?


あとドヤ顔でこっちを見るな。かわいい。

栗色のツインテールに中学生のような出立ち。ひかえめな胸。西洋風のというかーー。ぜったいコイツ、ハーフかクォーターだろ。



「異世界から帰ってきたらーー。22歳になっちゃってましたぁーー!!!!!!返してよーー!!私の10代返してよぉおおおお!!!!オリンピック2回分くらい損したぁーーー!!ーー!!」


声高に泣き崩れる講師の肩を、

軽くポンと叩き、

「生きて帰って来れたんだからそれだけでボロ儲けじゃないですか」と耳元でつぶやくと、「まだ私の青春は終わってない」と、訳の分からないことを言い返される。ダメだコイツ。


「という訳でだ!!この優しくて可愛くて面白くて美しいパーフェクトなお姉ちゃんが講師だ!!!!名前はそうだなーー!!やっぱりパパイヤ鈴木です。パパはこの学校の校長してます!!キモいよね!!あは、笑える!!あは!!親子で同じ職場とかキッショい!!」


「でも給料良いんですよね?」


なぜか笑い転げる自称22歳に問いかけると、

発狂したように「生きててよかったー!!」と叫び始める。こんなのが教師をして良いのかよ。


「というわけでーー。うーーん。授業? うーーん、私に教えれることーー?わからん!!むしろ良いよねーー君らは今まさに高校生なんだろ??!!高校生なうなんだろ???私だって高校行きたかったーー!!最終学歴が中卒なのに教師やってるとか、歪んでるよね!!」


ピリッと、教室の空気が一瞬殺意で満ちる。


それはユガミとは言わない。


第一、それは現実的に

まだ社会に許容される内容だ。


だがユガミはチガウ。

あれは社会には適応しない。

むしろ、適応しないからこそユガミなのだ。


「あ、怒っちゃった?ごめんね!!

でも私、さいきょーだから!!」


「最強なら彼氏いらないですよね?」

「ころすぞ」


この教師は

いったい何をしに学校に来てんだろうか。


「というわけでーー!!今から生き残った生徒のみなさーん!!わたしとプリクラ撮る権利をゲットできます!!さぁばっちこい!!グランド20周だ!!カモン!!いやー!!一度でも良いから高校の野球場を走ってみたかったんだよね!!」


半分が残り、半分が、自称22歳の教師のあとに続いて教室を出て行った。


ーー無論、俺は当たり前のように教室に残った。もしかしたら学校に不法侵入した部外者かも知れない。むしろそうであってほしい。あんなのに3ヶ月も付き合わされるのは精神的にごめんだ。


クラスの女子たちがひそひそと

小さくてかわいいよね。西洋人形みたい。

髪の毛サラサラだったね。胸ぺったんこ。


などと、評論会をしており、

どういう理屈かは知らないが

特段と悪い印象ではなかったらしい。


「わたしもあのパパイヤ鈴木ちゃんと走ろうかなーー」


「やめとけ、ロクなことになんねぇぞ」


「でもわたしも鈴木なんだよね」

「どうせ偽名だろ」


「あ、そうだ、転校届、出さないとね。君、名前は何て言うの?」


クラスメイトの鈴木鈴子が

帰依者に話しかける。


「ハンバーガー!!」

「そっか!!らんらんルー!!」

「らんらんるー!!」


頼むから会話をしてくれ!!



第三章


「ほんとうに22歳なんですかぁー!!」

「法律上は22歳だよーー!!」


「ほんとうは何歳なんですかぁー!!」

「7日間異世界に行ってたら7年経ってたー」

「どうやって帰ってきたんですかーーー!!」

「上げ底のブーツを履いたらバグって帰れたーー!!」



校庭の方から声がきこえる。



午後12:15分



「すまないな、うちの娘があんなポンコツで」

「マジですか……!!」


アレが…教師?

ロリコン案件だろ。

実年齢15歳、頭ゆるゆる。

頭のネジを異世界に置いてきたような女だぞ?


「仲良くしてやってくれ、アレでも恥ずかしがり屋なんだ」

「それは単に嫌われてるだけなのでは…」


そう言いかけた後。

俺は校長のいる部屋を出た。


「らんらんるー!!」

「今日の夜メシは袋ラーメンだからな」

「らんらんるー!?」

「どうした?」

「あの、、、それ、、あの、えっと、その、お兄ちゃん、、、その袋ラーメンにハンバーガーは入ってますか?、で、で出来たらピクルスも多めで」


たぶんここで入ってないと答えると

校長室の前で泣き喚くのだろうな……。


「あぁ、ビッグマック入りだ」

「すっげぇええええええええええ!!!」


マジでどうかしてると思う。

嘘をつくのは嫌いなはずだった。

ほんとにどうかしてる。


「まるで保護者みたいな顔をするじゃないか。1学期の君はもっと殺気立ってたぞ」


「……?あの一応ちゃんと帰依者の転校手続きは提出しましたよね?」


「ーー7年ぶりに、元気に校庭を走ってる娘の姿をこの目で見たくてね。ちょっとサボってるだけさ」


三階建ての校舎。


歪みは歪みを引き寄せない。


「パパだよ…」

「帰ろう…?」


「こっちにおいで…」

「あの男は他人だろう…?」

「わたしは母さんと違って虐めないよ」


歪みは歪みを引き寄せない。


「ーーさぁ、ほら、はやく帰ろう。パパは虐めないよ」


午後12:18分。


     ユガミ緊急速報。


     推定異界震度8.8


予想震源地。


      対ユ高等学校



     近隣付近の方々は

   ただちに安全な場所に避難して、

    命の確保をしてください。

      


第四章、




「はぁ。なんとか校舎から避難できたけど、半分は残っちゃったな。ま、死んだら、私とグランドを走らなかったキミたちがわるいぜ!!アーメン!!」


「せんせー?校舎の方がなんか変なんですけど」


「結界を張ったからね。グランドの中は、多分この世界で1番安全だから、何があっても外に出たらダメだからね。知らない友達から呼びかけられても返事をしないようにね」


「ーー?」


「それじゃ、わたしは今から校舎に戻るけど、各員戦闘体制で、異界の討伐よりも、いかに異界と適応するかに尽力すること」


「せんせー何をいってるんですか?」

「来る……!!」


ズゴンと、校舎が崩落する。



同時刻、校舎にて


「なっ……」

「はっ?!!」


俺と校長の反応は同じだった。



「ーー結界を、貫通した??」

「震度7以上でも耐えれる結界のはずなのだが……」


「耐震偽装……とか、ではないですよね?」

「ーー断じてない、そもそも偽装という行為そのもの自体がユガミを孕む以上……」

「ーーだとすると…」


この異界は、

震度8以上に侵食されている。


「チッーー!!」

「各員戦闘配置、といっても2人しか居ないがね。分かってるとは思いますが、討伐ではなく、生存を優先してください。じゃないと…」


「先生!!上です!!」


校舎の天井から粘性のある茶色の液体が垂れ落ちて、校長の肩部分に付着すると、それは強い酸性の液体が金属を溶かすようなにおいを発生させながら校長の右肩を腐食させた。


「ぐぅ……!!!」

「大丈夫ですか??!!」


「ーーいやダメだ、この液体…身体を溶かすだけならまだ良い、、チガウ、私は良いから早く逃げろ!!!今ならまだ間に合う!!!」


「何を言ってるんですか!!たとえ異界震度が8以上だとしても!!そのための耐震結界じゃないんですか!!異界の影響度はせいぜい1か2じゃないですか!!」


「ソウダナ、ワタシノ結界ハ8マデヲ想定シテイタ」


ーー違和感、人間のことばのはずなのに、

まるでほかの生物が無理やり喋ってるような

とにかく、あの液体には一瞬でも生身に触れたらアウトらしい。


「第一次、戦闘体制、眼前や敵を排除します」


眼前に居る校長は、まるで、腐食された右肩などお構いなしに鋭い右アッパーを俺の下顎目掛けて撃ち放った。


「速いっ!!?」

「早く逃げろ、これでもだいぶ手加減している」


ーーなんとかかわした。

ーーだが、戦闘慣れしている校長のもう片方のこぶしが俺の腹部を突き刺すように深々とえぐった。


「肋骨…これ、、逝ったな」

「モウ、ニげれないな。ダカラ言ッタ、早ク逃げろと」


右足の感覚が……薄れている。


「あの避けてる間に、足を狙ってたか」


おそらく鋭利な刃物かなにかが

右足を突き刺している。


一体なにが自分の右足を貫いてるのか

確認したいが、


「もともとユガミ討伐科を設立する以前は、各政府要人の対暗殺機関だったんだ。対人の戦闘術はもちろんのこと、拷問のやり方さえこのカラダは躊躇なく実行するだろうな…」


校長の初撃をすれ違いさまに避けたと

そう思った瞬間から、すべては終わっていたのだ。


「オワリダ、ユガミ万歳」


「ーーそれでもユガミよりはまだマシだ」


俺は手榴弾を眼前に起爆させて、

爆発の衝撃を肌身で感じながら、

校舎の3階の窓から身を投げ出した。


ガラスの割れる音と、

それを掻き消す爆発音。

たのむ気づいてくれ!!

グラウンドに走っているクラスメイトの奴らだってある程度は戦える。


「ナイスガッツ!!さすがに私も自分の親には暴力を振るいたくなかったから静観させて見学していたよ。やるねー!!」


「見てるんだったら助けてくださいよ!!」

「どうせ殺されるんだ。自分の子供には殺されたくないだろーなーってさ。まぁキミが根性なしのヘタレだったら仕方なく殺したんじゃないかな」

「ーーすみません」

「キミが謝ることじゃない。正当防衛ってやつさ」


校舎2階の渡り廊下。


「あちゃーー。まぁそうなるよね」

「くそ!!」


2階は3年生が使っている階層だ。


「避難できたのは…体育中だった一部の生徒だと思ってたけど、実際に見るのはつらいね」


全員死んでいる。というより、

自分から拳銃で頭を撃ち抜いている。

おそらく、ユガミに侵食される前に、

足手纏いにならないようにと思ってーー。


「うぷっ…」

そこであらためて、異界の非現実さに打ちひしがれて嘔吐した。


「キミさ、死体にいちいち同情してたらーー」


人間の焼け焦げるにおい。

2階の天井から穿たれた穴の隙間から

手榴弾の爆発で焼けた死体があった。


「あれ…おかひいな、お父さん…せっかく生きて戻って帰ったのに…1週間くらいしか」


そこで俺は我慢の限界に達して

勢いよく胃の中から

込み上げてくるものを吐き出した。


「吐いてるところ悪いんだけどさ、ごめん…ちょっと今、まともに戦えそうに、ないかな」


PDSE、心因性から来る呼吸困難。

それは、俺もこの異界に来た時からSAN値は明らかに悪化している。ーーだが、実の親を目の前で死なせてしまった彼女からすれば、その精神状態は言葉のみではどうしようもない。


つまるところ、パパイヤ鈴木は

しばらくまともに戦えそうにない。


ーー少なくとも今事件での

戦力にはならないと思った方が良い。


「かと言って、俺1人で対処できるレベルを超えているか……」


「はぁ、はぁ、ごめんよ。せっかく戻ってきたのに、役に立てなくて、ほんとうにごめん、こんなことになるんだったら。ごめんなさい」


異界震度8以上の災害。

もはや人間がただ怯えながら生にすがりつくしかない隔離世マヨイガ


「ごめんなさい、ごめんなさい、許してください。なんでもしますから…異界にだって戻ったっていい。だから、わたしの命なんてどうだっていいから!!!!」


「どうなっても良い命なんて無いだろ」


嘘は嫌いだ。

たとえ今の自分が救われたとしても、いつかその嘘は歪みとなって。

自分自身に嘘がつけなくなる。


彼女が謝っているのは、

戦力にならない自分の不甲斐なさを責めているのか、それとも死んでしまった父親の方に謝っているのか、今の俺にそれを確かめる権利はない。


権利はないがーー。

これだけは言っておかなくてはならない。


「なぁ。そのパパイヤ鈴木って名前、明らかに偽名だろ?」


「うん、パパイヤって名前にしたらパパ困った顔してね。昔からそうだったんだ。それでね、うぐ、その困った顔がずっと見たかったからーー。なのにーーこんなことになって、…あぁ、こんなんだったら、もっと違う偽名にしとけばよかった!!」


2028年現在、原則として


異世界からの帰依者は

法律上は、生前とは違う名前にしなければならない。大昔、昭和初期。神隠しにあった少女が、名前を変更しなかった。かつ、特徴的な名前だったおかげで、名前を覚えていた神が今度は逃げた少女を隠すのではなく、「名前と地名が繋がっているのなら、一度ころして別の字名あざなを名付け、その村の名前を日本から消した」それがユガミ事件の記録上の最初の事件である。


名前とユガミは密接に関連する以上。

異世界に関わってしまった者は例外なく、

明らかに偽名だと分かるような名前にしなければならない。それは建前でもあり、ユガミヲ発生サセナイ為ノ沙法とも言える。



「なぁ、生きて帰って戻れたら、本当の名前を俺に教えてくれよ。嘘は大嫌いなんだ、吐き気がする」


「てか、吐いてるよね実際。やだよ。ユガミはどこにだって存在する。そんなことしたらすぐ見つかっちゃうじゃない」


「まさかキミ、私の名前で、この世界のユガミと、わたしの知ってる違うユガミを戦わせるつもりなの?」


それは理論上は可能である。

いやむしろ、そっちの方がよっぽど生存率は格段に上がるだろう。


「生きて帰ってからでいい。第一、俺はお前の行った異世界がどんな性質なのか知らない。むしろ異世界同士で仲良くコラボなんて展開が目に見えて吐きそうになる。今ですら手に負えないのに敵の戦力を増やすのだけは外にいる無関係の人間のためにも避けるのが今の俺たちに出来る最善だ」


「じゃあなんで今名前なんてどうでも良いこと聞くのよ。それしか考えられないじゃない、たしかに異界からの帰依者に人権なんて与えられないし、帰依者は殺されるべきだって法律が作られた。その理由は単純に帰依者がユガミを呼ぶ可能性がある。だから帰依者はユガミと同じかそれ以下の扱いを受けることになる。だからパパがこの学校にいなきゃ、わたしはこの学校でしか生きていけないんだって……」


ーーそれは違うと思う。

それは親が子を縛り付ける常套句だ。

この学校は、彼女にとって、鳥籠のようなものだったのかもしれない。


「それは嘘だ」


「なんでそんなことが言えるのよ」


本当にうるさい女だ。


「嘘が大嫌いなんだ」


「は?」


「ーーはぁ、お前さ、彼氏にもネット上のハンドルネームで本名を伝えない派の人間なの?」


「え?ちょ、げろくさ!!」


ひたすら怒っていた彼女の表情が目に見えて分かるくらいのスピードでみるみる茹で上がり前のタコみたいに赤くなってゆく。


「良い告白だと思うぜ!!マイソウルメイトスィートハニーブラザー。なぁ聞いてくれよソウメン。パチンコと競艇で2万負けちまった!!」


「あなた。だれよ?」

「ふっ、ウケる、なんで戻って来てんだよバーカ」

「バカとは随分な言い草だなゲロ虫くん、いいや、もといマイスイートブラザー・ソウメン。小学校からの腐り切った牛乳にゲロをぶっかけて足して2で割ったような縁だろ?俺たちさ、帰ったら結婚しよう!!3Pだ!!」


「なんで私も入ってんのよ!!ぶっころすわよ!!」


そうして、パチンコ帰りの悪友Jは

新任の教師に飛び蹴りを喰らう。

それだけ動ければもう戦えるだろ。


「もう回復したな。はやく行くぞ。とうの昔に3分以上が経ってる。5分以内で片すぞ」

「待ちなさいよゲロ虫!!」

「おうブラザー。4分30秒で討伐したらラーメンおごれよ」

「ーーてか、おまえ、なんで戻ってきたん?」

「金!!ない!!」

「金なら職員室の金庫にありますよ。ゴホッゴホ!!」

「パパー!!」

「誰だこのダンディでワイルドなーー」

「わたしのパパ」「もといこの学校の校長だ」


「近づかないでください」


わたしはもう助からない。


それはそう言ってるのもおなじだった。

むしろ当然だ。

今こうして目の前に立っていることが。

たしかに、俺はこの人を殺した。

消去法で考えると、


「私はユガミになりました。もうこの異界でしか生きられない」


「嘘だと言ってくださいよ。鈴木校長」


そこは、たとえ嘘であったとしても。

それがユガミを産み出すとしてもーー。


「実はこうして立っているだけでも、わりとキツイですし、まぁ、因果応報ですね。わたしは自分の娘をこの対ユガミ高等学校という檻に閉じ込めようとした」


「ーーそんなことないよ!!帰ろうよ!!名前だってもっと普通の名前にする!!だからいっしょに帰ろうよ!!」


「パパイヤ鈴木先生。これは校長として、最後の業務命令です。なるべく多くの生徒を、この異界から救出してあげてください。最強なんでしょ?」


「ーーそんな名前で呼ばないでよ!! 知ってるくせに!!なんでそんなーー!!」


「わたしに、その資格はありませんから」


「オウチ、doco?」

「イタイ、イダダ。アタマに穴?あいてる」

「放火後ナニソル?」

「カラアゲイキタイ」

「生キタイ」


生キテル人間がいる?

ナンデ?ワタシタチは◼️◼️したのに。

◼️◼️シロヨ、シネよ。◼️◼️しないなら


ーーコロシテほしいのかな?


「すみませんでした。対ユガミ高等学校の教師を代表して、この鈴木一誠が、禍ツマガツヒトとなって貴方たちをお連れします」


ホントに?

帰レルノ?

ホノルル行キタイ


「さぁ、行きましょう。3階へ。すぐにヘリコプターが救助に来ますからね」


ソラが見レルノ?

どんな色ナンダロウ


「行こう…パパイヤ鈴木」

「うん…」



エピローグ 異界討伐報告書


「ハンバーガー食べたぃいい胃」

「おまえほんとうにラーメンにハンバーガーを入れるつもりなの?」

「ダメなノ?」

「ダメに決まってるだろリトルブラザー」

「わたしもちょっとインスタントのラーメンはパスタ」


対ユガミ高等学校に襲来した

異界震度8.8の事案は、

詳細不明のまま

実質震度2.1 現実幾何差異度5級という。


実感の湧かない数字の羅列で表現されて、


白い紙に、なにも人間としての感情を感じられないインクのみとなって、1枚の紙切れ(はがき)に印刷されていたものを、入院している最中に医者から業務的な態度で渡された。


そのあっけなさに、

怒りを通り越して

最初はある種の機械的なやるせなさと虚しさを感じていたが、


ーー危篤状態から回復して、自宅に帰り、

ポストを開けると、また学校から新たな知らせが届いていた。今度は慣れてないような手つきの手書きの手紙のようだった。


古びたアパートの入り口で、

新しい生存者を期待して、

手に持った手紙の封筒がくしゃりと折れる。


「詳細については後日うかがいます。先日はお怪我もあったので、数字のみお聞きしました。残暑ですがお身体に気をつけてご静養なさってください」 


パパLOVE鈴木より


「ーーはっ、バカかよ」

詳細なんて、

もう聞きたくないくらい分かってるくせに。



家に戻っても特にやることはない。


私立、対ユガミ高等学校は

半壊した校舎が新しい校舎になるまでは

しばらく休校になるらしい。




行方不明者351名    重傷者3名



       軽傷者28名


特に、なにも変わらない。

何度見返したって、その数字が変わることはない。

それがハッピーエンドなのか

それがバッドエンドなのか。


ただの1個人である俺には

判断できることではない。


ただ、なんとなく、

全滅じゃなくてよかったなと思った。

無責任に、部外者のような感情で

それはあくまで、全体の中の392人の中に存在するうちの、たまたま1名がただ気まぐれに思った事にすぎないのだから、

そこに根拠なんてものはないに等しいのに。


9月15日


夏の残暑にしては、

少しだけ夏にしては、すこしだけ

頼りなさを感じるのは

セミの鳴き声が聞こえないから


もっとにぎやかでも、とそう思ったが、

事件後、後遺症もなく生きているのだから、そしてクラスの半分が生きているのだから。


お前たちはのうのうと生き延びておいて、

何を悩む必要があるんだと、


どこからともなく言葉にもならない、助けられなかった半分のクラスメイトたちの悲鳴が聞こえて来そうで、俺は考えることを避けた。


時間はなにもかもが頼りなくて、

気がついたら、遠くまで歩いていた。


「おかげで生きてるよ」


鈴木誠一と書かれた。

墓のまえに立つ。


ありがとうの言葉も、謝罪の言葉も

抜け殻になった自分の中では重たすぎて

すこしちょっと散歩をするくらいの感覚で。

ただそれだけを湿った土を握りしめるように小さくつぶやいた。


それだけは言っておかないと、

なにもかもが嘘になって、感謝も、

気まずさもすべてがモノクロになってしまいそうだった。


「よかった。んだよな」


よかったんだよな。


「そら良かったよ。あれだけの異界だったんだ。全滅しなかっただけすごい。あどうもこんにちわパパイヤ鈴木あらため、パパLOVE鈴木でーす。なんかファザコン発症中でーす」


「いまさらかよ」


「全部責任はわたしに来ちゃったけどね

あーあ、生きるのってたいへんだね。


まあー結果的に生きてるしーまーーなんとかなるでしょっ!!わたし最強だし。いやー、二学期始まったのにこっちは後の処理が忙しくてさー。落ち込むヒマがなくって逆に助かってまーす」


その前向きさが恐ろしかった。


「いいのかよそれで」


処理という言葉で、先に進むのが怖かった。

どんなに努力しようとそれができなかった。

自分のために、

自分の人生を過ごすというのが怖かった。


「え、ちょ、おま、え?うそ、なんでそんなに落ち込んでるのよ。目の前にこんな美少女がハッピーハッピーしてんのにえ、もしかして私って嫌われてる?貧乳だから?いやいやいやまだまだ成長しますから安心してください実際は15歳の22才なので、ーーてかBカップだからそこまで小さくないぞ、着痩せするタイプなんだ」


そういって無責任に

俺の担任はドヤ顔でこっちを見る。


「殺したんだぞ、いいのかよお前の父親」

「事故だよ。運が悪かっただけじゃん」


だから目を逸らす。

世界は平等ではない。

見えないように、他人事のように、

世界と社会のズレとゆがみを許容しながら、それでも無関心を気取ったそぶりでやり過ごす。


「運が悪かった?」

ーーふざけるな、

俺たちが弱かっただけだろ。

助けられなかったのを正当化する。

そんなの戯言じゃねぇか。

おかしいだろ。


「弱くても生き残ることはあるよ、あとキミそこまで弱くないんだけど…あれ?転校する?」


「ーー最強なんだろ!!だったら全部助けろよ!!!巫山戯ふざけんなよ!!もっと真面目に考えろよ!!!!!考えてるだろ!!本当は!!!!!」


じゃないと馬鹿だ。


「ごめん、なんかしらんけどごめん、ってか、お前あとでグラウンド100周回しろよ、教師不敬罪だよ☆どうだかわいいだろ。惚れてもいいぞ!!てか惚れろよ。責任は取らん、あ、転校届けの受付はただいまを以て打ち切りました。キミみたいなやつは、私みたいな奴と付き合ってたほうがいいんだよ。じゃないと、ほんとに何にも出来なくなるよ?」


「ーーえっらそうに、気持ち悪いんだよ。俺よりも1個年下のくせによ!!聖人君子の真似事でもしてんのかよ!!うぜぇんだよ、嫌われてるかって? あぁ嫌いだよ。そのおまえの気楽さにな。そんなの、なにもかも全部嘘で出来てるじゃねぇか!!!ーーざけんなよ!!もっと被害者ヅラすりゃいいだろ!!最初から!!それが1番ラクで、1番賢い選択に決まってるじゃねぇか!!!!なんでだよ!!!そんなのバカのすることだろ!!テメェのそのわざとらしい仕草のひとつひとつがデタラメだって言ってるんだよ!!!!!」


「ごめん、わたしバカじゃないから。キミの方がよっぽど子供だと思うよ」


被害者のはずの人間が

ただの善意と義務感で泣き寝入りをする。

そんなのはおかしい。間違えてる。

ーー帰依者だから?

異世界から戻って来たから帰依者だから

人権が無い?

人間さま以下だから人間さまの作った法律に従って、悪くないのに謝って、責任を取る?

その頼りなさと、無責任さに絶望する。


「え、泣いたん?おもろ!!たぶん本人だって覚悟してたはずだからべつにどうでもいいのにさ。ちょっと律儀すぎてレア度高すぎるから逆に好きだわ。キモ過ぎて草生えるって意味で、やっぱり転校する?ちょっと覚悟がたりない感じ?」


俺だってそうだ。

覚悟だってしてた。

それでも死にたいかと聞かれたら、

言葉に詰まる。


意味もなく楽しくなったり、

意味もなく笑ったり、

意味もなく不安になったりする。


ーーそれが高校1年生だとしたら、

なおさら当たり前のことで、

それが事実のはずだ。


「なにが教師だ、年下中卒のメスガキのくせによ!!!!牛乳クセェんだよ!!」

「なんで牛乳毎日飲んでんの知ったん?うはっ!!すげぇ!!エスパーかよ。キミに私のなにが分かるんですかー?」


そう言って、初めて

俺の担任は15歳っぽい仕草をした。


「どうだ惚れたか?ばかやろう」

「ーーなわけないだろ」


ただの1人の人間が

実質15歳の人間がそれを真正面から

受け止めてみようだなんてきっと、からだが壊れる前に

精神の方が先にどうにかなってしまう。


「とりま写真撮ろぅぜ!!」

「は?」


ーー父親の墓前で何してんだこいつ。


「初ぴえんゲットだぜ!!パパ見てる??!!私このゲロ臭いゲロ虫くんと付き合うけど許してね!!なんかウケるからさ!!って画像ブレてる!!もう一枚撮るぜ!メンタルよわよわ!!のゲロ草雑魚虫くん!!の泣き顔コレクションじゃー!!うーわ、キッショ!!鼻毛見えてる!!きーも!!転校なんてさせるかよバーカ!!キミは一生わたしに情けなく泣き顔晒して、鼻水垂らしながら犬みたいにわんわん泣きながら謝り続ければいいじゃん!!うんうん良いストレス発散だね。覚悟しろよー。私の彼氏くん!!ーーパパを殺した責任、わたしで取ってもらうからな!!」


はっ?なんだよそれ。

俺は間違えてるのだろうか。

まるで、自分だけが世界に取り残されてるような、このままでは流されるような気がして理性がおかしくなる。


「ーーくそ!!怒ってるんなら、そんなまわりくどい方法なんて取らなくてもいいだろ。あと地味に重てえんだよクソビッチ尻軽おんな」


「ねぇねえ!!きみさ!!?名前なんて言うの!!?きみもさすがに人前でゲロ草ざこ虫くんって呼ばれたくないと思うしさ!!私は優しくて可愛いくてパーフェクトだからそれくらいは聞いてやるよーー!!牛乳くさい?しらねぇよバーカ!!おいしいだろ?!!なぁ!!ポチッ!!」


ダメだコイツ、

ぜんぜん聞いてない。

もうこのノリで行くんだなはいはい。


「教師なんだから知ってるだろ!!てかお前から名乗れよ!!順番がそもそもおかしいじゃねぇか!!バカにするのも大概にしろ!!」


「わかった!!◼️◼️◼️つばさ!!」


まるでキャ◯テン翼と車のメーカーじゃねーかW杯で無回転シュートとドライブシュートを打ちそうだなって思った。


「良い名前だな!!マイ・エンジェル☆スイートティチャー!!パチンコ行かなくてよかったぞ!!まるで日本初の車のメーカーとドライブシュートが合体したような神々しい名前だ!!」


「マイ・エンジェル?」

「甘い先生が、自分の天使って…スイートにキモすぎるだろ……!!パチンコ屋に帰れよ」

「はっはっは、それじゃあまたなマイ・ソウルブラザー。負けたらご融資のほうよろしくお願いします」

「なにしに来たんだよ……」


そう言って、キモすぎる男は花束を空に投げ捨てて、それは墓の前に着地することなく。俺たちの頭の上で綺麗な白い雪となる。その花びらは地面に落ちてもその美しさはまったくを変えることなく木漏れ日に応えるようにきらきらとはらはらと銀世界はまばゆく反射してホワイトダストのようにキラキラ輝く!!。



ーーーしまった!!

それはマズイだろ!!


「いやいやさすがにまぶしすぎて草」

「いや、ちがう!!くるぞ!!第一戦闘配備!!」


ーー完全に頭に血が昇って忘れていた!!

ユガミはどこにでも存在するということを。


「え、、、ほんとになんか来る!!第一戦闘体制!!わけわかんないけど第一戦闘配備!!」


「マジでほんとに名前を言う奴がいるかよ!!くそ!!マジでパチンコ行きてぇ!!第一戦闘配備!!抽選券貰えなかったらどーすんだこれ!!今日はイベントで設定6なんだ!!」


「「知るかよ!!」」


名前とユガミは密接に関連する以上。

異世界からの帰依者は、明らかに偽名だと分かるような名前にしなければならない。


ーーやっと帰レルよ。


ユガミはユガミを引き寄せないが

異界からの帰依者はユガミと異界を呼び寄せる。


遠くの山が揺れる。

それは地面に埋まった亡者たちの

ーーあるいは異世界からの来訪者からの。


「ぷりぷりーーー!!(ただいまーー!!)」


「「「は?」」」


目の前に現れたのは

緑色のスライムのような謎の生物たち。


「きゃー!!かわいい!!」

「プリプリィ〜ー!!」


「おいよせ!!体が溶けるぞ!!」

「あーー私の服が!!」

「プリプリィィー(ブラジャーおいしい!!)」

「プリプリィー!!(もっとよこせー!!)」


       緊急速報


  服を溶かすスライムが現れました

      帰依者ですので、

    殺さずにお願いします!!

  可愛い女性の服だけを狙うそうです。

     気持ち悪いですけど!!

  対策委員会が来るまでしばらくお待ちくださいガチャ、ツー、ツーツー


「ひゃあああああ!!ヌメヌメするぅうううう!!!やめ!!来ないで!!返して私のスカート!!」


「まるで野球拳のような帰依者だな!!」

「いやいや殺した方がいいだろ。ランジェリーショップに群れられたらそれこそ大変なことになる。行くぞ」

「天才かブラザー!!あとその発想は誰にも言うなよ!!ちなみに何サイズが好きなんだ?」

「Bだよ」

「てか先生は助けなくていいのか?あとなんでそんな上機嫌なんだブラザー?」

「最強だから大丈夫だろ」

「でもBカップってさっき言ってたぞブラザー。あとたぶんいま全裸になってる」

「マジかちょっと助けてくる」


たったったった!!


「おい!!これ着ろ!!」

「あ、ありがとう!!はっ!!これが彼シャツ!!たすかふー!!」

「においを嗅いでないで早く着ろ!!全裸だぞ!!!!」

「はっ!!見ないで!!見ないでー!!」

「もうバッチリ見えてるから安心しろ!!」

「……へ?」


きゃー!!

「お腹いっぱいプリ〜!!実の娘のにおいの付いたブラジャーおいしいぷりー」



ーーいま、おぞましい言葉が聞こえたが、、


「パパ???!」「校長??!!」

「ただいまぷりー」


「殺す?」

「うん殺す!!パパイヤ鈴木の名にかけて!!」


「ま、まま待つぷり!!」

「最後の自己アピールどうぞ」


「お腹が空いてないときはスカートだけでブラジャーとパンツまでは我慢して溶か(食)さないプリ!!善良で健全ななスライムプリ!!もぐもぐ」


「ーーおい、なおさらやべぇ奴に見えて来たぞ!!このスライム!!」


「だから嫌いなんだよ!!!!!!!!このエロ教師!!おなじ教師なのがまじで怖い。パンツだった布きれ食いながらそれ言っても説得力のカケラもねーんだよ!!」


「ぷりっ!!ぷりっ!!(あと351体いるよー)」


「ガメラのギャオス襲来編かよ」

「ザコ虫くんあ、あぶない!!」


ガキィーンと、スライムを冒険のつるぎで受け止める音が聞こえた。


「鈴木鈴子?!!!おまえ!!異世界転生してたのか!!まるで異世界転生だ!!コングラッチュレーション!!おかえり!!」


鈴木鈴子?

それは俺のクラスメイトの名前だ。


「あ? あぁ、パチンカスか、おうただいま」


       緊急速報

    異世界から多数の帰依者が

   スライムとして襲来しています。

  なるべく外にブラとパンツを持参して

    人類がスライムの敵じゃないと示してください!!なるべく水色の、、あぁなんだよもう!!無茶苦茶だよ!!!こんなの!!仕方ないだろ!!ほんとのことなんだよー!!わたしは原稿を読んでるだけだからな??!!!!イタズラとか訓練じゃなくてマジだからこれ!!あとはみんながんばってねー。行方不明者、全員生きてました!!その代わりパンツ食べます。パンみたいに。


「いい下着姿だぞ!!鈴木鈴子!!」

「うるせえきしょい目でボクを見んなパチンカスのくせに」

「応援してるぞ鈴木鈴子!!」


「おい!!変なことを言ってないで早く殺せ!!このままじゃ全世界の女性の服が駆逐されるぞ!!ここはボクが引き止めるから!!ーーじゃないと!!ーーやめろ触るな!!汚らわしい!!ボクの下着姿がそんなに見たいのか!!見境いなさすぎるだろこのスライム!!あぁくそ!!このままだと、っく!!この世界はブラジャーとおパンツだけのご都合主義の異世界ハーレム物になるんだ!!男も含めてなッ!!」


「oh...」


「奴らがブラジャーとおパンツを非常食として手加減しているうちに!!はやく倒せ!!ニュース速報がモザイクだらけになるぞ!!」


たったったった。

(鈴木鈴子がスライムを追いかける足音)


「鈴木鈴子??!!!おまえ!!生きてたのか!!」


「最初から死んでないよ!!もうボクの命はどうなったっていいから、ボクに向かって手榴弾を投げろ!!」


ーーそりゃあ無理なはなしだ。

やっと、生きてるやつがいた。


「よかった…よかったよ、ほんと」


ほんと、頭がどうにかなってしまいそうだ。


「おいボクの服かえせーー!!あと泣くな!!訳わかんないぞお前!!あとボクの下着姿を見て泣いてるんだったらあとでぶっ殺すからな!!」


「見てねーよ!!ちょっと嬉しかっただけだ」

「なにキミ浮気?ねぇ浮気した?」

「そんなに嬉しいの?女の子の下着姿が」

「他の女の子の下着姿でハァハァしたの?」

「私がいるのに?へー、すごいねーー私も脱ぐから、脱いでも美しい私だけをみ…てか、気づけよおい、私が着ているキミの普段着が溶けてないことによ。なんで私が初彼氏のシャツを脱がなきゃいけねーんだ。体は鈍っても頭はちゃんと回せよおいこら転校させるぞボケ、お?遠距離恋愛でもするか?」


こいつーー!!後半だけ言ってることがまともになる癖でもあんのかーー!!!


これじゃあ感動的な再会がぜんぶ台無しだ!!こんな時くらい、真面目にしろよお前らーーー!!


「おい鈴木鈴子!!これを受け取れ!!」


俺はズボンのポケットに入れていたハンカチを鈴木鈴子に投げ渡す。


「ハンカチで何が出来るってのよ!!」


「何もしなくていいから!!」


「ぷりー?なんかにおいがおかしいぷり。クンクン、おぇ、混ざってるぷりー!!純度が低いぷり!!こんなに嫌な思いをしたのはポン酢とマヨネーズが同時にぶっかけられた唐揚げをむりやり罰ゲームで食った時ぐらいぷりっ!!ぷりぷりぷりぷりー!!でもお腹空いてるから食べるぷりー!!」


ーーならタバコでも食うか?


「ぷり?」


ーーあ、線香発見。


「ぷーり…」


ーー犬のうんちもあるぞ


「チェキプリィぃいいいいー!!??」


9月15日。


行方不明者 392人

異界帰依者 392人


それがハッピーエンドなのか

それがバッドエンドなのか、


俺には感想しか抱くことしかできない。

ただ少し、忙しくなることは確実だった。



ユガミふぁんたじあ!! 完

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