粛清せよ!! 軍人の名を騙る すくたれ者!! 貴様らが怨むべきは自分自身と上層部だ!!
「や……やめて……お姉ちゃん……わざとじゃないよ……」
熊狩りの為にB県にやってきた自衛隊のレンジャー部隊隊員の島田は、バディの山口に肩を貸しながら、ひたすら仲間達の元へと向っていた。
「ご……ごめんなさい……ちょ……ちょっと待って、『殺した』って何? クマ吉はヌイグルミだよ、生きてないよ……ぎゃあッ‼ やめて、お姉ちゃん、ぶたないで、けらないで、金玉だけは勘弁して……いやあああ……潰さないでぇ〜ッ‼」
どうやら、山口は、熊の惨殺死体を目撃した瞬間、何らかの過去のトラウマがフラッシュバックしたらしかった。
これがフィクションなら、余りにありがち過ぎるトラウマ描写だ……島田の脳裏に、そんな考えが過るが……過った次の瞬間、この状況で、そんな事を思ってしまう自分自身も狂い始めている可能性に気付く。
「ダイノ・エンプレス・テイルっ‼」
その時、謎の雄叫びが響く。
明らかに女の声なのに雄叫びと呼ぶのも、よくよく考えれば、変だが……。
そして……。
「ダイノ・バレットっ‼」
次の雄叫びと共に銃声。
「や……山口、待ってろ、必ず助けに来るからなッ‼」
島田は、意味不明な事を言い続ける相棒を置いて駆け出した。
走る。
走る。
走る。
だが、そろそろ……日が暮れる時間帯だ。
足下が良く見えない。
しかも、疲れと……装備やボディ・アーマーの重量……。
島田は、足をもつれさせ……。
「ダイノ・クローっ‼」
その声の主を見た時……島田の脳裏に浮かんだのは……ある有名なアメコミ映画のヒーローの名前だった。
赤黒く染まったパワードスーツが……「両手持ちの鉈」と言うべき刃物を地面に振り降し……そして……。
何かが飛んで来た。
それが、コケて倒れた島田の目の前に落下。
「ひ……? ひ? ひ?……ひぎいいいいいいッ‼」
島田は恐怖の叫びをあげた。
子熊の首だった。
「ダイノ・プリンセス・ジョウっ‼」
今度は……その赤いパワードスーツは、横に停めている4輪バギーから、大型の油圧ペンチらしきモノを取り出し……そして……。
地面に有る何かを挟む。
挟まれた何かが、徐々に変形してゆき……。
油圧ペンチで破壊されているのが……自分の仲間の胴体につながったままの頭部だと気付いた時……島田は祈った。
考え得る限りのあらゆる神と仏に祈った。
たのむ、せめて狂わせてくれ……と。
『な……なんで……なんで……こんな事になってんだ?』
島田の混乱する頭に浮かべる事が出来た想い……それは、たった1つの疑問だった。
その疑問に答えるには……少々、時を遡る必要が有る。




