悪夢!! 熊の被害悪化、ここに極まれり!! 女性3名の惨殺死体発見!!
『あ……あ……あ……あ……あの、く……く……く……』
「おい、どうした? 何が起きてる? まずは、お前と山口に差し迫った危険は有るのか?」
熊退治の為にB県に派遣された自衛隊のレンジャー部隊の現場指揮官である古川リョウは、偵察中の部下の島田からの要領を得ない無線通話に対して、そう答えた。
『あ……大丈夫です……その……』
「熊と遭遇したのか?」
『遭遇と言いますか、その……』
この集落の近辺では、ほんの数日前、30分ほどの間に、計10頭以上の熊が目撃されるという「ツキノワグマは通常は単独行動。母子連れでも4頭以上は、ほぼ無い」という今までの常識では考えられない事態が起きていた。
とは言え、このB県では「2〜3年前から、その『今までの常識では考えられない事態』が、たまにでは有るが起きている」という無茶苦茶な状態だったのだが……「人里に下りてくる熊の頭数が増えてるせいで、偶然、2〜3組の母子連れが同時に出没した」という解釈が一般的だった。と言うか、それ以外の解釈は有り得なかった。
それに加えて、「10頭以上の熊が30分ほどの間に目撃される」という、これまでの類似ケースの記録をわずかながら更新した、この集落の近くでは、よりにもよって「あんな可愛い熊を殺すなんて‼」系の団体のものと見られる不審な県外ナンバーのトラックも目撃されている。
その不審者の情報を聞いた時の古川の感想は「同じ本州でも、ほぼ南の端から、わざわざ東北までやって来るとは、ご苦労な事だ」だったが……。
「状況を正確に報告しろ‼ 判ってるのか? 相手は熊だぞ。ちょっとした情報の誤伝達が死につながりかねな……」
『殺されてます……。惨殺です。惨殺としか言いようが……はわわわ……』
「え? 地元住民が熊に殺されてたのか?」
『違います。熊が殺されています。熊に親を殺された奴でも吐き気をもようす程の酷い殺され方です』
「はあ? だから、何を言ってる?」
『ああああ……す……すいません、取り乱してて……重要な情報を……』
「だから、これ以上、どんなタワ言を言うつもりだ?」
『あ……えっと……3頭です』
「はっ?」
『ちょっと待って下さい……深呼吸の時間を……はあはあはあ……メスの成獣と見られる体格の3頭のツキノワグマが銃器以外の可能性が極めて高い未知の方法により、惨殺としか呼びようがない殺され方をしています』
「おい、まさか、お前、マズいクスリでもキメてるのか⁉」
『あ……あと……重要な事をもう1つ』
「だから、次は何だ?」
『熊の血が乾いてません。殺されたのは、ついさっきです』
「わかった、わかった、一旦、俺達と合流しろ」
「何なんですかね、一体?」
副官の福島も「意味が判らん」と言った感じの表情で、そう訊いてきた。
「まぁ、みんな疲れてる上に、ストレスも溜ってるからな……。とは言え、あの馬鹿には、すぐに休暇を取らせないと、このままじゃ俺達の身まで危なくなりそうだな」
「あ……あの……あの馬鹿のバディの山口は……その……ぶ……無事……えっと……何て言いますか?」
「ああ、確かに一番心配すべきは、それだな。ちょっと待て……山口、聞こえてるなら、すぐに応答しろ」
古川が、そう言った次の瞬間……どう考えても悲鳴にしか聞こえない動物の鳴声が響き渡った。
そして……明かに怯えた様子の子熊が10頭近く……古川達の居る里山と人里の境界付近目掛けて、とんでもない勢いで走ってきた。
その子熊達は……ある余りに異常な代物に追われていた。




