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夢の箱庭  作者: Nico
10/14

10.世界の異変


シオリと別れた後、俺はいつものようにスマホのタイマーが鳴る音で目を覚ました。ベッドから身体を起こしても、頭の中はまだ夢の出来事でいっぱいだった。

燃え盛るファミレス、助けを求める人々、あれは一体なんだったのだろうか。

夢の中の出来事のはずなのに、顔についた煤の感触や、焦げ付く匂いまで鮮明に思い出せる。


「....わけわかんねー」


誰にともなくそう呟き、俺は頭をかきむしった。



いつものように学校に到着し、自転車置き場に自転車を置いた。ふと、周りからの視線を感じた。

気のせいだろうか。

普段は誰も俺のことなんて気にも留めないのに、なぜか今日は、皆が俺の動向をじっと見ているような気がした。教室に向かう廊下を歩く間も、その視線は俺につきまとった。


自分の教室の机につくと、俺は大きく背伸びをして窓の外を眺めた。すると、後ろから突然、ユウキが俺の首に腕を回してきた。


「おはよー!噂の有名人!」


ユウキの無駄に大きな声に、俺は思わず驚いて声を上げた。


「うわっ!なんだよいきなり危ねーだろ!?」

「もう!ユウキうるさい!」


アヤカがユウキの頭を叩き、俺の机の前に立った。


「ねぇタクミ、あれ、本当にアンタなの?そんなわけないよね?」


アヤカの真剣な表情に、俺は心臓が跳ね上がるのを感じた。


「なんだよいきなり!噂って?」


俺の問いに、ユウキはスマホを俺の目の前に突きつけた。

画には、見慣れないネットニュースのトップページが映し出されている。


『夜中の大惨事を救った謎のふたり』


そのタイトルに、俺は思わず息をのんだ。記事には、火災現場の写真が何枚も掲載されている。そして、その中には.....。


燃え盛るファミレスをバックに、空中に浮かぶ俺とシオリが映っている写真があった。

俺たちは煤だらけの顔で、互いに顔を見合わせて笑っていた。鮮明な写真に、俺は全身の血の気が引いていくのを感じた。


「なっ、なんで!?」


俺の動揺した声に、ユウキはさらに興奮したように叫んだ。


「えっ、ウソ!?他人の空似じゃないの!?これオマエなの!?」


俺の額から、ダラダラと汗が流れ落ちる。心臓が早鐘を打つように鳴り響き、全身の震えが止まらない。


「し、知らねーよ!俺は関係ねー!」


何を思ったのか、俺はそのまま走って教室を飛び出した。

廊下に出ると、クラスの皆の興味と疑惑の視線が、まるで鋭い刃物のように俺に突き刺さる。


「なんで.....なんで、夢の中の出来事が....」

「夢の話だろ!?こんなの......」

「まだ夢見てんのか、俺は!?」


心の中で叫びながら、俺は学校の通用門を飛び出して、ただひたすらに走った。まるで、この現実から逃げるかのように。


息が切れ、足が重くなり、もう一歩も進めなくなった俺は、近くの川の河川敷に腰を落とした。背中を預けて、大きく息を吐く。肺が痛い。でも、それよりも、頭の中の混乱の方が酷かった。

川の流れをぼんやりと眺めながら、しばらくして息が整った頃、俺は思わず吐き捨てた。


「わけわかんねー......」


そのまま河川敷の草むらに寝転がった。青い空に、少しの白い雲がゆっくりと流れていく。まるで、昨夜の俺とシオリのように。その光景を眺めながら、俺はしばらく現実を忘れようとした。


「はは、笑える。いつも夢の世界に現実逃避してるくせに、今度は夢と現実の両方から逃げてんのか、俺は」


そんな自嘲的な笑いが、虚しく空に吸い込まれていった。


すると、俺の視界に、スーツを着た一人の女性が入ってきた。彼女は俺を覗き込むように、優しい、でもどこか芯のある声で話しかけてきた。



「タクミくんだよね?まったく...探したよ」


俺は身を起こし、彼女を戒するように見つめた。


「だ、誰....?」


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