創作神話 神々のなれ初め
作品として,世に出すにはもう一段の変換が必要となる気がします。ただ、僕の表現力ではムリでございます。なんとなく、ま、こんなこと言いたいんだろうねで楽しんでください。
創作 アサミヨの神話
神々のなれ初め
〈変換文〉
今、公園のブランコに座っている。これは私の身の上話。
なんだか、お先真っ暗ってカンジ。
身寄りも無く。金も無く。自分のことすら分からない。そんなドン底がいつまでも続く。
そんな中、私は一人制服で雨の中に座っている。
どこに行けばいいの?どうすればいいんだろ?
私は思う。数ヶ月前までの普通のくらしは何だったのか?
ある日、父が死んでしまったことで、生活の全てがひっくり返った。
人が死ぬなんてこと、一瞬なんだね。
まだ、世間知らずの高校生なんて、吹けば飛ぶような存在だ。
私はまだ、何をするにも自信がない。
その上、お腹の中には新しい生命がある。
こんなとこにいたってどうしようもない。なぜ自分がこんなことに?
そう、この子だけが唯一。私の中にある真実。
長い間、座っている。
私はなぜかふと立ち上がり、ぬかるみの中に踏み入れた。
おもむろに足がすべった。火花が散ったようだった。
・・・意識が遠のく。
誰かが話かけてくる。なつかしいような、いつも聞いているような。
周りは薄暗い、雨の雫が首筋を辿り、指の先が水たまりに浸かっているのかすかに感じる。
・・・ああ・・
そこにいたのは3人の男性。
「大丈夫?」
・・・私は・・・
私がかすかに首を持ちあげると、3人は微笑えんだ。
目を凝らしてよく見ると
一人目の男性は、私の彼氏だ。そう・・・お腹の子の父親。
まだ、二十歳にもならない。若く、はつらつとしていて微笑に溢れ、一緒にいるとなぜか心の底から楽しくなる。
二人目の男性は、まだとても幼い少年。じっとこちらを見つめている。何もしゃべらないけど、なんだか放っておけない。そのまなざしはしっかりと私の心をつかむ。なぜか、複雑な気持ちになるけど、私がこの子を守らなけらばいけない気がする。
三人目の男性は、・・・死んだ父だ。
言いたいことは山ほどある。ただ、やはり懐かしい。どうしても、そばにいて欲しい。早すぎるよ。
これは何なの?私は何を見せられているの?
彼氏が優しく囁くの。
「俺が君を守るよ。だから安心して。」
すがりつきたい。あんたとの未来に・・・。でもこの不安。不安定な気持ちは何なの?
少年は何も言わない。そんな目で見ないで。なんだか・・・重い気持ちになる。なんか・・・覚悟を迫られる気がする。
お父さん・・・いつも通りの笑顔だ。
「すまなかったな。もう安心だ。お父さんが来たからな。」
言いえない。安心する。だけどね。いい思い出ばかりじゃないよ。酒が入らなければ・・・お母さんも出て行かなかったし、ケンカして仕事を辞めなければあんなに精神的にバランスを崩して死ぬこともなかった。
雨の泥んこの水たまりの中から、私は三人を見つめている。
暗く冷たい。空が落ちてきている気がする。
・・・やっぱり、雨は嫌いだ・・・
腕を突っ張り、体を起こそうとすると三人が近寄ってくる。
「わたし、どうしよう。どうすりゃいいの?」
気持ちが溢れて叫んでしまった。
三人はピタリと止まった。そして口々に言う。
「大丈夫。簡単なことだよ。」
「簡単なこと?だけどっ!」
三人は声を揃えて言う。
「ひとつだけ、方法がある。」
三人は、それぞれの腕を差し出した。
「さぁ、誰かを選んで・・・」
「選ぶ?」
「そう。」
「なんでひとりしか選べないの?みんなで助けてよ。」
「何が一番大事なのかはっきりさせるのさ」
三人の言葉には少しのズレもない。
「どうしても?」
「どうしても。」
私、なんだかムカついてきた。
そして、キッと向き直り問う。
「では、選ばれなかった人はどうなるの?」
三人の答えは簡潔だった。
「その二人は立ち去ることになる。」
「そんなの選べるワケがないじゃない!」
三人の警告が冷たく響く。
「このままでは生きていけないよ?」
手が震えてる。
・・・ずっと、このまま雨に濡れていたいの?
だけど、三人の内、二人を選ぶなんて・・
・・ああ、でも・・でも・・・
体の芯がグラグラする。今までこんなの感じたことない。
三人の唇がわずかに揺れた気がする。
「そう、それでいい。それが全てのはじまり・・・すべての源。」
私は三人とそれぞれ目が合った気がする。
ふと、三人は我に返ったかのよう。
彼氏が優しく腕を差し出す。
「さぁ、・・・俺がお前を必ず幸せにするから。」
少年は、不愛想に体を押し付けてくる。
「苦しくても、つらくても足元の現実を見て。今、僕はここにいるんだ。」
お父さんはそっと頬をなでる。
「生まれてからずっとこうしてきたよな・・・」
私の手は震える。震える。心はもっと揺れる。揺れる。
しかし・・・しかし。 決めるの?決めなきゃ?
深呼吸した。・・・私・・選ぶ。
なんで、涙がこんなに出てくるの?
選ばれなかった二人はそっといなくなったみたい。
そして、私はぎゅっと相手を抱きしめた。
「私、選んだよ。」
「わかってるよ。」
私は立っていた。・・・いつの間にか雨はあがっていた。
〈原典〉
昔、遠い遠い国のお話。
この国は長い長い夜に閉ざされていました。
星が無く。月も無く。自分の手さえ見えない。そんな暗闇が果てしなく続く世界。
そんな中で光の王子はひとりぼっちでこの世界を彷徨います。
どこにいけばいいのか。どこまでいけばいいのか。
彼は思います。かつて自分が過ごした世界はどこにいったのか。
ある日、それは大きな力と速さで自らとても小さく小さくなり押し潰れてしまったのです。
気の遠くなる程の時の果て、一瞬のことでした。
そこでは光さえもとても小さな小さな存在だったのです。
そこでは、彼の存在はとても不確かなものでした。
なぜなら、他に誰もいないようだったから。
ここはどこだ?何もない。なぜ自分だけが・・ここに有るように思えるんだ?
・・・そう、彼だけが唯一。
微弱な光しか持っていない者。
長い間、彷徨いました。
王子はふと青白く光る場所に辿り着きます。
王子は、夢中で駆け寄りその場所に入り込みます。
・・・宮殿のようでした。
歌が聞こえてきます。久しぶりに聞く声・・・王子は耳が蕩けそうになりました。
青く薄暗い、大理石のような柱を辿り、その声のする方へ足は勝手に進みます。
・・・ああ・・・
そこにいたのは3人の美しい娘たちでした。
「あなたはだあれ?」
・・・私は・・・
王子が身の上を話すと、娘たちはだまってそれを聞いていました。
聞き終わると、
長女のヴェノンタが、盃に酒を注いでその柔らかい指をからませ、手ずから王子に飲ませてくれました。
この娘は三人の中で、はつらつとしていて微笑に溢れ、一緒にいるとなぜか心の底から楽しくなる。
何か希望や活力を与えてくれる。そんな娘でした。
次女であるというヌンディアは、控えめでそっとパンに野菜や肉をはさむと王子の胸に押し当ててきます。しっかり者で現実的。口数は多くないがしっかり言う事は言う。
一緒にいて退屈はしないけれど、やはり他の娘より目立たないという、そんな娘でした。
三女のパシンは、王子に着るものを用意してくれました。
この娘は、末娘ということですが三人の中で一番おっとりとしていて大人びている娘でそばにいると不思議と落ち着き、心地よくなる気持ちにさせてくれる娘でした。
そして、王子は孤独を癒され、楽しい日々が始まります。
ヴェノンタがいつも優しく囁きます。
「次は何して遊ぶ?今度、どこに行きましょうか?」
ヌンディアは何も言いません。いつもただ黙々と食事を作りみんなの皿を洗っている。
パシンはいつも微笑んで語ります。
「あなたが来てくれて良かったわ。思い出がたくさん。」
光りが閉ざされた世界でも、宮殿での王子の春とも夏ともしれぬ日々は続きました。
しかし、ある日王子は気づきます。天が落ちてきていることを。
・・・ここももう、保たない・・・
踵を返し、神殿の奥に向かうと三人の娘は揃って座っていました。
「みんな、天が落ちていている。ここも私の世界のように・・・」
王子が息せき切って叫ぶその端に、三人の娘は揃って言いました。
「知っているわ。決まっていることだもの。」
「決まっていることだと?しかし、このままでは!」
三人の娘は声を揃えて言います。
「ひとつだけ、方法があるわ。」
三人の娘は、それぞれの金の腕輪を差し出しました。
「さぁ、誰かを選んで・・・」
「選ぶ・・・だと?」
「そう、これは婚姻という名の契約。この三人の中の誰かを選ぶことによって世界が変わる。」
「ひとりを選べばどうなるんだ?」
「選ばれた者により結末は違う。」
三人の娘の言葉には少しのズレもない。
「どう違うんだ?」
「それは選んでからでしか分からない。」
王子は地団駄を踏みました。
そして、キッと向き直り問う。
「では、選ばれなかった者はどうなる?」
三人の答えは簡潔でした。
「その二人は消えていなくなる。」
「そんなこと選べるワケがないではないか!」
三人の娘の警告が冷たく響きます。
「世界と引き換えでもか?」
王子の手は震えました。
・・・また、あの暗闇に戻るのか?
しかし、三人の内、二人を失うのならいっそ・・・
・・ああ、でも・・でも・・・
王子は体の芯から激しく揺れました。今まで感じたことのないほどの震えでした。
三人の娘たちの花唇はわずかに揺れます。
「そう、それでいい。それが全てのはじまり・・・すべての源。」
向かい合う四人。交錯する眼差し。
ふと、三人の娘は我に返ったかのよう。
長女ヴェノンタが優しく腕輪を振ります。
「さぁ、あなた・・・私と一緒に明るい希望を抱いて生きましょう。」
次女ヌンディアは、不愛想に腕輪を押し付けて言い放ちます。
「苦しくても、つらくても足元の現実を見て。その中に幸せがあるかもしれない。」
三女パシンはそっと腕輪を王子の頬に触れさせました。
「あなたがくれた、たくさんの優しい想い。その中でなら私たちは不滅だわ。」
王子の手は震える。震える。心はもっと揺れる。揺れる。
しかし・・・しかし。
彼は、王子はとうとう、ひとつの金の腕輪を手に取りました。
その、両の眼からはとめどない光りの筋が流れます。
選ばれなかった二人の娘は金色の炎と化してその存在を彼方に押しやったようでした。
そして、王子は自ら選んだ娘の手を取ると驚きの声をあげました。
「我が妻よ。」
「我が君よ。」
その娘は、王子に寄り添います。
しかし、王子は戸惑います。
彼女の腕には三つの金の輪が光っていたのですから。
・・・これ、は?・・・・
妻となった娘はこう言い放ちます。
「我等は元々、三人で一人の女神。あなたは状態の違うそれぞれの面を見ていただけ。ただ、私を選んでくれたことで、世界は膨らみ、新しい生命が生まれてくるわ。」
原典の方は量子力学を下地にしたツモリです。熱力学の第2法則も参考にしています。なんとなく、ああそういことぐらいでお願いします。