厨二病発症そしてさようならお姉様
「領から出ていけ!」
ここは魔王領がヴァサゲル村。黒き森の守り人、巷ではダークエルフと呼ばれることもある我々の住まう村である。
そして神に嫌われ、漆黒の堕天使となった師の意志を継ぎ、今世に馳せ参じた、いずれ神殺しのカンナと呼ばれる予定のカンナ・エストルージュ。即ち我である。
たった今我を追放するなどと戯言を申した者は、我に血を分け与え、生を与えた者。それがこの村を統べる者である。
「フッ……気でも狂ったか? 村を統べ、漆黒の森を守る者よ。我はいずれこの世を統べるものなのだぞ? 我を追い出したら、世界征服、そして神への報復という偉業を成し遂げた我の側に貴様等の姿はないが、それでも貴様は我に出てゆけと申すか?」
イタい。イタすぎます。お姉様。もうお辞めになって。
そう。私ハンナ・エストルージュはたった今お父様に追放宣言を受けた激イタ厨二病少女の妹なのです。
流石に庇いきれませんわ。お姉様。だって、魔王様や各村の村長と次期村長が参加する魔王領の会合でもあんな感じで、他の村や街の方々に失礼なことを言ったようなのです……。
さようならお姉様。そしてどうもありがとう。
厨二病に侵された少女が次期村長の座を虎視眈々と狙う少女がいるのに気づくことはなかった。
「フッ……全くこれだから老いぼれは……」
我は少ない荷物を背負い、村を後にした。
魔王領を追い出されはしたが、我は世界中が自分の味方をし、それこそ全知全能になったかのように感じた。領を出た時から、頭がすっきりして魔力や体力も心なしか高くなっているように感じる。
確かめようと、試しに初級魔法のファイアーボールを撃ってみる。
「焔よ、我が魔力を受け取り我の代わりに魔法を執行せよ。火球。」
________ブワァァッッゴゴゴゴゴ
想像の十倍は燃えた。どうやら我の勘違いではないようだ。普通の火球は拳大程度の火の玉が人が走るのと同じくらいの速さで飛んでいくのだが、今の火球は直径が大人2人の背を足した程で、速さもケンタウロスの全力疾走を優に超える速さであった。遥か遠くまで広がっていた草原をまっすぐ切り開いている。恐らく魔王級の威力だろう。
試しにと、軽く走ってみると、先程の火球程ではないが身体強化も使わずにケンタウロスと良い勝負ができそうな程の速さだった。村にいた頃は村の中で後ろから3番目くらいの速さだったというのに、だ。
「フハハハッ! これはこれは我が師よ。口煩いダークエルフどもから解放された我を祝福しておるのか? まぁ、よい。感謝するぞ!」
我は地に向かって咆えた。
「あ……あれはッ……我が主神の敵かッッ」
その草原には四つん這いになり、地面に向かって咆えるダークエルフの少女とその少女を敵意の籠もった瞳で見つめる少女がいた。
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