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戦略に勝るもの

「トリプルだと……? 人類が未だ嘗て到達したことのない未知の領域に、この三人は……ミュトスの門は存在していると立証されたも当然だな」


「なんなの? その、SSSとは」


腕を組みながらアルトリウスが問う横で真良は予想を立てていた。


きっとこれはランクであり、アヌビアの発言から推察するにこの場にいる三人しかトリプルは存在していない。


明らかに秀でた能力を有している。


「トリプルとはお前達三人がいずれ、到達する限界値の能力ランク。ランクが高ければ高いだけ、向上も早いとされている」


──なるほど。育成ゲームで喩えるなら、スライム等はレベルが上がった際に向上するステータスが少量に対し、ボス級のモンスターだった場合、レベルが一つ上がると向上するステータスが大量。みたいなものか。


真良を横にあまりピンと来ていない二人の顔は険しい。


「ふむ……全く訳が分からぬな。そもそもエス? とは、なんなのだ」


「これに関しちゃノブナガに同意ね。貴方たちが何に驚いているのか、さっぱり理解が出来ないわ。能力って……鍛錬をしたら身につくものじゃないのかしら?」


ここに来て、真良は此処に場違いにも程がある自分が呼ばれた理由が分かった気がした。


かの有名な武田信玄に対し皮肉めいた第六天魔王と名乗る程、肝っ玉が太く、外国の物産を収集したりと広い視野を持ち、しかし、非情な冷酷さを兼ね備えた信長。


十五歳の時、教会にて選定の岩に刺さった剣・エクスカリボーを引き抜き王となり、カムランの戦いでは甥にあたる男であり元・円卓の騎士であるモードレッドと雌雄を決したりと、壮大な日々を送ったアルトリウス。


彼等に比べたら霞む程度で薄っぺらい人生でしかない真良が此処に来たのは、彼等を導く為なのだ──と。


この異世界(ファンタジー)で現代知識を持ち、彼等が躓かないようにサポートをする。


そうしたなら、必然的に日本に帰れる日が短縮される筈だ。何せ、王が二人もいるのだから。


真良の強みは、彼らよりも今の現状を把握し、イメージ出来ることだろう。柔軟かつ的確に理解し、二人を最強へと近ずける事。


だからこそ──


「この渡された紙に記されてる【???】とは、なんの意味をさす?」


真良の問にはアヌビアではなく、紙を持ってきた男がメガネをクイと挙げてから答えた。


「これは言うなれば固有スキルと言うやつです」


「固有スキル……と言うか、スキルってなんぞな? 聞いたこともない言葉だぞ」


「信長、それは俺が後から説明するよ」


「──で、あるか。ならば良い」


信長を見て一度頷いてから、真良は口を開く。


「固有スキルってのは、分かった。でもなんで、固有スキルの名前が記されてないんだ?」


「固有スキルとは貴重であり唯一無二。似たものはあれど、同じモノは存在しません。なので、固有スキルに関しては名前がないのです」


「つまり、名前は自分達で付けろ──と?」


「はい、左様です。因みに」と、メガネを掛けた男は続け様に口を開いた。


「魔法や剣技とは異なり、その固有スキルが発動するタイミングや条件も未知なので、感覚を忘れないようにしてください」


「分かった。で、俺達はこれから何をしたらいいんだ?」


「その事についてだが……」と、アヌビアは淡々と説明をし始めた。


「今すぐにでも出立し、獣王国を攻め落としてもらいたい」


「やっとこさ、我でも分かる話がきたようだのぅ。合戦……」


信長の目つきが変わるのを見た真良は、遮るように声を出す。


「本気で言ってんのか??」


アヌビアの発言は、軽返事出来るものでは無い。信長の考える合戦は、どう頑張っても騎馬隊や火縄銃程度。アルトリウスに関しては、もしかしたら魔法の類的なモノはあるだろうが。


ゲームで言うところのLv一状態の真良達にいきなり、敵国を攻めろなんて普通は言わないはずだ。もし、本気で言っているなら無能だし、何かを企み言っているなら──どちらにせよ、アヌビアの言葉を全て真に受けては駄目な気を真良は感じ取った。


真良の返しに気に食わないのか鋭い目付きを大臣が向けらるが、そんな事は知ったこっちゃない。こっちにだって守るべき命がある。


「本気──とは? シンラ……お前は何を言いたいんだ?」


「力の使い方も、向上のさせ方もしらない。赤子も当然だ。そんな俺達に、準備をさせずに出立させるのか? 貴重な人材である俺達に」


「まかせい、真良よ。戦略と戦術さえあれば」


「それだけじゃダメなんだよ。この世界は──多分、多勢に無勢でも抜け目のない戦略を練られた戦いでも何とかなる理由がある。それが何か分かる?」


信長は顎を撫でつけてから、言う。


「地の利を活かすだとか?」


真良は首を左右に振るってからアヌビアの方を見て言う。


「力だよ。比類なき力」


「シンラ、貴方まるで個の力が多の力に勝るとでも言いたいようね」


「…………」


「本気で言っているのかしら?」


「本気だよ。そして、俺達は多に勝るだけの(・・・・・)の力を秘めている。王様よ、まずは初歩を教えてくれ」


まともな案を出さないなら、アヌビアに行動を指示されるよかは、己が最優先だと思う方向に仕向ける方が余っ程いい。


信長も言っていた地の利等は二の次だ。まずは生きれるだけの知識と力を体に染み込ませなければ。


アヌビアは一瞬、渋い顔をしてから頷く。


「……よかろう。なれば、近衛騎士団長・ラインズ=サイルに命を下そうではないか」

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