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私と先輩のキス日和  作者: 壽倉雅
第九章『証明のキス』
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その四

久子の宿泊室のベッドで休んでいた梢がゆっくりと目を覚ますと、久子が様子を伺うようにこちらを見つめていた。

「すいません。ご心配おかけしました」

「ちょっと、薬の量が多かったかな」

「え……?」

梢は慌てて体を起こした。

久子は次回作の参考のために今度は女性と関係を結びたいと考え、梢と強制的に関係を築こうと企んでいたのだ。

「大丈夫。すぐに終わるから」

恐怖を感じて後ずさりをする梢だが、久子はどんどん迫ってくる。

「ほら、私の言うこと聞きなさい」

馬乗りにされた梢は、両手首を強く掴まれた。

「やめてください!」

梢は必死に抵抗するが、薬の効き目のせいで体に力が入らず、久子は接近してくる。

するとチャイム音が鳴り、勢いよくドアを叩く音が聞こえた。久子がその音に気付いて隙を見せた瞬間、梢は久子を勢いよく突き飛ばし、這いつくばりながらもオートロックになっているドアを開けた。

「大丈夫だった!?」

笑理と高梨が駆けつけ、部屋に入り込んできた。

笑理の姿を見て安堵した梢は、そのまま抱き着いた。

「西園寺先生、これはどういうことですか?」

高梨は険しい顔で久子を問い詰めた。だが久子は目をそらしてごまかし、

「幻覚でも見てたのか、この子が急に暴れ出すから。それよりも、この人は誰なの?」

「初めまして、西園寺先生。同業の三田村理絵と言います」

「あら、あなたが三田村理絵さん。お名前は拝見してますわ」

「私の編集者に、何したんですか?」

「別に何も」

苛立ちが限度に達した笑理は、久子の頬を引っぱたいた。

「何するのよ!」

「ちょうど良い機会なのではっきり言っておきます。私、梢と付き合ってるんですよ。同棲もしてます」

久子と高梨は、唖然となった。

「あなた、何言ってるの」

「これ見てください」

笑理が手首につけたブレスレットを久子に見せつけたので、梢も同じものを見せた。

「じゃあ、今からあなたに見せつけてあげますよ。私たちが付き合ってる証拠を」

心の準備をする間もなく笑理から唇を奪われた梢だったが、久子に見せつけるためだと己に言い聞かしてキスを受け入れ、何度も唇を重ね合わせた。

「バカバカしい。私に何見せつけてるのよ」

ヒステリーに怒鳴った久子だったが、高梨は一人冷静になって、

「この件は、法務部と相談します。今日の映画化の発表は取り消しにします。会場にも戻らないでください」

とだけ言うと出ていった。

長いキスが終わった梢と笑理も、高梨の後を追った。

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