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私と先輩のキス日和  作者: 壽倉雅
第四章『酔った勢いのキス』
20/60

その五

小さくソファーに座っている梢の元に、笑理がインスタントの味噌汁を運んできた。

「はい、しじみの味噌汁。飲むとスッキリするよ」

「ありがとう。作ってくれたの?」

「まさか。さっき、コンビニ行って買ってきたの」

梢は味噌汁を一口飲むと、ホッと溜息をついた。

「美味しい」

「昨日は相当飲んでたね」

久子の愚痴を言いながら缶チューハイをいくつも飲んだことは覚えているが、いつ自分がブラウスを脱いだのか、どうやって寝室まで行ったのか、梢の記憶は途中から曖昧だった。

昨晩の記憶を思い出そうとしていると、梢は突然笑理から肩を抱かれた。

「ねえ、今お風呂沸かしてるの。一緒に入ろうか?」

「えッ……一緒に?」

激しく梢は動揺し、胸の鼓動が早くなる。

「人前でブラウス脱いだ人が、そんなに動揺する?」

笑理がからかうように言った。

「それは言わないでよ……」

「私たち、付き合ってるんだよ。裸の付き合いもしなきゃね」

笑理に言われるがまま、梢は一緒に風呂に入ることになった。

浴槽の中で背後から笑理に抱き着かれている梢は、緊張と幸福の二つの感情が交差し、風呂湯の暖かさと笑理の体の暖かさを同時に肌で感じながら、うっとりしていた。

「たまには、こういうのも良いでしょ」

耳元で笑理にささやかれて、梢は照れながらも大きく頷いた。

「うん。ちょっと恥ずかしいけど」

「私は全然恥ずかしくないよ」

「すごいね、笑理は」

「これからも、うちに泊まりに来たときは、一緒にお風呂入ろうね」

梢と笑理はお互いにじっと見つめ合うと、優しく唇を重ね合わせた。笑理と一緒にいるときは、仕事のことも何にもかも忘れることができ、改めて自分にとっての大切な人であることを実感していた。

「酔った時の梢って、結構積極的なんだね」

「え?」

自分から笑理にキスをした記憶も、梢はうる覚えだった。

「シラフの時も、梢からキスされたいな」

「私だって、やろうと思えば、それぐらい……」

「本当に?」

笑理から挑発するような目で見られた梢は、笑理の両頬に優しく手を当てると、ゆっくりと顔を近づけて唇を奪った。

笑理は一瞬驚いた様子だったが、

「何だ、やればできるじゃん」

「当たり前でしょ」

「あ……来週、どっか一緒に出かけようよ」

すると笑理は思いついたように思いがけない提案をしてきた。

「それって、デートってことで良い?」

「ああ、確かにデートだね」

梢にとって、笑理とのデートと言う、新たな楽しみができた瞬間であった。

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