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〜調和〜


 「はあ!? 一緒に住むぅ!? そんなの聞いてないんですけど!」

 案の定、セリスに事情を話すと驚きの声と抗議の声が飛んできた。何故、セリスに許可を取らなくてはいけないのかはわからんが。

 「まあ、成り行きというか利害の一致というか、、、。」

 「成り行きってまさかアンタ、リオスに手を、、」

 「辞めろ! 俺に少女趣味はない。」

 まあ少女でもないんだけどさ。なんなら1000歳超えちゃってるし。

 「住むって言ってもお互いの要件が済めば出てってもらうよ。そう約束したしな。 そうだよな?」

 そう言ってリオスに目を配る。

 「そうだね、要件が済めば、ね。」

 含みのある言い方をしてくる。まあコイツも拒否し続ければいずれ諦めるだろう。諦めるよな?

 「・・・それじゃあ仕方ないわね。」

 セリスはそう言って、腕を組んで顔をグイッと上に向けて、、、

 「私の部屋はあなたの隣ね!」

 溜め息が出そうになった。というか出た。盛大に。


 俺の家は5LDK。我ながら立派な家だ。一階にはリビングにダイニングにキッチン。倉庫代わりとして使っている部屋が一つ。ちなみに風呂も一階だ。二階は主に寝室。つまり二階に寝室が4部屋ある計算になる訳だが、俺の部屋は二階の最も奥。いわゆる上座だ。だって家主だもん。

 最奥に俺の部屋を設けた手前、俺の隣の部屋は一つしか存在しない。そういう構造になっている。

 「僕が先に隣の部屋を貰ったんだ! そういう契約になっているんだよ! 責任もとってもらわないといけないし!」

 「先も後もないわ! あなたは居候、一階の物置にでも収まってればいいのよ! ていうか責任って何!? ねえリヴァイ!」

 煩わしいことこの上ない、別に隣室に誰がいようと関係ない。勝手に決めれば良い。あとセリス、矛先をこっちに向けないで。そしてリオスは微妙に分かりにくい迂遠な言い方はしないで。お願いだから。

 「はーん、だんまりを決め込む訳ね。 いいわそれなら私にも考えがあるから。」

 セリスは何やら考えがあるようだ。笑みを浮かべている。だがあの顔は悪巧みを含んだ笑顔だ。恐ろしい。

 めんどくさくなってきたな。いっそのこと二人とも追い出そうかな。

 「・・・あー、俺は村のギルドに獲物の換金に行ってくるから。それまでに決めといて。」

 俺は逃げた。時に人は逃げても良いのだ。人じゃないけど。


 ギルドは村の中心にある。ギルドと言っても大層なもんじゃない。二階建ての酒場に雑用の依頼を適当に貼っつけるだけの場所だ。この辺鄙なエルデン村に大きな依頼が舞い込んでくることもない。平和なること日本の如しって感じだ。

 「あら、もう帰ってきたのね。 お帰りなさい。」

 「ああ、換金を頼むよ。」

 そう言って俺はエレクトロスベアの爪と牙を置く。

 受付嬢のお姉さんは自称28歳(多分30歳)。年齢の話になると雲行きが怪しくなるのであまり詳しくは知らない。一度、村のおっさんが酔って問い詰めて、酒に死なない程度の毒を盛られたなんて噂も耳にしたことがあるので、触れないに限る。だが、目み麗しく、黒髪ストレート、前髪重めの感じが実に刺さる。そして何より巨乳だ。なんでこんな村にいるのか不思議なくらいだ。

 「エレクトロスベア、大変だったでしょう。」

 「・・・まあ、大変でしたね。」

 色々な意味で大変でした。

 「あら。リヴァイさんでも大変なことなんてあるのねえ。」

 そう言って口元に手をやりクスクスと笑うお姉さんは実に美しい。ちなみに、俺の視線は胸元に釘付けだ。大体、胸元の露出が多すぎる。こんなの見てくれと言わんばかりだ。見るのはただ。ノーリスク、ハイリターンだ。

 「・・・そんなに見られると、お姉さんも恥ずかしいわ。でもでも!村の英雄リヴァイさんだったら___」

 「すいません。いくらですか?」

 このお姉さん、もといミレイアさんは最近、婚活をしているという。だが、この村に若い男は少ない。いても昔ながらの付き合いということもあり、家族のような間柄だという。そこでどういう訳か、途中参加の若者である俺にターゲットを絞っているような気がするが、怖い。前世でもろくな事がなかった記憶がある。ごめんなさい、ミレイアさん。

 「・・・ッチ。 討伐と素材合わせて、20ゴールドになります。 これは大手がらですね!」

 今舌打ちしたよね? こわっ。

 「あ、ありがとうございますー。」

 怖くてなんか語尾伸びちゃったよ。

 にしても殺されかけて20ゴールドか。少ないな。この村の案件で言えばかなりの大金だと言えるだろう。それでも、生活に余裕をもたらしてくれる額とは言い切れない。スローライフを満喫するためには一山当てないとかなあ。

 そんなことを考えながら、ギルドの出口に向かう。

 「__時に、、、ドラゴンは倒せましたか?」

 「・・・はい?」

 耳を疑った。

 「あら私ったら、ごめんなさいね。 最近、ドラゴンがこの付近で目撃されているというから。 気にしないでね!」

 「はあ、、、。

  ・・まあ、いつかは倒してみたいものですね。ドラゴン。」

 俺はできるだけ平静を装って返事をし、ギルドを後にした。


 この世界ではドラゴンは忌み嫌われる存在として認識されているようだ。前世の知識では確かに好まれていたかと言えば、そうではなかったが、どちらかと言えば畏怖の念というか。少し神格された恐ろしさのようなものを持っている事が物語として多かったように思う。

 まあ、転生している時点で前世の常識など通用しないのだ。嫌われているのなら嫌われているで、その環境に合わせて自分が変わっていくしかないのだ。外部環境は変えられないが、自分自身は変えられる。

 「___という訳で! 交代で一緒に寝ることになったわ!」

 家に着くなりそんなことをセリスに告げられた。妙案得たり!と言った様子で満足げに胸を張るセリスに、不満げなリオス。君たちに貞操観念というものは存在しないのかね。

 とはいえ、外部環境は変えられない。自分自身を変えるしかないのだ。


 

 朝。キングサイズのベットで目を覚ます。カーテンの隙間から漏れてくる朝日が今日も快晴であることを伝えている。

 右手には静かな寝息を立てて眠る青髪の少女が一人。顔立ちは幼い。見た目はこの世界で言う成人にはまだ達していないものの、実年齢は1000歳超えのおばあちゃんだ。そういえば今日はリオスの番だったか。

 「___お前はもしかして、不能なのか?」

 リオスは目を瞑ったまま話しかけてくる。もう少しこう、『・・・うーん、おはよう。お兄ちゃん。』的なものをリオスには期待したい。起き抜けからど下ネタをかましてくる女の子は少なくとも俺のタイプではない。あとなんか年齢的にもよろしくない気がする。

 「別に不能じゃない。 ただ俺は少女趣味がないだけだ。 それだけだ。」

 「そうか、ふむ。」

 リオスは目を開け、起き上がる。考えるような素振りを見せた後、目を擦りながら___

 「・・・うーん、おはよう。おにい。」

 「__っっ!?」

 こ、これは! 何か刺さるものが・・・。何か加護欲を刺激するというか・・・。見た目と相まって何か切なげなものが___。

 と言うか人の心を読んだのか!? 

 「ふふっ。『心を読む』と言うほどのものではないよ。ただ他者のイメージを吸収するって言うのかな。そんな真似事ならできるものさ。」

 こわっ! 怖いって。

 「ただ対象に触れていないと発現出来ない類の魔法だけどね。」

 リオスはいつの間にか俺の手に触れていた。

 そして間髪入れず、少女の見た目からは想像もできないような力で引っ張られ、あっという間に下敷きにされる。

 「それにしても参ったなあ。この見た目が問題なのかい?警戒されないように少し幼くしたんだけど、、、もう少し大人っぽい方が好みかい?」

 「おまっ___」

 そう言ってリオスは見た目を変えていく、幼さを携えた顔の輪郭が少しずつ、すっきりとしたものに変わっていく。それと同時に身体の方は女性的な丸みを帯びていく。と言うか胸が。胸が、、、。

 「これくらいでどうかな? 僕の魔力コントロールが上手くいっていれば、君と同じくらいの見た目年齢をしているはずだ。」

 「__ど、どうって言われてもな・・・。 俺は、少女趣味は・・・」

 「もう少女ではないよ。ほら」

 そう言ってリオスは俺の手を自身の胸へと誘う。俺は流されるがままだ。と言うか流されたいです。はい。

 素晴らしい。その一言に尽きる。成長した姿に変化したとはいえ、小柄な彼女の胸は決して大きいと言う訳ではない。ただその柔らかさ、そして微かに、しかし確かに主張する山頂。コイツ、下に何も着てないのか、、、。

 「どうだい。これで少しはやる気になったかい?」

 「んな訳、、、!」

 「んー? 下の方は元気そうだけどなぁ?」

 リオスは馬乗りになった状態で身を捩る。すると刺激が我が息子へと、、、。

 いかん!! 誰か!助けて!リヴァイのリヴァイアさんが!!

 「おはよー。今日の朝ごは・・・・」

 セリスが入って来た。最高のタイミングであるとともに、最悪のタイミングだった。

 

 朝ごはんは卵かけご飯だ。この世界に米が存在していることにまずは驚きだったが、醤油に類するものまで揃っているのがこれまた驚きだった。朝は卵かけご飯に限る。電車の時間など気にせず、ゆっくりと卵を溶き、醤油と少量の香辛料を混ぜる。後は白米にまわしがけ。米全体に溶き卵がいきわたるように配慮するのが乙というものだ。そうして最適なまろやかさと塩分を含んだ熱々の米を口へと運ぶ。

 これだ。これが卵かけご飯だ。朝の胃袋というのは我がままなのだ。空腹であるというのに、刺激は求めていない。そこに、この確かに調律されたと言っても過言ではない食物で胃を満たす。胃袋が少しずつ、少しずつ目を覚ますかのようにその食物を受け入れていくのがわかる。正に、調和。

 「アンタに少女趣味があったとはね。」

 「だからさ、何度も説明している通り俺に非はないんだって。襲われたのは俺。襲ったのはリオス。」

 「僕は自然の流れ、というか本能に身を任せただけだよ。」

 「私だって・・我慢してるのに!」

 調和の取れた朝食とは裏腹に、調和の取れない食卓。

 ちなみにリオスは元の姿に戻っている。部屋が薄暗かったこともあり、セリスの目には少女の姿をしているリオスと俺が良からぬことをしているように映ったようだ。

 リオスがドラゴンだということもセリスには伏せている。セリスなら理解してくれそうではあるが、この世界でのドラゴンの扱いを見るに、余計なことは言わない方が良いと考えた。自分自身がドラゴンである場合を除いて、恐ろしくてしょうがないだろうし。まあ俺も恐ろしいけど。いろんな意味で。



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