表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/27

07 襲撃

「……何の用だ?」


 空に浮かぶ大小二つの月明かりの下、暗い雑木林の道。周りを取り囲んだモンスター達に、ブーヴが静かに聞いた。


「その異世界から来たガキを渡してもらおう」


 ブーヴの正面に立つ狼男とでも言うべき獣人が言った。ブーヴが敦にぴったりと寄り添って言った。


「嫌だと言ったら?」


()れ」


 狼男がそう言うと、周りの獣人達が一斉にブーヴと敦に襲いかかった。


 ブーヴは、ひょいと敦を左腕で抱き上げると、敦を抱えたまま後ろを向き猛ダッシュした。


 ブーヴの真後ろに立っていた牛頭の獣人が、持っていた棒をブーヴに振り下ろした。ブーヴは、それを右腕で受け止めた。顔をしかめながら、牛頭の獣人に猛然とタックルする。


 牛頭の獣人が文字どおり吹っ飛び、道に倒れ込んだ。


 ブーヴは道に倒れ込んだ牛頭の獣人を無視してそのまま走り抜けると、敦を地面に下ろし、追いかけてくる獣人達の方を向いた。


「ナカアツ、猛武童子の家へ行くんだ!」


 肩越しにブーヴが叫んだ。


「あ、あ……」


 敦は、気が動転してしまい、その場に立ちすくんでしまった。チュン子が敦の周りを飛び回り「ジジジッ!」と鳴いた。


「行くんだ、ナカアツ!!」


 敦の方を振り向いて叫んだブーヴに、獣人達が襲いかかった。


 ブーヴは、一人目が振り下ろした棒を右手で受け止め、殴りかかってきた二人目を蹴り飛ばしたが、三人目の剣を避けきれなかった。三人目の剣がブーヴの腹部に突き刺さった。


 剣で突き刺されたブーヴは、地面に膝をつくと、その場にうずくまった。


「ブーヴさん!」


 敦が叫んだ。


「に、逃げろ……ナカアツ!」


 ブーヴが力を振り絞って叫んだ。それをあざ笑うかのように、獣人達が敦を取り囲んだ。


 敦は、狐に似た獣人に後ろから羽交い締めにされた。必死にもがく。狐に似た獣人が驚いた顔をした。


 敦の正面に狼男が近づき、敦のみぞおちを殴打した。息が詰まる。


「大人しくしろ」


 狼男が敦を睨み付けて言った。周りを飛んでいたチュン子が敦の肩に乗り、心配そうに鳴いた。


 敦は咳き込みながらブーヴの方を見た。獣人の1人が剣を振り上げ、必死に立ち上がろうとするブーヴにトドメを刺そうとしていた。


「やめろー!!」


 敦は日本語で絶叫した。その瞬間、辺りが真っ白になり、敦は気を失った。



† † †



 日の光を感じ、敦が目を覚ますと、広い部屋のベッドの上だった。敦の右手側、ベッド脇には、老鬼神が立っていた。


 チュン子が飛んできて、敦の枕元の右側に留まった。敦は寝たまま枕元に手を伸ばし、チュン子を優しく撫でた。


「具合はどうだ?」


 老鬼神が心配そうな顔で尋ねた。敦はチュン子を撫でながら老鬼神の方を向いて答えた。


「だ、大丈夫です……ここは? 僕は何をしてたんでしたっけ……」


「ここは私の家だよ。昨晩、賊に襲われた君達を救助し、この寝室に担ぎ込んだんだ。なかなか目を覚まさないんで心配したよ」


 賊? 担ぎ込む? 少しの間ボンヤリとしていた敦は、昨晩の出来事を思い出し、慌ててベッドから上半身を起き上がらせた。


「……そうだ! ブーヴさんは?!」


「大丈夫だ。安心しなさい」


 老鬼神が優しく言うと、敦のベッドの左手側を指差した。敦がそちらの方を向くと、隣にもう一つのベッドがあり、そこにブーヴが寝ていた。ベッドの向こう側に紅炎童子が立っていた。


 ブーヴは右腕に添え木を付けて包帯を巻いていた。紅炎童子に支えられながらベッドから上半身を起き上がらせると、敦に笑顔で左手を振った。


「ブーヴさん!!」


 敦はベッドから飛び起き、隣のベッドのブーヴに飛びついた。


「良かった! ブーヴさん……本当に良かった! ありがとう!!」


「ははは、お互い無事で何よりだ」


 ブーヴが笑顔でそう言うと、左手で敦の頭を優しく撫でた。


「それはそうと、その格好だと風邪をひくぞ」


 ブーヴが笑いながら言った。それを聞いた敦が自分の体を見ると、何と全裸だった。


 顔を真っ赤にした敦が慌てて自分が寝ていたベッドに滑り込むと、皆が大笑いした。

続きは明日投稿予定です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ