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05 交流

 所長の魔法でこの世界の共通語の基礎を身に付けた敦は、共通語を猛勉強した。


 敦は、毎日ブーヴと一緒に魔王城へ登庁し、ブーヴが所属する警備隊の詰所の机を借りて、所長の部下が届けてくれた教科書と辞書で必死に勉強した。


 休憩時間に、ブーヴや他の警備隊のモンスターにお願いして、会話の練習をさせてもらった。


 10日くらいすると、日常的な会話は問題なく出来るようになってきた。


「すごいじゃないか、ナカアツ。いくら所長の手助けがあったとはいえ、こんなに早く共通語が上達するとは立派なもんだ」


 ブーヴが感心した様子で敦を褒めた。


 これだけ必死に勉強していれば、英語の学年末テストなんて余裕だったろうな、と敦は内心で苦笑した。



† † †



 翻訳石なしに日常会話が出来るようになり、敦の交流範囲は徐々に広がった。


 警備隊のモンスター達は、第一線を退いた高齢の者ばかりだったが、皆が敦を孫のように可愛がってくれた。


 特に仲良くなったのは、頭に2本のツノを生やした「鬼神(きしん)」という種族のモンスターだった。今の魔王と同じ種族だそうだ。


 彼は、敦がこの世界に召喚されたときに魔王の執務室で倒れていた若者の兵士の祖父だった。孫の救護をしてくれたことについて、敦にとても感謝していた。


「ナカアツ殿の処置が適切だったこともあり、孫は後遺症もなく快方に向かっている。本当にありがとう!」


「孫が元気になれば、一度食事に招待させてもらうよ」


 頭のツノを除けば優しいおじいちゃんという感じの老鬼神は、ニコニコしながら敦にそう言った。



† † †



 そんなある日、敦はブーヴにピクニックへ連れて行ってもらうことになった。


 城下町の裏手に広がる丘陵の一角、小高い丘を登ると、ちょっとした公園があった。


 まだ寒い季節だったので、草花はあまり咲いていなかったが、快晴でポカポカ暖かく、敦は清々しい気分になった。


 公園からは、城下町と魔王城、そして大きな湖の向こうの森や山が一望でき、敦はブーヴと一緒にしばらくその景色を眺めた。


 公園では、ブーヴの長女とその家族が待ってくれていた。


 ブーヴの長女一家は、ブーヴと同じ城下町内に住んでいるので、ブーヴが声を掛けたそうだ。


「異世界から間違って召喚されたなんて、ほんとお気の毒ね。さあ、これでも食べて元気出してね」


 ブーヴの長女が優しい笑顔で敦にそう言うと、カバンから大きな弁当箱を取り出した。サンドイッチのような食べ物がギッシリ詰め込まれていた。


 敦は、サンドイッチのような食べ物をご馳走になった。様々な具材がたっぷり入っていて、とても美味しかった。


 長女夫婦によると、オークは美食家が多く、様々な種族の中でも料理が得意な者が多いそうだ。実際、長女夫婦は城下町で料理店を営んでいるということだった。


 長女夫妻の子どもたちは、敦や敦の肩に乗るチュン子に興味津々という感じだった。


「異世界の人は、小鳥を操れるのですか?」


「ニホンってどんなとこ?」


 敦はブーヴの長女の娘達から質問責めにあった。感覚的には、小学生の高学年と低学年くらいの年頃のようだ。


 敦はしばらく彼女達と話した後、鬼ごっこのような遊びをした。


 途中から皆でチュン子を追いかける遊びに変わってしまったが、敦は思いっきり走り回って遊んで、心がスッキリしたような気がした。


 敦は、このような機会を設けてくれたブーヴや長女一家に感謝した。その夜は久々にぐっすりと眠ることができた。

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