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27 別れのとき

 敦が転移してからしばらくすると、紅炎童子達が転移してきた。チュン子を肩に乗せた敦は、木の陰に隠れながら皆を迎えた。


 紅炎童子達は、魔王軍とエルフ軍の両軍から救世主、英雄として大歓声を受けたということだった。両軍は停戦し、撤退することになったそうだ。


 そして、ブーヴ達による敦の奪還行為や、エゼルスィギルの抗命罪は、いずれもナクァツァーシから皆を守るために行われたのだ、という考えが広がりつつあるということだった。


 ブーヴが気を利かせて、魔王軍の補給部隊から、食糧等の物資の他、兵士の服を貰ってきてくれていた。木の陰に隠れて話を聞いていた敦は、お礼を言いながら急いで着替えた。


「ナカアツは裸に縁があるようだからな。調達しておいて良かった」


 ブーヴが笑いながらそう言うと、皆がつられて笑った。



† † †



 敦達は、エゼルスィギルの案内で、天央山を目指した。明確な根拠はなかったが、ナクァツァーシの棲み家である天央山へ行けば、敦やチュン子が元の世界へ戻れるヒントがあるのではないかと考えたのだ。


 空間転移魔法や徒歩を併用しながら、敦達は天央山へ向かった。


 エゼルスィギルが天央山で以前見つけた石碑のところまで辿り着いたとき、一同は男性とも女性とも思える温かみのある声を聞いた。


「私をここまで連れ帰ってくれてありがとう」


 敦は、自分の体から何かが抜け出るような不思議な感じがした。敦の肩に乗ったチュン子が、ブルッと震えるのが分かった。


 すると、敦達の前に、人影が現れた。敦が「夢」で会ったナクァツァーシだった。


「君の体を構成する分を含め、魔力は十分にある。君達を元いた世界に戻してあげよう」


「ぼ、僕達は元の世界に帰られるんですか!?」


 敦が皆から前に歩み出て聞くと、ナクァツァーシが(うなず)いた。


「うん、ちょっと待ってね」


 ナクァツァーシが右手を上げた。空に無数のテレビ画面のようなものが現れた。無数の風景が映し出されていた。


「あ、これだね」


 ナクァツァーシが指差した画面には、病室で眠る敦の姿が映し出された。


「君は魂だけこちらに来ているから、元いた世界の体は眠ったままのようだね。元の世界に戻ればすぐに元気になるよ……ああ、良かった。あちらの世界では三日程度しか経っていないみたいだ」


「そちらの小鳥は、魂と体の両方がこちらに来ているから、元いた世界に戻ればすぐに活動できるよ。私の『心』の影響で、他の鳥よりも遥かに賢くなっていると思う」


「その小鳥は君のことが大好きだ。引き続き仲良くしてあげてね」


 ナクァツァーシが説明してくれた。


 元の世界に帰れる……敦は目に涙を浮かべながら、肩に留まるチュン子を優しく撫でた。


「さあ、お別れをしておいで」


 ナクァツァーシが優しく言った。


 敦は後ろを振り返った。ブーヴ、老鬼神、紅炎童子、そしてエゼルスィギルが笑顔で敦を見つめていた。


「達者でな」


 老鬼神がニッコリ笑った。


「猛武童子さんも、お元気で」


 敦が頭を下げた。


「命の恩人であるナカアツ殿のこと、決して忘れません!」


 紅炎童子が凜々しい笑顔で敬礼した。


「僕も紅炎童子さんのこと、決して忘れません! 紅炎童子さんの勇者姿、カッコよかったです!」


 敦が笑いながら言うと、紅炎童子が照れながら笑った。


「ほんと、ごめんなさい。そして、ありがとう!」


 エゼルスィギルが涙を手で拭きながら笑顔で元気よく言った。


「こちらこそ、ありがとうございました! お二人はお似合いのカップルですよ」


 敦が茶目っ気たっぷりにエゼルスィギルと紅炎童子の顔を見て言った。


 二人は驚いた顔でお互いを見た。紅炎童子が少し顔を赤らめて手を差し出すと、同じく顔を赤らめたエゼルスィギルがその手を取った。


「ありがとう!」


 手を取り合った二人が敦に同時に言った。老鬼神がヤレヤレという顔で笑いながら二人を見ていた。


「ナカアツ……」


 ブーヴが敦に言った。涙目になっていた。


「ブーヴさん!」


 敦は泣きながらブーヴの胸に抱きついた。伝えたいことがいっぱいあるのに、言葉にならなかった。ブーヴの胸に顔を(うず)め、泣きじゃくった。


 ブーヴは、無言で何度も頷きながら、敦の頭を優しく撫でた。


 ひとしきり泣いた後、敦は顔を上げた。


 それを見たブーヴが、優しく微笑んで敦に言った。


「……気をつけてな」


「……ブーヴさん、ありがとう!!」


 敦は、両手で涙を(ぬぐ)うと、とびっきりの笑顔でブーヴに言った。


「さあ、チュン子、行こうか」


 敦が肩に乗るチュン子に言った。チュン子が「チュン!」と一声鳴いた。


 敦がナクァツァーシの方へ向き直った。ナクァツァーシの横に、光るモヤが現れた。


 敦は、光るモヤの前へ進んだ。光るモヤの直前で立ち止まると、後ろを振り返り、手を振った。


 ブーヴ達が笑顔で手を振り返した。


 敦は、皆が見守る中、光るモヤへ足を踏み入れた。敦とチュン子は温かい光に包まれた。

最後までお読みいただき誠にありがとうございました。少しでも楽しんでいただけたなら幸甚です。


また何かお話を思いついたら投稿させていただきます。


今後ともよろしくお願いいたします。

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