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24 誤算

「何がどうなったら、こんなことになるのよ?!」


 中央山脈の峠道の東側出口から少し北に離れた森の中で、エゼルスィギルが頭を抱えた。


 中央山脈東側の荒野では、魔王軍とエルフ軍がそれぞれ横陣で対峙していた。


 昨晩、一度西へ撤退する動きを見せた魔王軍は、急遽反転し、全速力で峠道の東側出口を目指した。


 エルフ軍は、峠道に若干の斥候を配置し、東側出口に最低限の監視兵を配置していたが、全速力で進軍する魔王軍に対処することは出来なかった。


 そのため、魔王軍は峠を脱して荒野に横陣を展開することが出来てしまった。一方、エルフ軍は、一時後退したものの、即座に横陣を整え、魔王軍に正面から対峙した。


 両軍の布陣を眺めながら、ブーヴが苦虫を噛み潰したような顔で言った。


「今までは、両軍が互いに東西の峠の出口で小競り合いをするか、小規模の部隊同士が平野で戦う程度だったのに……こんな大軍同士が平野で正面から激突するなんて初めてだ。とんでもない被害が出るぞ」


 このままでは、多くの犠牲が出る。何か良い方法はないか。敦は必死に考えた。


 二つの大軍が激突しないためにはどうすればいいか。両軍が戦いを諦めてくれればいい。両軍が戦いを諦めるにはどうすればいいか。両軍が戦わずして撤退する状況って一体……


 敦がお気に入りだった深夜アニメだと、いがみ合う二つの大国が戦争を始める直前、魔王の尖兵である強大な魔物が現れ、戦争どころではなくなるという話があった。


 その話では、チートスキルを持つ勇者が一瞬でその魔物を倒し、両大国から感謝され、両大国は対魔王で一致団結して和平を結ぶといった流れだったが、現実にそんな上手い話は……


 ……強大な魔物? 勇者?


「そ、そうだ! 皆さん、この世界に勇者や英雄の伝説ってあります? あと、伝説の剣とか伝説の魔法とか?」


 敦が突然叫んだ。老鬼神が驚きながら答えた。


「あ、ああ。伝説の剣で魔獣を倒す英雄譚ならあるが……」


 エゼルスィギルが続けて答える。


「エルフの国にも、伝説の魔法で魔獣を倒す話ならあるわよ。でも、急にどうしたの?」


「み、皆さん! 成功するかは分かりませんが、こうするのはどうでしょう?」


 敦は、思いついた策を皆に説明した。



† † †



「……ふむ。なかなか面白い」


 敦から話を聞いた老鬼神は、腕組みをしながら(うなず)いた。ブーヴが顔を(しか)めて言った。


「しかし、敦が危険過ぎる……」


「ははは、大丈夫ですよブーヴさん。上手くいなかければ、すぐに逃げ出しますよ」


 敦が明るく言った。


「だが、しかし……」


 ブーヴは渋ったが、エゼルスィギルがブーヴに言った。


「私がナカアツさんに必要な魔法を教えます。短距離の空間転移魔法が使えれば、安全に退避できると思います」


「……分かった」


 ブーヴが渋々ながら承諾した。


 エゼルスィギルが教え上手だったこともあり、敦はすぐに必要な魔法の呪文を覚えた。


 ナクァツァーシの魔力のお蔭か、敦は、高難度とされている空間転移魔法もすぐに使えるようになった。とはいえ、3回中2回は失敗したので、ブーヴは心配していたが、敦は笑って誤魔化した。


 荒野の方から、太鼓を打ち鳴らす音が聞こえた。いよいよ戦いが始まるようだ。


「それでは皆さん、よろしくお願いします。上手く行っても行かなくても、予定の場所で落ち合いましょう」


 チュン子を肩に乗せた敦が笑顔で言った。


「ナカアツ殿、ご武運を」


 老鬼神が敦に敬礼し、紅炎童子もそれに倣った。


「それじゃ、ナカアツさんを転移させますね」


 エゼルスィギルが呪文を唱え始めた。


「ナカアツ……無理するんじゃないぞ」


 ブーヴが心配そうな顔で敦に言った。敦が笑顔で頷いた。


 エゼルスィギルが呪文を唱え終わった。敦の周りが光で包まれた。

続きは明日投稿予定です。

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