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「で、話というのは何だ?」


 ブーヴが警戒しながらエゼルスィギルに聞いた。エゼルスィギルが笑顔のまま答えた。


「異世界から召喚され、ナクァツァーシの魔力が宿った少年、ナカアツさんの救出をお手伝いさせてください」


「ふざけるな! そもそもこんな事態になったのは、お前達が元凶じゃないか。挙げ句にナカアツを(さら)おうとした奴らの話を信じられるか!」


 ブーヴが吐き捨てるように言った。エゼルスィギルが悪びれずに答えた。


「確かに我々が元凶です。というか、私が召喚しました」


「なっ?!」


 ブーヴは絶句した。どうやらエゼルスィギルは、魔王城を急襲したメンバーの一人のようだ。


 エゼルスィギルが紅炎童子の顔を見て言った。


貴方(あなた)は確か魔王の執務室にいた護衛の軍人ですよね。私も貴方も、軍人としてお互いの職務に全力を尽くした……貴方も私も命を落とさなくて良かったですね」


「……」


 紅炎童子は少し驚いた顔をしたが、何も言わなかった。


 エゼルスィギルが勝手にブーヴの右手側の席に座った。


「当初は我々もナカアツさんに宿ったナクァツァーシの魔力を利用しようと考えました。あの魔力を先に使った側がこの戦争に勝利する、そう考えていました」


 エゼルスィギルがテーブルに両(ひじ)をついた。


「しかし、実際は違ったのです」


「どういうことだ?」


 老鬼神がエゼルスィギルの向かいの席に着きながら聞いた。ブーヴや紅炎童子も警戒しながら席に着いた。


 エゼルスィギルが3人の顔を見渡して言った。


「実は、あの少年の魔力を使うと、かなりヤバイ事態になることが判明しまして……その点、ご説明させていただけないでしょうか?」


 そう言うと、エゼルスィギルは勝手にテーブルに置いていたパンを手に取って食べ始めた。



† † †



「これ美味しいですね! あ、もしよければ飲み物いただけませんか? 私、喉がカラカラで」


 エゼルスィギルがパンをパクパク食べながら言った。


 ブーヴは、少し躊躇(ためら)ったが、キッチンからハーブティーを入れたコップを持って来た。


「ありがとうございます。わあ、いい香り」


「で、ヤバイ事態って何なんだ?」


 嬉しそうにハーブティーを飲むエゼルスィギルに少々困惑しながら、ブーヴが聞いた。


「はい、エルフの国と魔王の国の滅亡です」


「へ?」


 エゼルスィギルがごく普通に言ったため、思わずブーヴは変な声を出してしまった。


 エゼルスィギルは、テーブル中央にあったサラダボウルを勝手に手元に引き寄せ、添えられていたトングのような食具でムシャムシャとサラダを食べ始めた。


 呆気にとられていたブーヴが、気を取り直してエゼルスィギルに聞いた。


「二つの国が滅亡するって、一体どういうことなんだ?」


 エゼルスィギルがサラダを食べる手を止めた。


「すみません、そのお話はしばしお預けですね」


 そう言うと、エゼルスィギルが突然何やら短い呪文を唱えた。


 その直後、ブーヴの家の外から叫び声が聞こえたかと思うと、突然ブーヴの家のドアが蹴破られ、武器を持った複数の獣人が室内になだれ込んで来た。


「詠唱が終わるまで持ち(こた)えてください!」


 エゼルスィギルが叫び、次は長い呪文を唱え出した。


「くそっ、一体何なんだよ!」


 ブーヴが悪態をつきながら椅子から立ち上がり、テーブルの向かいで立ち上がった老鬼神と目配せをした。


「チュン子、こっちだ!」


 ブーヴが叫ぶと、チュン子がテーブルから飛び立ちブーヴの肩に留まった。


 ブーヴが老鬼神と息を合わせてテーブルを持ち上げ、こちらに走ってくる獣人達へ向かって投げ飛ばした。


 獣人の何人かが投げ飛ばされたテーブルにぶつかり倒れた。そのうち一人は、倒れた拍子に容姿が変化した。尖った耳に美しい顔立ちの男性。エルフだった。


 投げ飛ばされたテーブルを避けた二人の獣人が細身の剣でブーヴ達に襲いかかった。この剣は、エルフの国で好んで用いられているものだ。


 ブーヴと老鬼神が椅子を盾に防戦し、紅炎童子が椅子を持ってエゼルスィギルを守った。


 テーブルの下から起き上がったエルフの男性が、紅炎童子に向かって襲いかかり、細身の剣で突いてきた。


「まだか?!」


 紅炎童子が椅子で剣先を避けながらエゼルスィギルに叫んだ。


「お待たせしました!」


 詠唱を終えたエゼルスィギルが声を上げた。ブーヴ達の周りが光で包まれた。 

続きは明日投稿予定です。

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