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14 巡回①

「ゲストルームで一人でいるのを寂しがっていたナカアツが、誰とも会いたくないなどと言うわけがない!」


 警備隊詰所の小会議室。老鬼神に状況を説明したブーヴが声を荒らげた。ブーヴの肩に留まったチュン子が「チュン!」と同意するかのように鳴いた。


 老鬼神が苦笑しながらブーヴをなだめた。


「まあ落ち着け。外に聞こえるぞ。仮に、我が国の上層部がナカアツ殿に宿るナクァツァーシの魔力を奪うつもりだとしても、それが行われるのは魔力を使う直前だ。魔力は外部で貯蔵できないからな」


「ナカアツ殿の身に何か起こったことは間違いなさそうだが、少なくとも命に別状はないだろう。禁忌の魔法が使われるとしたら、開戦と同時に戦場でということになるだろうからな」


 それを聞いたブーヴが、心配そうに老鬼神に尋ねた。


「だが、エルフは超長距離転移でいきなり魔王城を攻めてきたぞ。同じように我が国がナカアツに秘められた魔力を使ってエルフの王都を急襲するとは考えられんか?」


 老鬼神が笑った。


「あれはナクァツァーシという強大な魔獣を召喚するという戦術だったので出来たことだ。ナカアツ殿に秘められた魔力を使用して超長距離転移をしても、その先で出来ることは限られている」


「超長距離転移に必要な魔力は別途調達して、転移後にナカアツ殿に秘められた魔力を使うとしても、それには数多くの魔法使いが必要となる。それだけの人数の魔法使いを一気に転移させることは難しいだろう」


「そうか、それならいいんだが……」


 ブーヴは少し落ち着きを取り戻した。老鬼神が腕組みをしながら言った。


「昨晩の孫の話だと、動員令は今日にも出されるようだ。ナカアツ殿との面会拒否は、それに対応した動きだろう」


 老鬼神がそう言った直後、始業開始の鐘が鳴った。


「ナカアツ殿がゲストルームにいるのか他の部屋へ移動させられたのか。城内巡回にかこつけて探ってみるとするか」


 老鬼神がそう言って笑った。ブーヴは大きく(うなず)いた。



† † †



 今日の城内巡回は別の者が担当だったが、老鬼神が担当にお願いして、老鬼神とブーヴの二人に交替してもらった。


 ブーヴと老鬼神は、それぞれ胴鎧を身につけると、ブーヴは金棒を、老鬼神は槍をそれぞれ持って、警備隊の詰所を出た。チュン子が飛んできて、ブーヴの肩に留まった。


 普段は、マスターキーや暗い場所用のランタンの他、短剣を所持する程度で、鎧を着たり大きな武器を持ったりはしないが、万が一に備えて重装備にした。


 周囲には「最近体が鈍ってきたもんでな。体力作りだ」などと説明した。


 ブーヴ達は敦が寝泊まりしているゲストルームの前に来た。ドアの前では、若い二人の兵士が立哨していた。


「あ、眩暈(めまい)が!」


 ドアの前に来たブーヴが叫ぶと、よろめいた振りをして思いっきりドアに倒れ込んだ。慌てたチュン子が飛んで老鬼神の肩に移動した。


 ブーヴのパワーに負けて、ドアはあっさり開いた。ブーヴの上半身が室内に倒れ込んだ。


「ちょ、ちょっと、困ります!」


 兵士が慌ててブーヴに言った。ブーヴが頭を掻きながら謝った。


「すまんすまん。久々に重装備で歩いていたらフラついてしまった」


 ブーヴが起きながらゲストルームの室内を見た。敦は室内にいなかった。


「まったく、もうお年なんですから気をつけてくださいよ」


 兵士が急いでゲストルームの扉を閉めながら言った。ブーヴは平謝りしながら兵士に聞いた。


「あれ、ナカアツは?」


「え? 部屋の中にいると思いますよ。誰とも会いたくないということですし、ベッドで寝てるんじゃないですか?」


 兵士が不思議そうな顔をして言った。どうやら立哨の兵士は、室内に敦がいないことを教えられていないようだ。


「そうか。すまない、すまない。最近老眼気味でな。お騒がせして申し訳ない」


 ブーヴは改めて兵士達に謝ると、老鬼神と廊下を進んだ。


「……やはりどこかへ移動させられているな。立番の兵士には伝えられていないようだ」


「ああ……魔法省や参謀本部を重点的に探してみるか」


 ブーヴと老鬼神は小声で話すと、比較的近い参謀本部のフロアへ向かった。

続きは明日投稿予定です。

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