邪神様千変万化
「ふ~む……まぁこんなものかの♪」
姿見の前で身なりを整える邪神、同棲生活がスタートして毎朝の日課となっている光景だが、鏡の前で1回転して笑顔でポーズを決めるその姿は宿敵と豪語する英雄の前で見せていい姿か否か……。
「……前から聞きたかったんだが、お前昔と姿形変わりすぎじゃないか?」
「ぬ? そうかの?」
「初めて戦った時は馬鹿でかいドラゴンだったと思うが……」
確かに三万年前には砦と見紛うような巨大なドラゴンだった、それが一万年過ぎた辺りから徐々に小さくなり……今となってはご覧の通りの美少女である。
「ぬぅ……我等神は元来姿形を持たぬ物だからのぅ、特に見た目に頓着は無いが、今はこの姿で定着しておるしまあ気に入っておるよ」
「なんか今の話し振りだと外的要因で姿形が変化してんのか?」
「言っておらんかったかの? 神というものは世界に揺蕩うエネルギーの塊じゃ、もちろんエネルギーそれ自体に形など無い、だが形が表されておるなら別じゃ」
「表す……ってぇとあれか? 昔の絵画や壁画に描かれてた姿絵とかか?」
「その通り、存外飲み込みが早いのう、我等を信望する者達が表し描いた姿で我等は顕れる。つまる所その時我を描いた最も人気の絵画が我の姿となる、という事じゃな」
「それがなんでそんな姿に……」
「なぜじゃろうな~、我も皆目見当がつかんが三百年ほど前に突然こうなったのだ」
三百年前……となると、異世界の勇者により異界の文明と共に『萌え』『擬人化』という文化がこの世界にもたらされた頃にピタリと符号するのは偶然ではないだろう。
「それにしても馴染んじまってまあ……ドラゴンだった頃の影も形もないな」
「厳密には我等には性別もないからの、その時気に入った方になるんじゃよ」
「……なんかそんな魚が居たな……。だがあの邪神様が……ねぇ……」
「女の方がふぁっしょんも多彩だからの、何事もえんじょいせねばな♪」
そういって胸を張る邪神を見る英雄の目には落胆とも達観とも思える淀みが見える、宿敵の変化を喜ぶべきか悲しむべきか……。この世界にとっては喜ばしいこと、だが三万年も殺し合いをしてきた相手がどんどん丸くなっていく様子を見るのは何だか不良仲間が引退するかのような一抹の寂しさを感じる部分があるのだ。
「ってかお前ファッションを楽しむのは良いがそんな趣味があったのか?」
「ぬぬ? ぬおっ!?」
見ればいつの間にやら邪神の服装が学生が着るような制服に変化している。着替える暇など無かったはずだが……?
「あちゃ~……もうそんな時期かぁ~、最近暑いと思ったら……」
「暑さと何か関係あるのか? なに? 神々は暑いと制服に着替えるのか?」
「たわけ! そのような妙な習慣など無いわ! 何故だか分からんが毎年この時期になると服装がやたらと切り替わる日があるのじゃ、ほれ、この通り」
瞬きする程の間に巻き上がった煙が晴れ、今度は着衣がチャイナ服に変化する、大胆に入ったスリットをめくり生地の質感を確かめつつ邪神が大きな溜息をつく。
「まあ、よく分からぬ衣装もあるが一度変化した物は再現出来るからな、服を買う必要が無いから重宝してお……おおぉぉお!?」
「ぷっ……ククク……お、お前今度はなんだよ……!」
続いて変化したのは古式ゆかしいブルマータイプの体操服、加えて慎ましやかだった邪神の胸が風船のように膨れ上がる。
「な、なんじゃなんじゃ!? 誰じゃ乳を盛りおったのは!? たわけめが! もっ! 盛りすぎじゃ! そりゃもうちょい大きくしたいとは思ったが盛りすぎじゃ!」
次の瞬間、バニー服に変化したと同時に胸が消え失せ、胸を支え覆うはずの布がお辞儀をするように虚しくペロンとめくれ落ちる。
「んなっ!? だ~れ~が~全部無くせと言ったかぁ~っ!! それにこの衣装は乳がある前提の衣装であろうが! なぜこのような仕打ちをっ!?」
「……だ、駄目だ……クク……は、腹痛い……笑い死ぬ……っっ」
「わ~ら~う~なっ!」
「よ、良かったな……ぷふっ……このまま俺が笑い死んだらお前の初勝利だ……くふっ」
「そのような不名誉な勝利はいらぬわ! えぇい! さっさと次に変化せぬか!」
言うが早いか発生した煙、晴れた先に邪神が身に着けて居たのは……。
「なっ……!!」
「っっっっ!? #&ℵυoД∀º#&っっっ??」
少し後に判明した事実だが、この時期王都では異世界伝来の『コミ〇』という祭があり、その場で頒布されている邪神の姿絵を描いた冊子、その時の売れ行きナンバーワンの姿に邪神の服装が変化するのだとか……。
『邪神様マイクロビキニTバック本完売で~す、どうもありがとうございました~!!』
~おまけ~
「ほれ、このように魔法少女風の衣装もある」
「ほ~、やっぱ現実でもスカートの中はパンツが見えない謎空間なんだな」
「っっっ!! 婦女子のスカートをのぞき込むなこの大たわけがっっ!!」




