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怪しげな案内人

誤字、脱字や文法など自分なりに全部修正させていただきました。よろしくお願いします。

「思ってたより人が多いなぁ」


「感心する場合じゃないわ」


 ルシカは当たり前のように左手を差し伸べた。


「はぐれちゃうから、こうした方がいい」


 天羽(そらは)は妙に意地を張ってルシカの裾をこっそりと掴む。


「これでいいの」


「わかった、じゃ早速入ってみよう」


 市場に入った途端、キザな男組四人が天羽(そらは)に絡みつき、自然と肩を寄せる。


「お嬢ちゃんお名前は?どこから来た?見たことない顔だね。他の国から来たん?いいところ連れてってあげるよ」


 天羽(そらは)はひっきりなしに質問をされて、一時的にどうしたらいいか、反射的に後ずさった。


 ──うわっ……この世界でもこんな風にナンパしてくる男もいるんだ……世界共通だね。


「あの……!離し……」


 天羽(そらは)は男の手を振り払うようとその瞬間、ルシカは男の手首を取り押さえて怯まずに男の不親切な目つきを睨み返した。


「その汚い手、離してもらえる?」


 ルシカは気に障られたように血相を変えて怒る、男四人組を凝視する。そのオーラを感じた瞬間、この間、生贄の村の森での出来事は鮮明に蘇らせた。天羽(そらは)は思わず息を吞むでしまった。


 周りから野次馬が群れてくるが誰もか手を出さなかった。ひそひそとどよめきが起こる。


「なんだ?いい度胸じゃねえか?俺たちのこと知ってんの?てめぇらは初めてここに来るもしれないが、俺たちはなあ……」


「だから?」


「死にたくないなら、今すぐ土下座して、うせろ」


 ルシカは野暮の男たちを見向きもせず、ただ鼻で笑った。


「お前はこいつの誰だよ!俺たちが本気を出したら大事になるよ。さっさと尻尾を巻いて逃げちまえ!」


「それはこっちのセリフだ。そのドブ臭い口でしゃべるな、耳が腐る。それに私はこいつの彼女だ」


「なッ……!」


 四人組はともかく、天羽(そらは)まで驚きの表情を隠せず、ぽかんとなって耳のあたりが赤くなってきた。


「男なら歯を食いしばれよ」


 ルシカはすらっとした足で男の顔面思い切って蹴っ飛ばした。


 たったの一発で男のリーダーの顔を陥没させた。他の手下はそれを見て呆然とした、事態の大変さを知り、倒れていたリーダーの身体を担いで逃げた。


 ──怖っ!なんだあの馬鹿力…もう少し力入ったら頭を簡単に握り潰しそう……


「やりすぎだよ」


「これでも一応抑えてんだ」


 ──ウソだろう……図星じゃん……


 天羽(そらは)は汗ばんだ額を拭いたそばから冷や汗がまた滲み出てくる。やばい事態にならなくてよかったと密かに思った。


「さっきなんでああいうことを言った?」


「何か?」


「その……あれだよ。あれ」


「何の話だ?」


「とぼけるかよ……まぁいい、そのことはどうでもいいわ。よくあいつらに手を出したね、ひやりとするわ」


「あのクズどもに手加減する必要ないし、はやく中に入ってみよう」


「そうだね」


 天羽(そらは)とルシカは前後並びで歩き、雑貨屋さんの前に歩みを止めた。


 ルシカは顎を親指と人差し指で挟んで、陳列棚にある魔法のアイテムを入念に物色している。


「どう?使えそうになるものはない?」


「一旦、入ってみる」


 ルシカは古びた扉を押すと、独特な匂いが鼻につく。


「いらっしゃい」


 店のオーナーは満面の笑みで二人を歓迎する。


「何を探しているんですか?」


「薬や魔法水とかあるの?」


「はい、いっぱいありますよ。こちらへどうぞ」


 オーナーは専門の魔法アイテムの棚まで連れてくれて、すらすらと紹介してくれた。


 天羽(そらは)は強烈な好奇心を抱いてキョロキョロと周りを見回す。


「他のコーナーに行ってもいいよ」


「本当にいいの?」


「さすがにこの距離なら、はぐれないので、いいよ」


 天羽(そらは)は店にあるものを凄く新鮮だと思い、アニメしか出てこないものがここで忠実に再現した。たぐいのアイテムは同じコーナーに整理されて、一つ一つ丁寧に分けられて、非常に見やすかった。ふと目の前にある香水に引き寄せられた、触れずにはいられなかった。


 突如、藍の花の匂いが鼻をくすぐって、振り返ってみたら、オーナーがニコニコと後ろに立っていた。


「それをかけると、見た目から判断しにくいものでも本質が見れるようになる。という魔法の道具です」


「あ、すいません。私まだ触ってないです」


「大丈夫ですよ、ここの商品は一回使ってみても全然問題ないですから、気になるなら、お手に持って観察してもよろしいですよ」


 ──なんて良心的な、現実世界のお店では、ちょっと触ろうとしただけで、すぐさまに店員さんに声をかけられる……


「本質が見れるものって……例えば何ですか?」


「そうだね、説明は少し難しいですが、他の人には見えないもの、あなたがそれを見られるのです」


「幽霊ってことですか?」


「ちょっと違うかもしれないですね、もうちょっと根本的なもの」


「はぁ……なんか複雑ですね」


「その気がありましたら、一回試してみます?」


「え?大丈夫ですか?なんか使ったら死ぬとか……」


「そんなことはありませんよ、一回をかけて一定時間内だけに効果があります」


「じゃお願いします」


「では、目をつぶっていただいて、かけますよ」


 天羽(そらは)はしっかりと目をつぶって、オーナーは香水をひとプッシュした。


「なんか何も起きていないっぽいですけど」


「まだ発揮していません。もうしばらく経ってから、効果が出ます」


「そうか、ありがとうございます」


「いえ、こちらこそです」


 ルシカは多重の悩みから適した魔法水をいくつか選び出した。


「決めた。これにする」


「ありがとうございます!」


 オーナーはスキップしながらおまけのものを用意してくれた。


「そうだ!私からお二人のご案内するのはどうですか?この町には色々面白いことがあるんですよ」


 天羽(そらは)は身を乗り出して再確認する。


「え?いいんですか?」


「はい是非!どうせ私は暇ですから」


「じゃお願いします!」


「じゃ、ちょっと待っててくださいね。準備してきます」


 オーナーは嬉々として出かけの準備に行った。


「ほら、これ持って」


 ルシカは大量の魔法薬を天羽(そらは)のバックに詰め込んだ。


「多すぎるだろう、どんだけ買ったの?」


「これからの旅に使うんだよ。これで長く持てるから。ちょっと多く買っても損はない」


「何に使い?」


「こっちは飲んだら一定時間に姿を隠すことができる」


「はぁ……」


 天羽(そらは)はしどろもどろにルシカの話を聞く。


「こっちは一定時間に空を飛べる」


「空を飛べる。」


 天羽(そらは)はオウム返した。


「あとこれは……ちゃんと覚えた?」


「うん」


「じゃこの緑の瓶は何の効果がある?」


「飲んだら身体が全治になるかなぁ」


「目が泳いてる……まぁ、あとで説明しても遅くない」


 オーナーは服を着かえて出てきて、やる気満々の様子だった。


「待たせて、ごめんなさい」


「いえ、ちょうど話終わったところです」


「では、出発しましょう!この町では何箇所が有名ですよ〜」


 ──なんかガイドみたい。


 と天羽(そらは)は思った。


 オーナーの導きで町の観光スポットをあちこち回ってきて、天羽(そらは)とルシカは充実で濃厚な半日を過ごした。少しの休憩を取って街のベンチに腰を掛けた。


「あそこに飲み物が売ってあるわ、オーナーさんは何を飲むんですか?」


「あら、いいですか?そんな…申し訳ないです」


「いえ、さんざん付き合ってくれて、少しの気持ちです」


「なら特製アップルジュースをお願いしてもいいですか?」


「大丈夫です。ルシカは?」


「私はいいよ、代わりに買っててあげるよ、何飲む?」


「でも……」


「あんたは大人しくしろ、私が行くから」


「じゃパインアップルジュースで」


「オッケー」


 ルシカは少し心配そうに天羽(そらは)を見る。


「この子は私が面倒みますから」


 ルシカはオーナーに会釈して、軽快な足取りで飲み物を買いに行った。


 天羽(そらは)とオーナー二人が残された。


「あの……あなたは……」


羚夏(れいか)といいます」


「すいませんね、どうしても羚夏(れいか)さんに聞きたいことがありまして……」


「何でしょうか?」


「変な質問になるかもしれませんが羚夏(れいか)さんは大勢の人より一人の方がお好きなんですか?」


「それはもちろんです、人多すぎると、ざわざわしてて、うるさいからです」


「そうなんですか……」


「他になんかあります?」


「じゃ二人より、一人の方がお好きなんですか?」


「場合によるですかね」


「ならば方向転換をしましょう。孤独が好きですか?」


 天羽(そらは)は少し躊躇して、この問題をスルーするのか、そのまま正直に答えるか、頭を抱えた結果彼女は第三個の答えるを出す。


「……質問の意図がわかりません」


「気に障ったら、謝ります」


 ──なんだ、この人。初対面ならこんな地雷的な問題はしないはずだよ。どうしてそこまで知りたいの?


「もうちょっと警戒心を下がった方がいいと思いますよ」


 オーナーの目は鋭くなり、かつてそのにこやかで愛想のいい表情はもうどこにも残らなかった。


「結構です。私ルシカのどこに手伝いにきます、失礼します」


 天羽(そらは)は慌ててその場を立ち去った、助け人を見かけたようにルシカのどこに飛び込んでいった。それを見てルシカは目を見開いて訝しく思った。


「どうしたの?何かあった?たった数分しかたってないよ」


 天羽(そらは)は声がうわずらないように必死に堪えて、否定した。


「何でもない。手伝いに来ただけ」


「ならよかった。ごめんね、待たせちゃって、もう買ったから、帰ろう」


「うん」


 天羽(そらは)とルシカはベンチのところに戻ったが、オーナーの姿はとっくにいなかった。


「え?オーナーさんは?」


「何を言ってるの?オーナーって?」


「いや、冗談はやめて、こっちは真剣なんだよ」


「違う、私だって真剣だよ」


「じゃこの飲み物は何?二つ買って、アップルジュースはオーナーさんの分、パインアップルジュースは私の分だよ」


 ルシカは怪訝そうに首を傾げる。


「?これはあんたが喉渇いすぎて、二つも飲むって言ったのに……」


「え?いや、あの雑貨屋さんの、さっき案内してくれた、私の隣に座っている……」


 天羽(そらは)は口ごもりながら、言葉がうまく紡ぎだせなかった。


「大丈夫?まだ眠いの?やっぱり急いで旅館を探して、今夜はここで泊まった方がいいよ……」


 天羽(そらは)は自分がやってきたことを確かめるため、一目散に駆ける。

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