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駄目ダメな女子高生が迂闊に異世界に入り込んで、気づいたらもう現実世界には戻れない。  作者: 霞真れい
第十章:君は罪人なのか? わからない。 じゃ有罪ね。
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善と悪の基準

いつも読んでいただきそして応援をくださり誠にありがとうございます。感想やコメントも大歓迎です。

 これは天羽(そらは)がベナルファーに身柄を確保されて、護衛兵の元に届けられたあとの話なのだ。


 ──お腹痛てぇ……のはず。腹部に残っている痛覚がいなくなった。腕も何もないように自由に動ける。どういうことだ?


 モヤモヤとした意識の中、両目はまだ周りの景色に慣れてなくて、目をすぼめている天羽(そらは)は地面に座り込んで悩んでいるように見える。手で辺りを模索してみたところ、湿ったようなものの感触だった。


 ──ひぃ!? 湿ってる? ここどこ?


 もう片方の手で目をこすると、圧迫感を感じさせ立ち上がるだけで頭がぶつかりそうなほど低い天井、当然窓も一つもない、それどころが、唯一光にあてるところは出口は言うまでもなく鍵がかかっている。そう簡単に堂々と出られない威圧さ。


「牢獄? 噓だろう、あれから気を失ってここにつれいかれた? なんで直接に私を殺せなかった?」


「おお、起きてたか?」


 声の主の方向に目をやると、そこにいるのは不機嫌そうにへの字口している少女がいた。その顔はまさに昼寝をうまく取れてなくて眠たそうな顔、天羽(そらは)は自分の中はこう解釈していた。


 ──見た目は不良っぽい……人のこと言えないけど。


「あんたは看守?」


「看守だなんて、私はお前もと同じく犯罪者だ」


「『同じく』ってなによ。私は冤罪でここに閉じ込められたよ」


「ああ、よくあるよな。自分がやったのに、死ぬまで否認してたやつ。まさかこれを主張したばかりで無罪放免されるとでも思った?」


 女はアホ見っけと言わんばかりにせせら笑いして口元をゆがませる。聞こえよがしに不憫のない笑い声を発して、火薬の匂いがどんどん濃くなっていく中、天羽(そらは)はけんか腰にならないように、舌打ちに自分の憤懣を外へ流させる。


「そうじゃないの? まだ正式的な審判も行っていないぞ」


「ふふ、馬鹿め。ここにきたということは、もうすでに執行日が決まったのさ」


「は? 何を言っているの?」


「お前こそ、ちゃんと自分の状況をわきまえろ。ここにいるのはただの残りの時間を楽しめという意味。まぁ一週間後かな、野次馬の前に処刑される」


「何淡々と言えるの?」


 自分の結末を承知した上に、この冷静ぶりとは納得できず天羽(そらは)は疑問を抱えつつ、不思議に思える点が泡のようにぷつぷつと湧いてきて、話に乗るように質問を投げかけた。


「だって、世間の目からして、この世で唾棄されるような行為をしたんだから、それを知って覚悟の上にやった。お前はどうかは知らんが、私はそうだけど」


「だから、何度言わせるのよ。やってないって」


「はぁ。ここに来たやつみんなそう言うのさ。確か、お前はあの指名手配に乗っているやつだな。殺人だなんて、私と同じだ。仲間ってっこと」


「そんな仲間嫌なんだけど」


 向こうからの手を無視して天羽(そらは)は戸惑いを見せつつも女に対する根拠のない自信に少し嫌う気味だった。それを感じ取った女は反射的に顔をあげた。さも敵陣にのめり込むときに、どこかのレザー光に当たり、警報を起こしてしまったような感じ。


 重たそうな足取りで天羽(そらは)の前までやってきて、一触即発な雰囲気が漂う。


「はぁ!? 処刑される前に私に殺されたいのか?」


「お前こそ、耳をみみをかっぽじてくれよ! 人の話聞かないのかよ。頭おかしいなら病院にでも行ってはどうだ?」


 なるべく控えめようとはいえ、自分でも意地になり見事な喧嘩ぶりを全力で発揮した天羽(そらは)は体育座りして、女の恐ろしい鬼の形相を見つめ返した。すると女は黙々と自分の元位置について、だるそうに壁にもたれかけて目をつぶる。


「いいぞ、いい根性だ。気にいった、私がいるさえ限り、誰もお前に手出しさせない。子分だからな」


 ──あーあ、変なやつに絡まれちゃった。やっぱりルシカの方がマシだわ。


「はいはい、あざーす」


「で、お前はなんで人を殺した? 愉快犯?」


 天羽(そらは)は天井を仰いで、悩み事を全部吹っ飛びそうくらいな嘆息を吐き出し、まるですべてのことを放り出したかのような放心状態にいて、現実から目を背けたいと目を覆った。


 ──こいつの耳、わたあめでも塞がれた? 本当にウザイ、こっちはもうイライラしてたまらないのよ。いっそ一発ぶん殴るか……いや、それだと無実な私でも有罪になるわ。


「わかんないよ」


「へえ、結構ド派手なやつじゃん」


「じゃ、お前は?」


「私は……意図的にやった。だから後悔の念なんてくっさひまえ」


 女は語気を合わせて壁をぶったたいた。失望な怒りと悔恨の色を見せない感情がまじりあったもの。言葉を突き放したあと、痛んでしまった手を隠す。それから気持ち的に落ち着いたら話に戻る。


「……」


「弟がはめられた。それで恨まれた人にやられちまった。だから全員まとめで仕返しした。それでね、こういう流れになった」


「お前すげぇな」


 感心する場合ではないと自覚したが、相手のきっぱりとした行動に舌をまく天羽(そらは)は女への態度を一新する。そして女はこう続いた。


「唯一の家族なんだよ。心の支えが崩してしまったら、自分がどうだっていいって感じた。あんたそういう感じしないの?」


「後悔してるのか?」


 天羽(そらは)は投げられた質問にあえて飛ばして、女に新たな質問をする。


「うん? 何に? 私に殺された弟の加害者に? それとも自分の行いに?」


「違う。あんたがその弟さんを守り切れなかったことに」


 女は間を空けて黙り込んでいた。会話を繋がる糸が突如その致命的な質問により途切れて、この話を幕を閉じさせるかのように女は異常なほど口を開けなかった。いつまで続くこの静寂の空間に、女は口火を切り出す。


「するよ。だからせめて贖罪という形で、あいつを……」


「じゃ決めた。一緒に逃げない? ここから」


「は? 何考えてんの?」


「あんたの話を聞いてから、ますますここから逃げたくなっちゃうわ。そもそも私は無実なの、たぶん濡れ衣着せられた」


 天羽(そらは)はいかに真剣そうな表情でありそうな可能性を述べたが、相手には中々信じてもらえないにもかかわらず、冷たい視線を向ける。


「なにそれ? 変な持論ね」


「どう? 手伝うか?」


「たとえお前が本当の犯罪者じゃなくとも、私は正真正銘の殺人者よ。許すまじきことをしてしまったのよ。正しい価値観を持っている常識人なら私を避けるべきでは?」


「何が例えよ、そのものだよ。まぁそれを一旦置いといて、あんたの過去には何があったのか知らん、私に関係ない話だ。味方にしてくれば、そんなもんクソくらいだ。常識人じゃないから、そんな価値観持ち合わせていないかも」


 その持論を聞き、女は本能的に目の前の少女は危険な匂いがすると気付き、危ない橋を渡るような気分になりぞくぞくし始める。未知な恐怖と遭遇したような興奮だった。


「お前は私より、どちくるってるな」


「自分でもわからない。今から取り組もう」


「まず何する?」


「そうね……ここに来る看守全員をぼこぼこにして、鍵を奪って逃げる」


 天羽(そらは)は大雑把に脱獄の計画を女に伝えたが、どうやら女の心に響かず、感心とも言えない反応をくれた。


「乱暴だな」


「そうするしかない。あいつらが来る時間に見計らうのだ。あと一週間しかない。この三日間で観察するよ」


 女は腕を組んでじっくりと考え直して、この計画を同意した上で、同じ船に乗っている仲間になる。どっちがつまずいたらゲームオーバーだ。すると彼女は一か八かの大ばくちを打つ。


「クレイジーな計画に聞こえるが、それ以外しかない。乗った」


 ──よかった……これでなんとか一安心だ。


「感謝する。だが足引っ張ないでよ。こっちは命懸けで真剣にいくの」


 ほっとした表情が突拍子もなく別の感情に覆いかぶされて天羽(そらは)は鋭利で容赦のない目つきで向け、まるで岩のような決意のものが宿っている。


「わーってるよ……でも」


「今度はなに?」


「お前……本当に人をやってないの?」


「だ・か・ら! やってねぇってつったんでしょうが!」


 天羽(そらは)の口調には女への不満や不服の感情がこみあげてきて、声をとがらせる。堪忍袋の緒が切れたように立ち上がり、もう一度言ってみろと言わんばかりに圧をかける。


「そこ! 何騒いでいる!」


 二人の揉め事に割り込んできた護衛兵の隊長がこの言い争いを制止させて、威厳のある声でこの茶番を陣圧した。彼女たちすぐに静まり返って距離をとる。


 ──こいつ……私を殺そうとする人。最悪だな、こいつが看守?


「なんだ……あんたの腕平気なのか?」


「そうね、君のお友達のおかげで未だに痺れているわ」


「へえ」


「笑えるのは今しかないんだから、今のうちにたっぷり笑え。もうじき君は処刑されるから」


「それは楽しみだな」


 天羽(そらは)は張り合いのある目、余裕たっぷりの光が宿るの見えるが、実際彼女はびびっているが、その場でひるんでしまったら負けたと同然だ。


「ふん……その余裕の顔いつまでも持たせるのかな。いいお知らせしてあげる。君たちに遭遇して、かなりの距離があったところに大量の血液が発見された」


「……っ」


「何があったのかさっぱりわからないが、あれは君のお友達の血でしょう。予測が正しいのであれば、恐らく誰かと戦った。さぞ白熱な戦闘だろう。ちなみに現場ではこれが落ちた」


 護衛兵の隊長はハンカチをふらふらと揺らして、天羽(そらは)の前に持ち出した。彼女の目に恐怖の色が広がりよっぽど動揺しているらしいのだ。


「これは……」


「その反応、間違いなくあいつのもの。でしょう」


 ──そのハンカチルシカにあげてたやつ。もしかしてルシカはもう? そんなありえない、だったら……


「ともあれ、事件が終わり。みんなにとってめでたいめでたい結末だ。今は少しずつ自分のやったことに懺悔し、己の罪と向き合え」


 天羽(そらは)は我慢の限界を超えて、その感情を拳にぶち込めて護衛兵の隊長に振るった。あれはすがりものさえを失い、もがくような反撃だった。

読んでいただきありがとうございます。少しお知らせをさせて頂きたいと思います。


身勝手ながら、これから気分転換として別のジャンルの小説を書きたいと思います。そのため、こちらの小説の更新はしばらく中止とさせていただきます。いつも読んでくださってる読者様を裏切るような形になってしまい、本当に申し訳ございませんでした。しかし、必ずこの小説の結末まで書き終わらせますので、お待ちいただければ幸いです。


新しい小説のジャンルも同じく百合ものです。色んなことを挑戦してみたくて、学園や日常生活を描かれた小説となります。すでに第一章が更新されたので、もし暇がある方は覗いてみてくださると嬉しいです。何卒宜しくお願い致します。

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[一言] 最後まで書いてくださるのなら、幾らでも待ちます。次回を気長くお待ちしております。
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