何もかも嫌になっちゃう
初めて小説を投稿を始めます。台湾で留学中の香港人です。まだまだ未熟な部分もたくさんありますが、これからも頑張っていきます。よろしくお願いします。
ありふれた日常生活、毎日退屈しのぎのために悩まされて頭が大変だった。ぶっちゃけ私は学校が嫌いだ、身体的にいじめられていたわけじゃない、ただ嫌いなだけ。そう、ものに嫌な感情を抱くのは理由なんて必要ない。
学校に行ったって、変人扱いされるし、分け隔てなく接してくれる人もいない。学校に行ったって、動物園にでも行った気分。周りの人がいつも言う、あいつ学校に来たの? キモっ! よくそんな平然とした顔で学校に来られるものね……それが全部がうるさかった。クソ蝿が耳の辺りで鳴りっぱなしで、実に不愉快だった。
あちこちから向けられた視線は熱くて、ときに冷淡で、ときに嫌悪感が感じられて、どれも息苦しくて好きじゃない。じろじろに見られるのが苦手の方だと思う。自分は。
「おい! 天羽、久しぶりだね!」
声の主は聞こえよがしにわざと廊下で私を呼び止めたが、それを聞こえていないふりをして平常心のまま彼を横切った。あいにく男は素早く私の行く道を塞ぐ。
「どいて、忙しいからあんたの茶番に付き合う暇はないの」
「つれないね、天羽は」
「その呼び方は嫌だから、もう呼ばないでちょうだい」
「幼馴染だから、それぐらい呼ばせてよ。天羽」
「二度とその苗字で呼ばないで。本気で怒るぞ」
天羽は気色ばんだ表情で男を睨む。もう一回言ったらボコボコにしてやると言わんばかりに拳を握りしめて、指の関節をぱきぱきと鳴らす。男は天羽の勢いに押されて一瞬鼻白んだ。
「わかったわかったあ。冗談だよ」
「相手の反感を買うなんて随分悪趣味な冗談だわ。だからこそ、あんたは彼女作れないんだよ」
「それはさすがにひどいって」
「冗談冗談、人に嫌なことをして自分にされたら嫌でしょう、そういうこと」
「ド正論だね……それを置いといて、なんで一ヶ月も学校に来なかったの?長すぎない?さすがにまずいって、お前ほぼ隔月しか学校に来ないんだから、出席やばいぞ」
一ヶ月も不登校になった理由を聞かれると、さっきの威圧がウソみたいにぶっ飛ばされて、何かを反論したかったけどそれを無理やりに飲み込んで、別の言葉を織り出そうとする。だがそれも言えなかった。
結局口をパクパクさせる羽目になった。肝心なところで言いよどんてしまった。男は心配しそうにこっちを覗き込んで、大丈夫かと私に話しかけてこの気まずさを打破した。
「ただ行きたくないだけ、それって変なの?」
「そうか……ちょっと差し出がましいかもしれないけど、家の事情が原因?」
「さあ、どうでしょう。私まだ授業があるから、また今度ね」
会話を続けるのも無意味だから、くだらない理由を押しつけた後、私は振り返らずに教室まで一目散に逃げる。教室の前に着いて足を止める。少し遅れてはいるけど、どうでもいいよ。しばらく呼吸を整えて教室のドアノブを回す。
教室に入るや否やさっきまでキャーキャーとうるさかった教室が廃墟施設みたいにだんまりしてて、怪訝そうな視線を一斉に私の方へ向ける。しかし、すぐにぎやかさを取り戻して、歯車が順序に動くようになった。
私は黙々と自分の席へ向かう、学校は嫌いだけど、みんな私の身体にダメージを加えることはないから、わりとマシの方。私の存在を見て見ぬふりして、逆に万々歳だ。が、言葉の暴力のおかげで心が受けたダメージは少なくはない。でも私はまだ耐えられるから。違う。正確に言うと麻痺したと言っても過言ではない。
あの事件まではうまく学園生活を送っていたと思う、どちらかと言えばリア充に近い人間だったかもね。今は完全にぼっち、引きこもり、透明人間、家で生きているだけのゴミみたいで、略して生ゴミというところね。
「出席取るよ」
白髪まみれの先生が教室に入った途端、幽霊でも見かけたかのように神妙な顔をする。教卓に出席簿を置く、そしてさらっと開く。老眼のせいか先生はほぼ一ミリの隙間もなく顔と出席簿をくっつけて、悠々と出席をとる。
「天羽羚夏」
「はい」
「今日はよかったね、学校に来れて。最近は大丈夫か?」
生存確認でもしたような話の切り出し方にツボった生徒が、くすくすとどよめきが起こる。静かにしてと言わんばかりに、先生は程よい力で教卓を叩いた。
「すいません、ご迷惑をお掛けして、もう大丈夫です。ありがとうございます」
「そうか……ならよかった、何かあったら先生に相談してもいいよ」
学校は嫌い。でもこの先生は学生を思いやるいい先生で、私が不登校な時だって家庭訪問してくれた。そういう心遣いはありがたいけど、やっぱり自分は自分、よそはよそ、無関係の人を巻き込むなんて私の信条じゃない。他人に頼らず一人で解決するのが私のやり方なんだから。
あっという間に授業が終わり、そろそろ家に帰る時間になったが、私はまだ帰りたくない。なぜならあのむさくるしい家は嫌だから。少し遠回して帰ろうか、そう思いながら久方ぶりの秋葉原に来た。
アニメは普通に好き、でもそんなに熱中してない。暇つぶし用だけ。
私はいつも思うんだ、もしも異世界に入ったら現実逃避もできるじゃないかって思っていた。一生戻れなくて、死ぬまで異世界に生活しなきゃならないのも悪くない。もしも異世界に入り込んだらより良いことが待っているのかなあ。もしもそんな世界があったら入ってみたいなあ。
なん~て、この世に絶対いないだろう、余計な考えを頭から振り払って漫画屋さんに寄る。昔はしょっちゅうここに来てたね、なんだか懐かしい。適当に周囲の漫画を取り、立ち読みし始めた。だがあまりにも口に合わないので元の位置に戻して、漫画屋さんから出る。
次はどこに行こうと散々悩んだがゲーセンに行くことにした、格闘ゲームや、リズムゲームや、レースゲームなどは得意分野だ。一位を取りに行くのは私にとってお茶の子さいさいと言っても過言ではない。
さっそくだが、そんなフラグを立てたせいで、大惨敗だったわ。今日は調子が悪かったかもというガキしか使わない敗北の言い訳は嫌いだ。なんだそれ? 調子が悪い? 次こそ勝つ? たまたまだけだよ! みたいな口実は止めたら? 勝ちは勝ち、負けは負け。すでに決しているのよ。
と言っても私が言う資格がないね。なにせよ、私も負けず嫌いな性格でね。
いろんな店を逡巡しても特に入りたい店はない。この時間が楽しいから、一人でほっつきまわるのが好きだ。誰にも邪魔されず、相手に気を遣う必要もない、思うがままに行動するのが私のストレス発散方法だ。
知らぬ間に日が暮れてきた、もうすぐ夜が訪れるから、群衆がわらわらと散っていって、この場所が静寂の雰囲気になるかと思いきや、より賑やかになってきて秋葉原が更にいきいきとしてて活気満々だった。キラキラとした看板、眩いネオンサイン。
まるですべてが絵本のように見えてくる。私って何ヶ月ここに来てないだ……記憶の糸をたぐりはじめながらあてもなく歩いていた。気がつくと暗くて寒い路地裏に入り込んじゃった。
「え? 待ってここどこ?」
思わず発した声だが、こんなに人気のない路地裏には当然答えてくれる人はどこにもいない。暗いところに免疫があるけど、さすがにこれはやばいって。このぐらい馬鹿でもわかるわ。
そうだ携帯! これを使えば……圏外? 噓だろうとショックを受けたが心を奮い立たせて私は元の道に折り返した。が、また同じ場所に戻ってしまった。無駄足になってるぅぅぅ! もうなんだよ、なんでうまくいかないのよ、あれもこれもすべて……
まあいいっか。ほんの少し休憩を取ってから行動しよう、もしかしたら冷静を取り戻して出られるかもと自分に言い聞かせて壁を背もたれる。カバンからボトルを取り出した。飲もうとした次の瞬間、壁が大きいなブラックホールみたいな渦となって私を吸い込もうとする。
「まずい……このままだと飲み込まれてしまう」
手に握ったボトルが不可抗力で吸い込まれたのを見て、私は慌てて懐にあるカバンを抱き締める。
「ちょっと……なによこれ、非常識な構造……」
隣にある手すりに必死で掴まったが、謎の渦が強すぎて手すりごとぶっ飛びそうになる、やがて手すりは吸引力に負けて崩れた。
「しまっ……」
そんなことを思った瞬間、私はすでに渦に吸い込まれている、引っ張られたかのように渦に落ち、尽き果てない暗闇、焦点を容易く失うほど無限の水平線、あの場所と似ているなあと、やけに親近感を覚えた。
それが私が気を失う前に覚えていること。それ以外の経緯は忘れてしまった。